ペットのための家族信託とは|残されたペットの将来が不安な時の解決策を徹底解説! (第3回)
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年6月22日 10時0分
ペットのための家族信託とは|残されたペットの将来が不安な時の解決策を徹底解説! (第3回)
家族信託の活用方法について、具体的な事例を用いてご説明いたします。今回は、自分にもしものことがあった際、ペットの将来に不安がある場合に、有用となるペットのための信託について解説をします。
ペットの将来が不安な場合
具体事例の前提:
Aさん(82歳)は、犬B(ゴールデン・レトリーバー)とともに1人暮らしをしている。犬Bは、肌が弱く、定期的な診療が必要であり、毎月の医療費が必要である。また、ペットフードも高価なものが必要で、その他、シャンプー、トリミングにも費用がかかる。
Aさんは、最近体調があまり良くなく、近い将来に入院が必要となった場合に、犬Bの飼育に不安を持っている。
Aさんは、近所に犬好きで面倒見のよいCさんがいるので、もしもの時には、犬BをCさんに預けたいと思っている。ただし、犬Bの飼育の費用や謝礼などを明確にした上でCさんに預けたいと思っている。さらに自らの死後は、犬BをCさんに引き取って欲しいと思っている。
一方でAさんは、Cさんが本当に犬Bを飼育してくれるのか不安に思うこともあり、娘Dに相談をしている。なお、娘Dのマンションはペットの飼育が禁止されており、娘Dは、犬Bを飼育することが出来ない状況である。
法律相談へ
Aさんは、ペットの問題についてアドバイスをもらうため、近隣の法律事務所へ法律相談に行った。法律事務所では、Aさんの入院などが必要な場合に備えて、Cさんとの間で犬Bを寄託する契約を結ぶことで犬BをCさんに預かってもらえるようになること、万が一、Aさんが亡くなった場合は、犬BをCさんに負担付遺贈する旨の遺言書を残しておけば、自身の死後もCさんに犬Bを飼育してもらえるとのアドバイスを受けた。
寄託契約や負担付遺贈の問題点
「寄託(きたく)契約」とは、ペットを預かり飼育するという約束のもと、預け主から預かり主にペットを引き渡すことによって成立する契約のことをいいます。また「負担付遺贈」とは、飼い主が亡くなった後に、ペットの飼育を条件としてペットの所有権と飼育費用等の財産を受遺者(遺贈を受ける人)に贈与することをいいます。あらかじめ遺言書を作成し、その中に負担付遺贈の具体的内容を盛り込みます。
これらの方法の大きな問題点として、ペットを預かった人や、死後に遺贈を受けた人に対して、そのペットが適切に飼育されているか誰も監督できないことが挙げられます。特にペットの負担付遺贈を受けた人は、ペットの飼育期間が短ければ短いほど、飼育費用が少なくなり、受け取れる財産が増えてしまう(真面目に飼育すればするほど、受け取れる財産が減ってしまう)という問題に直面することになります。
家族信託契約という解決策
下図のように、家族信託契約を締結することで、ペットの飼育における監視・監督の問題について、一定の対処が可能となります。
具体的には、Aさんは、自身の存命中には、娘Dを受託者(飼育費用を預かる人)、自身を受益者(飼育費用を受け取る人)として、死後には、Cさんを2次受益者(飼育費用を受け取る人)として信託契約を締結します。
Aさんは、信託契約を締結する際に、飼育費用として、まとまったお金を娘Dに預けて、管理してもらいます。娘Dは、Aさんが1人で生活ができている間は、 Aさんの求めに応じて、ペットの飼育費用をAさんに支払います。Aさんが入院した場合には、犬BをCさんに預かってもらい、Aさんの求めに応じて、娘DからCさんに飼育費用を支払います。Aさんが亡くなった場合は、Cさんが受益者となり、Cさんの求めに応じて、娘DからCさんに飼育費用を支払います。また、Aさんの死亡により、犬BはCさんに遺贈されます。この場合、Cさんの飼育費用については、謝礼を加えた費用とすることも可能です。
信託契約において、娘DにCさんの受益者としての立場(飼い主としての立場)をいつでも変更できる権限を付与することが可能です。この場合、娘Dは、Cさんの犬Bの飼育状況が思わしくないと判断すれば、受益者をCさんから第三者に変更することができ、Cさんへの飼育費用の支払いを停止できますので、事実上、犬Bの飼育状況の監視・監督することが可能です。
犬Bが亡くなった場合に、信託契約は終了します。残余財産はCさんではなく、どこかの団体に寄付することにしておけば良いでしょう(残余財産をCさんが取得できることになれば、飼育期間が短ければ短いほど、飼育費用が少なくなり、Cさんが受け取れる残余財産が増えるという矛盾が生じるためです)。
今回は、受託者については娘Dとしましたが、もちろん弁護士等の専門家を受託者に依頼することも可能です。
税制面について
Aさんが亡くなった場合にCさんは受益権を取得するので、その際相続税が課されますが、Cさんが受益権として得る金額は、相続税の基礎控除額に届かず、相続税が課税されないケースが多いと思われます。
まとめ
超高齢化社会が進む日本において、ペットの将来について漠然と不安を持っている方が多いと思います。家族信託契約というスキームを用いることにより、ペットの将来への不安が軽減されるかもしれません。ペットの将来について今一度しっかり考えてみてはいかがでしょうか。
FAQ
- ペットの将来に不安がある場合に解決できる方法は?
ペットの寄託契約、負担付遺贈、ペットのための家族信託契約などの方法がある。 - 寄託契約や負担付遺贈により、ペットに適切な飼育を受けさせることができるか。
ペットが適切に飼育されているか、誰も監視・監督できないので、ペットに適切な飼育を受けさせることが難しい場合もある。 - 家族信託契約によりペットに適切な飼育を受けさせることができるか。
家族信託契約を活用すれば、家族や専門家をペットの飼育に関与(監視・監督)させることができる。 - 自身の死後もペットに適切な飼育を受けさせることができるか?
家族信託契約は、スキーム次第で死後も存続するので、変わらずに家族や専門家にペットの飼育について関与させることができる。 - ペットのために家族信託を活用した場合、税制面で問題はないか。
飼い主の死後、ペットを飼育する人に相続税が課される可能性はある。ただしほとんどの場合、相続税の基礎控除の範囲内に収まることが多く、課税されるケースは少ないと思われる。
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