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食べられるバラ”を通して世界中に健康と美を届けたい。ローズラボ代表・田中綾華さんに聞く自分でリミットを決めない生き方

楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年3月22日 10時0分

食べられるバラ”を通して世界中に健康と美を届けたい。ローズラボ代表・田中綾華さんに聞く自分でリミットを決めない生き方

食べられるバラ”を通して世界中に健康と美を届けたい。ローズラボ代表・田中綾華さんに聞く自分でリミットを決めない生き方

「好きを仕事に」。憧れはあるものの、自信がなくて一歩が踏み出せない。独立なんて自分には無理…。そう考えて挑戦前に諦めてしまってはいませんか?ローズラボを創業し、経営者として事業に取り組む田中綾華さんも、かつては自分に自信がなかった一人。そんな田中さんに、「好き」を貫いて起業した背景、起業して良かったこと、失敗から学んだことなどをお聞きしました。

「健康寿命」からたどり着いた、バラ農家になるという決断

マネ活編集部:若くしてバラ農家になった田中さんですが、学生時代から起業したいと思われていたのでしょうか。

 

田中:いいえ、むしろ趣味も特技もなく、将来の夢や目標もない女の子でした。大学に進学したのも「みんなが行くから」。ゼミの自己紹介で将来の夢を語るよう言われても、全然喋れませんでした。堂々と将来について語るなんてカッコ悪いと思っていたくらいなんですが、同級生たちがキラキラと夢を語るのを目の当たりにして、「同い年なのに、こんなにも自分の将来を考えているんだ」と衝撃を受けたんです。 

 

夢を語ることを「意識高い系」だとどこか斜に構えていたのは、ある意味キラキラしている人への羨ましさの表れだったのだと思います。大学生のときのその出来事が、自分の人生を見つめ直すターニングポイントになりました。

 

でも、どんな人生にしたいかを考えたら「幸せになりたい」しか思い浮かばず…。そこで「幸せ」を言語化していったんです。すると、健康でいられる間は意外と短い。ならば本当に自分が楽しいと思えることに打ち込むことこそ、真の幸せなのではないかという考えに辿り着いたんです。

 

マネ活編集部:20歳前後で、いわゆる健康寿命に思考が至ったのは面白いですね。

 

田中:そうなんです。健康寿命から逆算して考えてみたら、仕事に費やす時間がいかに多いのかがわかりました。それならば「好きなことを仕事にしないと!」と思って、大好きなバラを仕事にしよう、バラ農家になろうと決めたんです。

 

マネ活編集部:バラは昔からお好きだったんですか?

 

田中:はい。きっかけは、ひいおばあちゃんでした。夫が残した事業を引き継ぎながら一人で7人の子供を育て上げた、私の憧れの女性なんです。そのひいおばあちゃんがずっとバラを大切にしていた影響で、私も昔からバラが好きだったんです。

 

マネ活編集部:お花屋さんになるのではなく、バラ農家を目指したのはなぜですか?なかなか勇気がいりそうですけど。

 

田中:私は好きなものに対する探求心が強いタイプで、バラが好きだからこそ栽培から学びたいと思ったんです。ただ、初めはバラ農家になりたいと思っただけで、起業しようとは考えていませんでした。好きなものに囲まれて日々を過ごせたら楽しそうだなと思って、大学を中退して大阪のバラ農家さんで働き始めたんです。周囲にはびっくりされましたけど、自分的には特に気負うこともなく自然な流れでしたね。

 

マネ活編集部:食用バラの存在はもともとご存知だったのですか?

 

田中:いいえ、大学1年生のときに「食べられるバラがあるんだって」と、母から教わったんです。そこから興味を持ち始めました。

 

マネ活編集部:ここで、改めて経営されているローズラボの事業内容についてお聞かせいただきたいと思います。

 

田中:埼玉県深谷市のビニールハウスの中で、土と農薬を一切使わない食用バラを栽培しています。顧客は法人の皆様で、納品先は主に飲食店となります。栽培したバラすべてが出荷できるわけではないので、余ったものや規格外のバラをジャムや紅茶に加工したり、敏感肌の方向けの化粧品を製造したりもしています。

 

マネ活編集部:化粧品も手掛けられているんですね。きっかけがあったのでしょうか?

