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中国の「デジタル人民元」とはどんな通貨?発行の狙いと特徴や仕組みも分かりやすく解説

楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2022年1月18日 10時0分

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中国の「デジタル人民元」とはどんな通貨?発行の狙いと特徴や仕組みも分かりやすく解説

デジタル人民元は、中国が導入へ向けた動きを進めている中央銀行デジタル通貨。国内における資金移動の監視や、通貨の国際化といった狙いがあるようです。ここではデジタル人民元の仕組みや特徴、日本への影響を解説しています。

デジタル人民元とは?

デジタル人民元とは?

・デジタル人民元の特徴
デジタル人民元とは、中国が導入への動きを進めている中央銀行デジタル通貨です。中央銀行デジタル通貨とは、次の3つの要件を備えたものを指します。

 

(1)デジタル化されていること
(2)法定通貨であること
(3)中央銀行の債務として発行されること

 

デジタル化ということは、まず紙を使った紙幣ではないということです。また法定通貨であることや、中央銀行の債務として発行されるという点が、暗号資産や電子マネーと異なります。また中央銀行デジタル通貨は英語で書くと「Central Bank Digital Currency」。CBDCと略されます。

 

中央銀行デジタル通貨は、すでに2つの国で導入されているので紹介しておきましょう。2020年10月に発行されたのがバハマ中央銀行の「サンド・ダラー」。これが世界初の導入とされています。バハマは多くの島からなる国ですが、サンド・ダラーにより住民の金融アクセスが改善しました。

 

もう1つが、2020年にカンボジアが導入した「バコン」。カンボジア国立銀行と、ブロックチェーン開発の日本企業ソラミツが共同で開発したものです。自国通貨より米ドルの利用が多かった状況を改善しようとするものです。

 

そしてこれから中国で導入される予定なのがデジタル人民元。特徴となっているのは、「間接型」の発行という点です。「直接型」の発行では中央銀行が、消費者や企業などのユーザーに対して直接発行します。「間接型」の場合、間に民間の市中銀行が介在するのが特徴となっています。

 

・デジタル人民元発行・流通の仕組み
「間接型」で発行されるデジタル人民元の仕組みを図解してみましょう。

 

まずは中央銀行となる「中国人民銀行」と、個人や企業が利用する「市中銀行」との関係です。

 

中国人民銀行←市中銀行:市中銀行は中国人民銀行の中央銀行当座預金に、準備金を預けます。
中国人民銀行→市中銀行:これに対し、中国人民銀行は市中銀行へデジタル人民元を発行します。

 

次は「市中銀行」と、消費者やお店など個人・企業に相当する「ユーザー」との関係。

 

市中銀行→ユーザー:ユーザーはスマホなどに専用アプリを入れて、デジタルウォレットを作成。市中銀行からデジタル人民元を受け取ることができます。
市中銀行←ユーザー:ユーザーは紙幣を市中銀行に持ち込んで、デジタル人民元を受け取ることも可能。また保有するデジタル人民元の預け入れもできます。

 

流通については、市中銀行間・ユーザー間で、デジタル人民元の受払いが可能です。給与の受取やお店での支払い、個人間でのやりとりなどができるのです。

 

銀行←→銀行:デジタル人民元の受払い
ユーザー←→ユーザー:デジタル人民元の受払い

 

このようにデジタル人民元の発行は、中国人民銀行とユーザーの間に、民間の市中銀行が介在する「間接型」で行われます。

 

・現金やスマホ決済、暗号資産との違い
デジタル人民元と現金との大きな違いは、紙幣という実物があるかどうか。法定通貨であるという点では、どちらも同じです。スマホ決済は、デジタル化されているという点ではデジタル人民元と同じです。しかしスマホ決済では、発行主体が民間企業で、法定通貨ではないことが違いとなります。中国ではAlipay(アリペイ)や WeChat Pay(ウィーチャットペイ)などが扱っています。

 

ビットコインなどの暗号資産も、デジタル化されているという点ではデジタル人民元と同じです。しかし暗号資産は、多数の参加者が発行する形となっていて法定通貨ではありません。また暗号資産は裏付けとなる資産がないため値動きが激しく、価値が不安定です。一方のデジタル人民元は、実物の人民元に価値が紐付けられています。このように比較していくと中央銀行デジタル通貨(CBDC)がどのようなものか、理解が進むでしょう。

中国がデジタル人民元を発行する狙い

中国がデジタル人民元を発行する狙い

・ステーブルコイン「Libra(リブラ)」の存在
中国がデジタル人民元の発行を急ぐ背景の1つに、Facebook(現在の社名は「メタ」)による暗号資産の発行計画があります。SNS大手のFacebookは、2019年に暗号資産「Libra(リブラ)」の発行計画を発表しました。Libraはステーブルコインという形の暗号資産。ドルや円、ユーロ、ポンドといった法定通貨のバスケットを担保として発行されます。価値が法定通貨と連動し、安定しているのが特徴です。発行されれば世界中で決済手段として利用が広がると考えられていました。

 

このLibraの登場に危機感を持ったのが、中国です。もし利便性の高いLibraが国内の決済で広く利用されるようになると、資金移動や経済の監視・統制が失われることになるからです。政府によるコントロールが失われれば、国内経済の不安定を招く可能性があります。つまり、中国がいち早く独自の「デジタル人民元」を導入する理由の1つは、Libraの流入防止です。なおLibraは現在のところDiem(ディエム)と名称を変更し、米ドルとの連動に仕様を変更して導入への動きを進めています。

