女性の起業を応援する「キャリア35」土川雅代さんから学ぶ自分サイズの起業のカタチ
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年3月26日 10時0分
女性の起業を応援する「キャリア35」土川雅代さんから学ぶ自分サイズの起業のカタチ
副業を解禁する企業が年々増加し、多様化する働き方。副業や独立で女性が起業するケースも多く見られるようになりました。とはいえ、経営者になることにハードルの高さを感じたり、起業前に何をすればいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。ご自身も経営者であり、起業をサポートする「一般社団法人キャリア35」の理事も務める土川雅代さんに、起業したい方が備えておきたい知識やマインド、事業を続けていく秘訣についてお聞きしました。
占いやスピリチュアルをビジネスにしたのも、偶然の流れから
マネ活編集部:土川さんが経営者になるまでの経緯についてお聞かせください。
土川:子供の頃から事業を興したいとは漠然と思っていたんです。その想いを持ったまま大学卒業を迎えたのですが、まずは社会を知って選択肢を広げようと会社勤めをしました。アパレルの販売員やライター兼営業の会社員を経て、その後、フリーのライターとして独立しました。
しかし、下請けで仕事をしていたので、事業を興すという自分のやりたかったイメージとはかけ離れていました。でも「自分でコレをやって事業化したい!」というネタが当時の私にはなかったんです。
転機となったのは、たまたま関西で編集者の仕事をしていたときに知り合った東京のライターさん。彼女がいずれ本の企画でお世話になるかもと思って繋がっていた占い師やスピリチュアル関係の人たちがいたのですが、「サポートしてあげて欲しい」とその方に言われて。「じゃあ、やろうかな」と。ライティングやプランニングのスキルを活かし、占い師さんたちのサイトを作ったり集客のサポートをする事業をスタートしたのが始まりです。
マネ活編集部:「起業する!」という強い意思より、ちょうど良い流れがあったからというのが意外ですね。占いやスピリチュアルが好きな気持ちもあったのでしょうか。
土川:占いやスピリチュアルに関しても、実は特別好きでも嫌いでもなかったんです(笑)。たまたま振られた話がその分野だったという感じですね。それと、会社を離れてフリーランスで働いた経験のおかげで、起業をあまり難しいものだと考えていなかったんですね、延長上にあるみたいな感じで。ただ、私はプレイヤーとして表立って動くよりも、プロデューサー的に裏で動く働き方をしたかったので、いずれアルバイトや従業員を雇うイメージを描いて法人化しました。
マネ活編集部:土川さん的に、どのような時に起業して良かったと感じますか?
土川:自分の好きなように働けることですね。会社員時代は仕事を終わらせて定時で帰ろうとすると「一人だけ先に帰るの?」と言われたり、圧を感じたりすることがありました。周囲に合わせることに苦手意識もあったので、責任は伴いますけど、気分的にはとても楽です。
マネ活編集部:これまでいろいろなご苦労があったと思いますが、そこから学んで大切にしているのはどんな点でしょう?
土川:二点あります。一つ目は、経営者として負うべき責任についてです。いろいろな方と関わる中で、クセのある方に出会うこともありましたし、トラブルに発展しそうになることもありました。弁護士など専門家の力を借りることはできますが、ある程度のレベルまでは自分で責任を持って処理するという「覚悟」は必要です。
二つ目は、「付き合う人を選ぶ」ことでしょうか。人として信用できるかという点はもちろんなんですが、仕事のスタイルは人によって異なります。一時お仕事をご一緒させていただいていた方は夜型で、毎晩遅くまで打ち合わせをしなければなりませんでした。当時は子供が小さかったのもあって、ちょっと厳しいな、と。相手に合わせることは必要とはいえ、自分のスタイルを守った働き方も結果として大切になります。
また、女性の方は別の意味でも仕事のパートナーをしっかり見極める必要があるでしょう。私はセクハラを受けた経験はありませんが、男性クライアントなどからセクハラを受ける話は実際にありますから。ビジネスとしてのスタンスを明確にして、服装や言動に対して意識を高めていくことは自衛につながります。
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リスクが怖くて踏み出せない...。ローリスクな起業ってどうしたらいいの?
マネ活編集部:「一般社団法人キャリア35」で理事も務められています。どのような活動になりますか。
土川:理事は4名で、行政書士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー、会社経営者の私です。起業したい方に対するサポート全般を行っています。また、2020年12月に資格のユーキャンから「セカンドキャリアアドバイザー講座」をリリースしました。
マネ活編集部:相談に来られた人すべてが起業を実現できるわけではないですよね。起業までいける人、いけない人にはどういった違いがあると思いますか?