 

田中:私自身、肌が弱いんですね。それもあって、昔から化粧品の成分をいろいろと調べていた経験が活きていると思います。「敏感肌の人にも美しくなる権利はある」というのが私のポリシーなんです。加工品を取り扱っていただいているのは、百貨店をはじめとした小売店で全国約120店舗、あとはインターネットの通販サイトを展開しています。

 

マネ活編集部:起業してみて、「これは嬉しい!」と思ったことは何でしょうか。

 

田中:お客様の声が直接届くことですね。1次産業である農家にはお客様の声が直接届くことはほぼありません。ローズラボは生産から加工、流通販売までを手掛ける6次産業になるので、「美味しかったよ」「ローズラボのおかげで人生が変わりました」など、お客様からのフィードバックが直接得られるんですね。とても嬉しいですし、励みになっています。

 

また、起業前までは自分や直接関わりのある人さえ良ければいいという考え方だったのが、起業したことで環境や次世代に対して何ができるのかを考えられるようになってきました。視野が広がったんです。

 

マネ活編集部:環境などに目を向けられるようになったのはなぜでしょう?

 

田中:私の場合は、学生起業家向けビジネスコンテストの世界大会に出た経験が大きな刺激になりました。日本の学生起業家と話す機会もありましたが、「ユニコーン企業にしたい」など、どちらかというと「私=I」が主語の人が多いなと思います。私も自社の売上ばかりを気にしていましたから。

 

でも、世界大会に来ている他国の学生起業家たちは「私たち=We」を主語にしていて、自分たちのビジネスがどう世界平和に繋がっているのかについて語っていたんです。「これからの時代を作っていくのは自分たちだ!」と休憩時間に肩を組んで語り合っている様子を見て、私は目が点になりましたね。「そうか、みんなそう考えてビジネスをやっているからこそ、需要のある製品やサービスが提供ができるんだ」と、目からウロコのような気持ちになったのを覚えています。

 

ローズラボで展開しているコスメライン。天然成分由来で敏感肌の人にも嬉しい

3,000本のバラをダメに...。学び直して実感した、計画していく大切さ

マネ活編集部:反対に、起業をしてうまくいかなかったことについてもお聞きしたいです。

 

田中:いくつかありますが、一番「どうしよう…」と思ったのは、起業してすぐにバラを枯らしてしまった出来事ですね。3,000本ものバラを半年で全滅させてしまったんです。収入ゼロで経費だけが出ていく状況になってしまい、本当にピンチでした。

 

マネ活編集部:起業早々の試練だったのですね。原因は何だったのでしょうか。

 

田中:完全にバラの栽培の知識不足ですね。大阪のバラ農家で学んだバラの栽培方法を、そのまま埼玉でもやっていたのです。バラは繊細な植物なので、土地の状況に合った栽培方法を考えなければならなかったのに、私には経験も知識も足りていませんでした。

 

最初は咲いていたバラが、半年ほどかけて徐々に枯れていくのを見るのは堪らなかったですね。変な虫がいたのではとか、どこからかバラに悪い農薬が流れてきたのではとか、全滅するまでは何とか悪あがきをしてみたものの、ダメでした。そのときにようやく自分の経験・知識不足だと気付いたんです。そこから、きちんと学び直そうと農業学校に入学して、2年間学びました。

 

マネ活編集部:学校では、どのようなことを学ばれたのですか?

 

田中:バラだけではない様々な作物の栽培方法や、農業ならではの経理の仕組み、経営スキルなどです。農作物は作ったものすべてが出荷できる質にはなりません。3,000個の発注に対して3,000個作ればいいわけではないので、余剰分を踏まえた原価設定が難しいんです。それから、農家とJAと消費者など、農業独特の物流の仕組みも学べました。人脈も広げられましたし、プライスレスな経験を得られたと思っています。

 

マネ活編集部:バラが枯れてしまった原因もわかったのですか?

 

田中:はい、先生に相談したら現地まで来てくださって。深谷での育て方についてアドバイスをもらい、もう一度、深谷でのバラ栽培について見直しました。学校での学びを通じて、どの作物も一足飛びはできなくて、毎日コツコツと計画的にやっていくしかないことを深く理解しました。

 

マネ活編集部:大きな試練でしたね。でも、立ち直るパワーもすごいなと思ったのですが、もとから失敗に強いメンタルの持ち主なんですか?

