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ヒーター、扇風機…ファンが買って応援 動物園のほしいものリスト

毎日新聞 / 2025年2月8日 14時0分

「ほしいものリスト」を通じて宮崎市フェニックス自然動物園に寄せられた餌台で機嫌よく過ごすボリビアリスザルの「グリ」=宮崎市塩路で2025年1月7日(同園提供)

 全国各地の動物園が、通販サイトのサービスを活用し、動物に必要なグッズを園のファンなど一般の人に買い支えてもらい、飼育環境の改善につなげている。グッズは動物と向き合う飼育担当者を笑顔にするだけでなく、ファンにとっても運営に関わった手応えが得られる点が好評。昨今の物価高に直面する園の助けにもなっている。

Xにプレゼントを投稿すると…

 鹿児島市の平川動物公園で、カリフォルニアアシカのココナッツ(雌2歳)が体重測定用のパレットに乗った。口を開けられたり、目薬をさされたり。健康観察される際にじっとしていると、ご褒美に餌の魚をもらえる。「このパレットがないと体重を測るのも一苦労。プレゼントに心から感謝です」。桜井普子(ひろこ)・飼育展示課長は声を弾ませた。

 ココナッツが使っている器具は、大手通販サイト「アマゾン」を通じて園に寄せられた。サイト内の「ほしいものリスト」に園が希望の物品を掲載し、それに応じた人からプレゼントしてもらう仕組みだ。

 園はココナッツが実際に使っている様子をX(ツイッター)に投稿。すると、コメントに「これからもトレーニングがんばるんだよ。会いたいなぁ」「うれしそうに目を細めています。飼育員さんの指示をよく聞くんやでー」とココナッツへの励ましが寄せられた。

 園がこうした取り組みを始めたのは2021年12月。来園者から「動物たちに必要なものを贈りたいが、どうしたらいいか」との声が複数寄せられたことを受け、他園の例も参考にして導入した。これまでホッキョクグマ用の冷凍庫や誕生日に与える新巻きサケ、ホンドギツネやシロテテナガザルが使う防寒用のヒーター、アジアゾウ用の扇風機などが寄せられている。

 リストに載せる物品は、日ごろの餌など園の予算で賄うべきものは除外している。価格は3万円が目安で、飼育担当者から希望の品を募ってリストへの掲載を決める。必需品以外でも動物の福祉に役立つ物品はかなりの数に上る。福守朗園長は「動物、スタッフ、ファンのみんなが良い気持ちになれる取り組み。これからもこの関係を続けたい」と語る。

 同様の取り組みは札幌市円山動物園や名古屋市の東山動植物園など、全国各地で続けられている。第1号とされるのは18年12月に始めた福岡県大牟田市動物園。餌を除く「環境を良くするもの」に限定し、現在も庭木、高枝のこぎり、モニタリングカメラなどを募集している。

 茨城県日立市のかみね動物園では、ホームページでグッズを必要とする動物の生態などを紹介し、実際に使っている様子の写真も掲載している。担当者は「必要な物品を募集するとすぐに応募があり、動物たちへの関心の高さを感じる。県外からの支援もあり、非常にありがたい」と話す。

 日本動物園水族館協会(JAZA)によると、加盟する89動物園のうち公立は71園(24年3月末現在)。公立園は自治体などの財政支援を受け、入園料も来園者にとって手ごろな設定となっている。ただ、少子高齢化で入園者の大幅増は見込めない上、地方財政も決して潤沢とはいえず、経営環境は厳しい。

 宮崎市出資の第三セクターが運営する市フェニックス自然動物園は24年7月に「ほしいものリスト」の活用を始めた。黒木一隆・飼育課長は「園の予算に限りがあり、物価高が進む中でとても助かる」と話す。約5カ月でゾウの爪切りナイフや、マンドリルの行動を引き出すおもちゃ、キリンやシマウマのふんを運ぶ一輪車など15品目34点が寄せられたという。

 動物園の経営に詳しい佐渡友陽一・帝京科学大准教授(動物園学)は「取り組みはファンが動物園運営に参加する入り口の役割を果たしている」と評価した上で「一過性のものに終わらせないことが大切で、施設整備なども支援するサポーター制度のように、ファンと動物園の継続的な関係づくりにつなげてほしい」と期待した。【梅山崇】

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