行動経済学をやさしく解説。心理学と経済学を合わせて行動の意思決定を知ること
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2021年6月24日 10時0分
行動経済学をやさしく解説。心理学と経済学を合わせて行動の意思決定を知ること
行動経済学とは20世紀後半に登場した、心理学と経済学を合わせた学問です。利益を目の前にしたときの人の行動が主な研究対象で、マーケティングなどの分野にその知見が活かされています。行動経済学の法則とその応用例を解説します。
行動経済学とは何か
行動経済学とは、一言でいうと「経済学」と「心理学」を合わせた学問です。20世紀後半からアメリカを中心に発展してきた、かなり新しい学問分野といえます。
・伝統的な経済学と行動経済学の違い
そもそも経済学とは、その名の通り経済について研究する学問であり、景気の動向や企業活動のもたらす影響、人々の購買に関する法則性といったものを研究対象としてきました。
経済学の中にもマクロ経済、ミクロ経済、経済思想研究、といった様々な分野がありますが、それらの伝統的な経済学に共通するのは、「人間は合理的であり、常に利益を最大化するために最適な行動をとる」という前提があることです。
少し難しい表現ですが、これは平たくいえば「人は常に正しく損得を勘定し、その結果最も利益を得られる決断をする」という想定で理論を展開しているということです。
しかし実際の人間は、そこまで合理的ではありません。人は常に計算通り一貫した選択をするとは限らないし、そのときの状況によっては、よく考えると筋が通っていない非合理的な判断をすることも多々あります。
人の行動には人ならではの「心」の作用が深く関係していて、計算結果だけで判断するコンピューターとは違うということです。
行動経済学ではこういった「コンピューターのように合理的ではない、リアルな人間の心理や考え方」を踏まえて経済理論を展開します。ここが従来の経済学と大きく異なるポイントです。
行動経済学の理論の紹介
行動経済学では、利益を得たり損失を被ったりする可能性のある状況で、人がどういった選択をする傾向があるのかを研究しています。
これまでに様々な法則や理論が提唱されていますが、ここではメジャーな3つの理論を紹介します。
・損失回避の法則
損失回避の法則とは、人は得をすることよりも損をすることの方をより重大視する傾向がある、という法則です。1979年に「プロスペクト理論」という論文の中で発表された、行動経済学の基板となる理論でもあります。
たとえば、「A:無条件で2万円もらう」「B:5万円を50%の確率でもらえるが、失敗すれば何ももらえないというゲームをする」という2つの選択肢を用意した場合、多くの人はAを選ぶという傾向があります。
計算上ではBの方が期待値が高い、つまりお得ではあるのですが、多くの人は「確実にもらえる2万円を失うかもしれない損失」に引っ張られて、確実に利益が出るAを選んでしまうのです。
一方、「A:無条件で借金10万円が2倍になる」「B:50%の確率で借金10万円をゼロにできるが、失敗すれば借金が5倍になるというゲームをする」という選択肢を用意すると、今度はよりリスクの高いBを選ぶ人が多くなります。
これは、リスクを負ってでも「借金をゼロにできるかもしれないチャンスを失う損失」を回避したいという気持ちが働くために起こる現象です。
このように、人の意思決定には確率や期待値といった計算以上に、損得に対する感情が大きく影響します。そして「得をしたい」よりも「損をしたくない」という気持ちの方が影響度が大きいというのが損失回避の法則です。
・確実性効果
確実性効果とは、人は「確実なもの」を好むという現象です。
たとえば「100%成功します」という表現と「99%成功します」という表現では、受け取る印象が全く違うのではないでしょうか。実際にはたった1%のごくわずかな差でしかないのに、心理的にはそこに1%以上の大きな隔たりがあるように感じてしまうのです。
また、「絶対に起こりえない事故」と「1%の確率でしか起こらない事故」という表現についても同じです。計算上の起こりやすさにはほぼ差がないのにもかかわらず、1%でもあるといわれただけで本当に起こってしまいそうな気がしてしまいます。
実は保険という商品は、こういった人の心理を上手く利用したものです。「起こる可能性はほとんどないが、ゼロとはいい切れないもの」を過大評価してしまう心理は、保険に加入しようという動機を大きくする効果があります。
・サンクコスト効果(コンコルド効果)
サンクコスト効果とは、今までに費やしてきた費用や時間を「もったいない」と感じる気持ちが、意思決定に影響を与えることをいいます。
皆さんは「これだけの労力を費やしてきたのに、いまさら諦めるなんてできない」と思った経験はないでしょうか。これから費やす投資よりも過去に続けてきた投資の方が、人にとってはより重要に感じられるからです。
そのため、なんとかして今までの投資分を取り戻そうという心理が働きやすくなり、冷静で合理的な判断ができなくなってしまう場合があります。
たとえば、ギャンブルで負けが続いているにもかかわらず「次こそは当たるかもしれないから」という心理から投資を続けてしまい、余計に損失を大きくしてしまったという話はサンクコスト効果が働いた典型的な例です。
ちなみにサンクコストとは直訳すれば「沈んだ費用」、つまり投資したにもかかわらず回収が不可能になってしまった資金や労力のことを意味します。
行動経済学が活用されるシーン
行動心理学は近年様々な分野で活用が試みられています。特に効果があると考えられているのがマーケティングの分野です。
たとえば「期間限定キャンペーン」や「全額返金保証」といったうたい文句は損失回避の法則を利用しています。その期間を逃したら手に入らなくなるかもしれないという気持ちや、失敗したくないという気持ちを巧みにくみ取り、購買意欲をかき立てているのです。
物を売るためには、顧客の心理を的確に理解し、いかに買うという選択をしてもらえるかが重要になります。このときに行動経済学の知識があれば、より選ばれやすい、顧客の心に刺さりやすい宣伝が打てるようになるというわけです。
また、損やリスクを回避したいという人の心理という点で見れば、保険や金融投資といった分野とも親和性が高いです。
金融投資とサンクコスト効果
特に株式投資などで資産運用をする場合は「サンクコスト効果」に注意する必要があります。
投資で損が出ているときに、早めに資産を引き上げて、損失を確定してしまうことを「損切り」といいます。予想とは反対方向にトレンドができたときにとる合理的な対応策です。しかしサンクコスト効果に陥っていると「まだ挽回できるかもしれない」という心理から適切な損切りができなくなり、結果的に損失を大きくしてしまうことがあります。
こういった事態を回避するためには、「○円以上損が出たら売る」「投資に使える資金額をあらかじめ決めておく」といった、感情に左右されることのない具体的なルールを決めておくことが大切になります。
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