土川:起業に至れなかった人にはいくつかパターンがありますね。まずは専業主婦など、自分で初期費用を工面するのが厳しくなるケース。次に、金銭面というより、夫をはじめとしたご家族に協力や理解が得られなかったケース。
あとは、これまで自分がやってきたものとかけ離れた分野で起業しようとするケースです。経験がない分、成功の妄想だけが膨らみがちなんです。実際には人脈も限られていたり、憧れが先行していて見えていなかったけど、突き詰めてみると実はそれほど興味がないことだったり。そうなるとモチベーションが持続しないことが多いです。
マネ活編集部:起業するに当たり、できるだけリスクを減らしたいですよね。キャリア35では「ローリスク起業」を提唱されていますが、ローリスクとはどういったことでしょうか。
土川:私たちはローリスクのプランという意味を込めた「ローリープラン」を提唱しています。ローリープランの目的は、ビジネスの拡大を求めるというより、自分が好きなことで本当に必要な収入を得ることです。想定されるリスクを回避しながら、3年かけて事前準備を進め、4年目での独立を目指します。
1年目は他で給料を得ながら起業準備を進めます。開業資金、運転資金、軌道に乗るまでの生活資金を貯めながら、必要な手続きのリサーチも行います。2年目はコストを掛けずに実務経験を積む期間。副業が禁止されている会社に勤めているなら、まずは無料でサービスを提供してみることから始めてみましょう。
3年目は週末起業。そして4年目でいよいよ起業に踏み切る、といったステップを踏むことが私たちが提唱するローリスク起業になります。
もどかしいと思うかもしれませんし、すぐに仕事をして金銭を得たい、という気持ちもあるかもしれません。しかし現状、世間では「この教材を買えば月収7桁!」のような煽り文句のもとに高額な情報教材が売られていたりします。残念なことに、人の弱みにつけこんで購入させようとする人たちも多いのです。楽をして稼ごう、これを買えば大丈夫、などというものは無い、とまずは念頭に置いていただきたいですね。
マネ活編集部:「これがやりたいから起業したい」と明確に定まっていない方には、どういったアドバイスがありますか?
土川:キャリア35のセミナーに来られる方はやりたいことのイメージを持つ方が多く、中には複数の起業案からどれにするか決め切れていない方もいます。定まっていない方には「そもそも起業する必要はありますか?」とお聞きしたりもします。
たまに「資格取得に掛けた費用を回収したいから起業したい」という方もいて。それが仕事にしたいほど好きならいいのですが、本当に自分が好きなことなのかよくわかっていない場合もあります。「何のために起業したいのか?」を掘り下げていくと、月に10万円程度をパートなどで稼いで、本当に好きなことは趣味として継続した方が良いという判断になることもあるんです。
そのもっと前段階、何が好きかわからない方には、小学校の卒業文集に書いていた将来の夢を思い出してもらうようにしています。例えばケーキ屋になりたかったのであれば、なぜケーキ屋になりたかったのか考えてみる。「甘いものが好きだから」であれば、ケーキ屋を開業しなくても、自分でスイーツをあちこち食べ比べしてみて、口コミサイトを作ってみるのも一つの手ですよね。人気サイトになればそこから広告収入を得たり、スポンサーがついたりする可能性もあります。子供の頃の夢をヒントに、今自分がやりたいことを探ってもらえたらと思っています。
「一般社団法人キャリア35」の理事の皆さん。起業で悩みを持つ方々に各専門分野からサポートを行う
打ち込み続ける”って難しい。モチベーションを保つ秘訣は?
マネ活編集部:特にスタートアップの段階では、収入の増減で気持ちを左右されすぎないことも大事だと聞きます。精神面のご相談を受けることも多いのでしょうか。
土川:落ち込んでしまったときにどうしたらいいのか、モチベーションをどう維持したらいいのかといったご相談は多いですね。私がアドバイスしているのは、主に三つです。
一つ目は期限を決めること。例えばブログを書くと決めた方には、まず3ヵ月間は毎日更新できるようにするなど、「ここまではがんばろう」というゴールを設定するようお伝えしています。終わりが見えないと、モチベーションの維持が難しくなりますから。
二つ目はSNS断ち。情報を得ることでモチベーションが上がる方ならいいのですが、他人と比べて落ち込んでしまうのであれば、一定期間見ないようにするのも良い方法です。
三つ目はできることから行動に移す、です。頭の中でのシミュレーションはあくまでも想像に過ぎませんし、考えすぎるほど腰が重くなったりします。今はセミナーなども多種ありますから、積極的に参加されるのも良いと思います。
ただ、お金をかければ成功できるわけではありません。いきなり大きな費用をかけるのではなく、できる範囲で動いてみる。それだけでも一人で考え込むより視野が広がるはずです。
マネ活編集部:続けられなくなる理由の一つに、家族の理解や協力が得られないという問題がありました。こういうケースにはどのようなアドバイスがありますか?
