ハイパーインフレとは?日本でも起こりうるのかを分かりやすく解説!
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年12月17日 10時0分
ハイパーインフレとは?日本でも起こりうるのかを分かりやすく解説!
物価が極端に上昇し、通貨の価値が暴落するハイパーインフレ。ハイパーインフレを懸念する声もちらほらと聞こえてきます。今後の日本でハイパーインフレが起こる可能性はあるのでしょうか。対策や過去事例を詳しく解説します。
ハイパーインフレとは?
そもそもインフレとは、物価が上昇することです。対義語には「デフレ」があり、デフレは物価の下落を表します。
物価は、需要と供給のバランスで決まります。100円で買える1本500mlの水を、1,000円で売ったところで買う人はほとんどいないため、よほどの付加価値でもない限り結局500mlの水の値段は100円前後で落ち着くでしょう。
実際は、経済情勢が好調で人々の所得が上昇すれば、物を購入しようという意欲、需要が高まるため、物の値段が上がります。景気がよければインフレになるのが一般的で、日銀は年間2%のインフレ率を目標としています。
ハイパーインフレとは、過度に物価が上昇する現象です。通貨が信用を失って、物価上昇が止まらない状態のことをいいます。
ハイパーインフレを定義する試みとしては、経済学者フィリップ・ケイガンのものがよく知られています。前月比50%以上の物価上昇がハイパーインフレという定義です。また国際会計基準は「3年間で累積のインフレ率が100%以上」となっていることをハイパーインフレと呼ぶ条件のひとつにしています。
ハイパーインフレはなぜ起こる?
ハイパーインフレは、物価が過度に上昇し通貨の価値が暴落する現象です。
物価の過度な上昇は、深刻な物不足によって生じます。戦争や大災害は、それを引き起こす要因となるでしょう。また通貨価値暴落の原因としては、内紛などによる政府の信用失墜や通貨の発行過多が考えられます。
政府の対応や世界各国の救済によって回避が可能な場合もありますが、複数の要因が同時に発生した場合、インフレに歯止めが効かずハイパーインフレを引き起こす可能性が高まるといえるでしょう。
ハイパーインフレ、過去の事例
実際、世界でハイパーインフレが起こった事例を見ていきましょう。過去には日本でもハイパーインフレといわれる現象が起こっています。
・ドイツ
第1次世界大戦に敗戦したドイツは、戦勝国に賠償金を支払うよう求められました。しかし、膨大な軍事費用を投じた当時のドイツに賠償金を支払う体力はなく、債務不履行を理由に主要な工業地帯を占拠されてしまいました。
ドイツはこれに対抗する形で工業地帯の生産を停止しましたが、労働者や企業が生き残るために必要な貨幣を大量に発行したため、通貨の価値が大暴落し、一時1ドル1兆マルクとなるハイパーインフレを引き起こすことになります。
その後、アメリカの支援や新通貨「レンテンマルク」の発行を経てハイパーインフレを脱しました。
・ジンバブエ
アフリカ大陸南部に位置するジンバブエでは、2008年11月に前月比796億%という、とんでもないインフレ率を記録しました。これは、ジンバブエ政府の粗雑な政策が原因といわれています。
ジンバブエ政府は、2000年代前半に労働者の賃上げ要求や選挙費用の捻出のため通貨を過剰に供給し、通貨価値は暴落。その後白人から農地を強奪することを合法化したり、外資系企業が保有するジンバブエ企業の株式を強制的に譲渡させたりしたため、農業の生産性は低下、外資系企業はジンバブエから撤退してしまいました。
そこから食糧不足、物資不足により物価が大きく上昇するハイパーインフレに突入したのです。
さらにジンバブエ政府は、インフレ対策としてサービスや商品の価格を強制的に半額にする価格統制を敢行しました。その結果、物を作っても利益にならないため企業は倒産するか製造を停止してしまい、ますますインフレに拍車がかかったのです。
・ベネズエラ
2013年頃から始まったベネズエラのインフレは深刻度を増し、現在もハイパーインフレが続いています。2019年1月に記録したインフレ率は、年率268万%と発表されました。
南アメリカ大陸の北部に位置するベネズエラは、原油産出国として知られています。ベネズエラ経済は石油の輸出に頼る状況だったため、国際的な石油価格の下落によって大打撃を受けました。
政府の金融政策と原油価格の上昇で一時的に経済が安定しましたが、2014年のシェール革命による原油価格の下落が引き金となり、本格的なハイパーインフレに突入したといわれています。原油価格が回復していった2016年以降も経済成長率はマイナスの一途をたどっています。
ベネズエラのハイパーインフレは、金融政策の失敗のほかに、アメリカによる経済制裁も関係していたといえるでしょう。
・戦後の日本
日本が太平洋戦争のために投じた戦費は当時のGDPのおよそ9倍といわれていて、生産活動や通常の税収で賄えるレベルではありませんでした。
その軍事費用は大量の国債で賄ったため、通貨の価値は下落。さらに戦争で空襲を受けたことにより様々な設備が破壊され、生産能力を失い、深刻な物不足に陥りました。これが戦後日本のハイパーインフレのスタートといわれています。
ハイパーインフレが起こるとどうなる?