 

田中:いえいえ、もともとは落ち込んで動けなくなってしまう性格でした(笑)。バラを枯らした後に素早く立ち直れたのは、バラの命とスタッフ2名の人生を預かっているのだから、思考放棄している場合ではないと思ったからです。たとえどん底でも、考えることは諦めないぞと腹をくくりましたね。

 

マネ活編集部:現在はさらに従業員の方も増えていると思います。そのような環境での事業の拡大については、どのような点を意識されているのでしょうか。

 

田中:今は従業員が10名になりました。事業拡大については、中長期的な時間軸を持つことを常に意識しています。具体的な計画で10年、大まかな計画で15〜20年くらいのスパンで考え、そこから逆算して今何をすべきかを決めていく。中長期的な視点がないと、資本計画が立てづらいですから。

 

中長期的な視野で見たとき、あくまでも自分と従業員が生活できるレベルで経営していきたいのか、例えば100億円売上げたいのかによって、毎日やるべきことは変わってきますよね。まずは会社をどうしていきたいのかを自分レベルで考え、それを従業員にきちんと言語化して伝えることを大切にしています。

 

ですから、当たり前ではあるのですが、売上や達成率について話すときは認識に食い違いが出ないよう、より具体的な数字で表すようにしています。私だけではなく、従業員にも明確な数字で話をすることを意識してもらっています。

 

マネ活編集部:中長期的な視野があったからこそ、従業員も10名まで増やしてこられた?

 

田中:そうですね。採用に関しては、初めの3年間はできるだけ固定経費を抑えたかったので人員は最小限にして、そこから徐々に増やしていきました。現在は、採用人数についても、私ではなくて各事業部の責任者が計画的に進めています。最終面接前までの選考は彼女たちに任せていて、私が見るのは「人として正しいかどうか」だけ。責任者とは各部の事業計画書を一緒に作成しているのもあって、彼女たちにも逆算する思考がしっかりと身についていると感じますね。

 

田中さんが魅了された食用バラは、農薬も土も一切使わない環境で大切に育てられている

会社・個人・家族のバランスを整えながら、私らしく

マネ活編集部:ご自身の幸せと仕事との関係性、どのように捉えていらっしゃいますか?

 

田中:私は、「会社・個人・家族」の3つの視点をいつも忘れないようにしています。この3つはそれぞれ大切な自分の軸。でも、大切にしていることはそれぞれ違ってきますし、その時々に即したバランスが大事だと思っています。私は毎月3つの軸に対して目標を立てていて、一つひとつ達成度合いを振り返るようにしていますね。

 

マネ活編集部:自分らしくキャリアを積むために意識していることは何でしょう?

 

田中:私の中長期的な人生設計計画からすると、20代は「ここで仕事をがんばらないと、いつがんばるんだ」という時期なんです(笑)。全力で仕事にコミットして、会社を順調に成長させることが第一の目標ですね。

 

そして、私が私らしくあるためには選択肢の多さが関わってくると思っています。できるだけ多くの選択肢を用意して人生の幅を広げるためには、やはり資金力がとても大切だと考えています。

 

マネ活編集部:資金力が選択肢を増やすという話ですが、田中さんはどのようにお金と向き合われていますか?貯蓄重視、自己投資重視など、いろいろなタイプがあると思いますが。

 

田中:起業して3年目くらいまではひたすらお金は使わないようにしていました。ただ、次のステップに進むためには競合とも戦っていかなければなりません。常に自分を成長させていくために、今は経験にお金を使うようにしています。

 

様々な人と交流をしたり、経験を深めるために海外旅行をする、新たな知識や情報を得るための勉強代にするといった使い方をしています。それが結果として、会社にも私自身にも資金力をつけることに繋がるのだと思うからです。

 

お金と人生は切り離せないものだと思うんです。変な話、結婚後に離婚したくても、経済的に自立していないと躊躇しがちです。自分の人生を自分で組み立てていくためにも、状況が許す限り、できるだけ女性も経済的に自立したほうがいいと思いますし、私は今後も自立していたいですね。

 

マネ活編集部:田中さん、そしてローズラボの今後の夢を教えてください。

 

田中:世界にチャレンジしたいです!バラは世界中の人に愛されていますので、まずは輸送や管理のハードルが比較的低い化粧品を皮切りに、世界市場に挑戦していきたいです。バラを通して健康や美容の面から世界中の方たちに貢献できたら嬉しいです。

 

マネ活編集部:ありがとうございます。最後に、なかなか自分に自信は持てないけれど、何かチャレンジしてみたいと思っている方に向けてメッセージをお願いします。

 

田中:昔は、「私にはこんなことできない」とか「私には無理」と勝手に決めつけてしまうことがたくさんありました。自信が持てない時の気持ちはとてもよくわかります。でも、自分で自分にリミットを設けてしまうなんてもったいないですよね。

 

まずは日々の小さなことでもいいので、過去の自分を超えていこうと小さな努力を重ねていく。そうすることで、少しずつ自信がついていくのではないかと思います。そして、他人と比べずに自分を大切にすることが、自分を輝かせる大切なポイントだと信じています。

 

柔らかな印象の一方で、経営者らしく芯の通ったお話をお聞かせくださった田中さん

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