土川:特に家族が受け入れてくれないとモチベーションは下がりやすいですよね。私がよくアドバイスするのは「家族にも夢を持たせる」ということ。
私の夫は車好きなんですね。起業したときに、「私が大きく儲けたら好きな車を一台買ってあげる」と夫に言ったのですが、夫は「何を買おうかな」とワクワクするようになりました。大きく儲けていないのでまだ車を買ってあげることはできていませんが(笑)、彼は「どんな車を買ってもらおうかな」と定期的に言ってくるので、楽しみにしているようです。つまり、パートナーの活動は自分にもメリットがあるかもしれないという気持ちにさせることです。
少し似てきますが、直近ではなく少し先の未来の話をするのも良いですね。10年後などそこそこ先の話は楽しいですし、かといって100%夢物語ではない。「子供が巣立ったら海外に住みたいね」など二人で夢を共有することで、「僕もリモートで働けるようにスキルを磨こう」とか、自分なりの目標ができていきます。お互いがそれぞれ目標に向かって頑張ることで、将来の二人の夢へと協力して歩んでいきやすくなります。
「稼ぐ」が目的? 自分が大切にしたいことをもう一度考えよう
マネ活編集部:資金不足を理由に休業・廃業することのないよう、事前に知っておいたほうがいいことはありますか?
土川:開業資金や運転資金として必要な費用は、起業したい内容によって異なります。キャリア35では「半年間無収入でも困らない程度の蓄えを用意しましょう」とお伝えしています。
それから、よく質問されるのは助成金や補助金に関することです。自己資金がないから開業前に助成金が欲しいといわれる方がいるのですが、助成金などがもらえるのは開業後に「これに使いました」と申請をし、受理された後。つまり、まずは自分で支払いを先に行わなければならないのです。しかも書類審査もあるので誰でも簡単にもらえるというものではありません。準備段階でもらえるものではないので、必要な費用の貯蓄は必須です。
また、起業する前に、大きな収入でなくてもいいので自分で継続的に稼げる経験をして、責任感と自信をつけておくことも大切だと思います。
マネ活編集部:無事に起業に辿り着けても、経営を続けていくのはまた違った大変さがあると思います。継続させていくために必要な心がけは何でしょうか。
土川:稼ぐことだけを目的にしないで欲しいということですね。赤字にならないようにはしたいですが、起業する第一の目的が「絶対に月収◯◯万円を稼ぐ」という方でない限り、目先の数字に左右されすぎてモチベーションが下がってしまうのは本末転倒です。
お金を稼ぐことに上限はありません。稼いでも、もっともっとと上に目が向いて自分を苦しめることも起こり得ます。自分にとって本当に必要なのはいくらなのか、具体的な数値を持っておくことも重要です。稼ぐことだけが満足をもたらすのか?どういう状態が自分にとって幸せなのか?ぜひ考えてみてほしいですね。
例えば、あの人と関わる仕事がしたいとか、あの業界に恩返しをしたいなど、「自分は何を起業の目的としていたのか」という視点に立ち戻ることも意識して欲しいです。
経営者としての視点から、起業するために大切なマインドなどもお話しくださった土川さん
マネ活編集部:最後に、何か自分で始めてみたいと思っている方に向けてメッセージをお願いします。
土川:コロナ禍で将来の不安が出てきたり、テレワークで通勤時間が減ったりしたことで、新しいことを始めた方が増えていますよね。皆さんも、日々の生活で“心の引っ掛かり”を感じたら自分の心にフタをせずに、それについて研究したり、そのモヤモヤが解決するにはどうしたらいいのかを考えてみたりしませんか。
新しいことを始めるハードルも昔と比べて低くなりました。ネットを使えば、時間や場所を問わず自分の技術や知識を提供することも可能です。まず好きなことや気になることを見つけ、次のステップとして、それを“アウトプットする”ことを心がけてみましょう。ニーズがあれば、いずれお金が入ってくるようになります。いきなり起業と身構えるのではなく、自分が大切にしたいことを見つめて、まずは一歩行動に移してほしいですね。
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