 

・シャドーバンキングなどの監視強化
また、デジタル人民元の導入には国内経済の監視・統制をより強化する目的もあります。これまで中国の経済においては「理財商品」と呼ばれる高利回りの金融商品を扱う「シャドーバンキング」の存在が問題視されてきました。海外への資金流出にも利用されているようですが、金融当局が実態をつかむことができず経済の不安定化要因となっています。デジタル人民元の導入を急ぐ理由には、こうした資金の動きを把握するという狙いもあります。

 

・米中の覇権争い
米国との覇権争いを繰り広げている中国。世界経済においては、米ドルが基軸通貨となっていますが、デジタル人民元には、この状況に対抗する狙いがあると言われています。米国では、SWIFT(スイフト)やCHIPS(チップス)といったシステムにより、米ドルを使った決済を監視しています。中国の国営企業も、こうしたシステムの監視下にあるのです。国内だけでなく、世界各国との貿易などでデジタル人民元の利用を広めることで、状況を変えたいと考えているのです。

デジタル人民元の今後の動向

デジタル人民元の今後の動向

・世界各国の中央銀行が警戒
2021年10月に、米国でG7財務相・中央銀行総裁会議が開催されました。中央銀行デジタル通貨(CBDC)もテーマの1つとなっていて、プライバシーや金融包摂など13の共通原則をまとめています。「透明性」や「法の支配」を重視すべきという原則も強調され、デジタル人民元を強く意識した内容となっています。デジタル人民元は2022年の北京五輪に合わせて発行する可能性が指摘されていて、警戒を強める動きがつづきそうです。

 

・中国国内での普及手段
中国国内ではすでに、Alipay(アリペイ)や WeChat Pay(ウィーチャットペイ)といったスマホ決済が広く利用されています。こうした中、デジタル人民元をどのように普及させていくのかが注目されます。既存のスマホ決済では、割引などさまざまなキャンペーンで特典を受けられることから、デジタル人民元においても、普及へ向けた特典やサービスの提供があるかもしれません。具体的には実証実験で行われたような無料配布や、国際送金での優遇などが予想されています。

デジタル人民元は国際通貨になるのか

デジタル人民元は国際通貨になるのか

・他国での普及や国際間決済での利用
デジタル人民元を発行するもう1つの狙いは、人民元の国際的な地位を高めることです。デジタル人民元は他国での普及や国際的な決済で利用されることを目指しています。実際、デジタル人民元はいち早く導入されることで利便性も高いと見られています。しかし国際化に向けては、いくつかの壁があるようです。

 

多くの国では、自国の通貨を発行しています。デジタル人民元のような他国の通貨が流入し、自国の通貨を超えたシェアで利用されるようなことに対しては、警戒感を持つでしょう。自国の経済が、他国の政策によってコントロールされてしまうからです。中国の影響力が強い東南アジアやアフリカでも、スマホなどのインフラが整備しつつあるので、デジタル人民元を採用するよりも、独自のデジタル通貨の導入を目指すようになるでしょう。

 

また国際間の決済においては、すでにSWIFT(スイフト、国際銀行間通信協会)というシステムが存在します。クラウドサービスを利用し、デジタル化も実現しています。SWIFTの通貨別シェアは、米ドル(39%)・ユーロ(36%)・英ポンド(7%)・日本円(3%)・人民元(2%)。通貨の選択においては、その国の政治体制や規制の状況が考慮されます。デジタル人民元の登場で、急速にその国際的な利用が進むかは未知数です。

デジタル人民元が日本に与える影響

デジタル人民元が日本に与える影響

日本でもキャッシュレス決済が普及し、中国からの観光客が多く訪れる場所では、Alipayなどの決済が可能になっています。この先、観光旅行をする人の数が、再び増えるかもしれません。その際には日本の観光地で、中国人観光客向けに、デジタル人民元で決済できる場所が出てくる可能性は否定できません。

 

もう1つは中央銀行デジタル通貨(CBCD)に関する、技術開発の問題。現在、各国の中央銀行では、デジタル通貨の研究競争が行われています。デジタル人民元のいち早い導入は、国際的な競争を加速させるものになりそうです。例として、日本銀行の取り組みを見てみましょう。現在、デジタル通貨の実証実験を3段階に分けて実施している状況です。

 

(1)発行や流通の基本的な機能を検証
(2)保有金額の上限など付加機能を設定し、実現に向けた検証を実施
(3)企業や消費者が参加するパイロット実験

 

現在は第1段階を進めていて、2022年4月から第2段階へ移行します。

 

また2021年11月、メガバンクなど約70社が参加する企業連合がデジタル通貨の試験発行開始を発表しました。2022年中の実用化を目指します。こちらは銀行預金を裏付け資産として発行するタイプ。企業間の送金や決済に利用される見込みで、デジタル通貨により、送金の効率化とコスト削減を狙います。デジタル人民元の導入を引き金に、世界各国でデジタル通貨の導入が早まる可能性があると言えるでしょう。

金融のデジタル化が進み、世界各国が中央銀行デジタル通貨の導入を検討し始めています。そうした中いち早く「デジタル人民元」の開発と導入を進める中国。国際経済における地位が、今後どのようになっていくのかが注目されます。中国経済への投資を検討しているのであれば、楽天証券の口座がおすすめです。中国株の取り扱い銘柄が多く、特定口座・NISA口座も利用できます。日本円で購入でき、売却代金も日本円で受け取れるので、中国株式への投資を手軽に始めることができます。

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