ハイパーインフレが始まると、物価の上昇は簡単には収まりません。先に挙げたジンバブエやベネズエラでは、レジに並んでいる間に物の価格が2倍になるという話まであります。お金を持っていても、物やサービスが買えない状態です。
経済は大きな混乱に見舞われ、失職する人や家を失う人など生活に困る状態も想像できるでしょう。確かにジンバブエやベネズエラでは、多くの人たちがそのような状態になり、安定した職や生活を求めて国外に移住しています。
日本でもハイパーインフレは起こりうるのか
現在の日本は戦後の日本と似たような状況にあると指摘されることがあります。政府の債務残高がGDP比で238%(2020年)と、ハイパーインフレとなった戦後のレベルに達しているというだけではありません。若年層の人手不足が企業活動を圧迫していることや日銀が景気優先の金融政策を取っていることなどに類似点が見つかると識者は指摘します。
しかし、日本でハイパーインフレが起きるとすれば、戦争などによって深刻な物不足が起き、政府に対する信用が完全に失墜するようなできごとがあって、日本円に対する信用も同時に失われてしまったときです。
これを踏まえて考えると、現状、日本でハイパーインフレが起きる可能性は、非常に低いといえます。普段の生活に支障をきたすようなインフレは起こりづらいといえるでしょう。
ただ、可能性は0ではないので、インフレが起きないとしても、資産価値が大きく目減りしないように対策を取ることは決して無駄ではありません。次に、通常の資産運用としても広く知られ、ハイパーインフレにも備えられる資産運用方法をご紹介します。
ハイパーインフレに備える対策
ハイパーインフレとは、激しい物価上昇が止められない現象です。この状況に対応するためには、ハイパーインフレでも価値が下落しない資産を保有することが有効です。
インフレで価値が下落しない資産の代表格といえば、株式や投資信託、外貨預金、不動産などが挙げられます。
特に不動産は物価の上昇に乗じて価値が上昇することが考えられます。ただ、不動産を保有するために多額の資金が必要となる場合がほとんどで、あまり現実的ではないと感じる方も多いかもしれません。
一方、株や投資信託、外貨預金は今や一般的な資産運用方法のひとつとして認識されつつあり、購入方法も簡便になっているため、ハイパーインフレ対策として始めやすいといえるでしょう。
株は業績にしたがって価格が上下します。物価が上昇している局面では、企業の業績が向上しやすく、株価も上昇しやすくなります。
投資信託に目を向ければ、例えば楽天証券で人気の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、アメリカの株式指標S&P500の価格変動に近づくパフォーマンスを目指すものです。日本のハイパーインフレに対して、海外の株式市場に目を向けるのも対策のひとつといえるでしょう。
同じように外貨を保有することも有効です。ハイパーインフレで日本円の価値が下落するとき、海外の通貨の価値が相対的に上昇します。こういった状況に備えて、外貨預金や外貨建ての保険で資産を作っておくことも有効です。
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