食は人生を豊かにする。一生の財産になるような「おいしい食(店)」の出会い方(イナダシュンスケ)
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2022年7月20日 10時0分
食は人生を豊かにする。一生の財産になるような「おいしい食(店)」の出会い方(イナダシュンスケ)
食マニアであり南インド料理店「エリックサウス」を取り仕切る飲食店プロデューサー・イナダシュンスケさんが「おいしい食(店)」の出会い方について解説。予算、メニュー、店選びのポイントほか、テイクアウトのコツなど、気軽に食を楽しむ方法も紹介しています。
社会人になり金銭面にも余裕が出てくると、学生時代には味わえなかったようなおいしい食を味わってみたい、と思うことはありませんか?
僕、イナダシュンスケ自身は料理好きな家庭で育ったこともあり、幼い頃から食に関しての興味関心は強め。今では南インド料理専門店「エリックサウス」をはじめとする、さまざまな飲食店の中の人として活動しています。ただ、そんな僕がより食にのめり込んでいったのは大人になってからだと思います。まだ若くてお金もなかった頃から、ちょっと背伸びが必要な金額の店も含めていろいろなレストランを訪れました。
そこで学んだのは、料理をどう選んでどう食べたらそれは一番おいしくて、シアワセが最大化するかということでした。そのノウハウもまた一生の財産です。そんなノウハウを一度掴めればしめたもの。それが例えばファミリーレストランだったとしても、その店を最大限に楽しむことだって可能になります。
そして、おいしい食に出会うと、人生はどんどん豊かになっていくと感じています。そこで今回は、僕自身がこれまでの食体験から導き出したおいしい食に出会うためのお店選びのコツや、食事自体の楽しみ方について紹介していきたいと思います。
まずは基本から。僕のおいしい食(店)の見つけ方
まずはじめに、実際に経験値が上がっていくようなおいしい食(店)の見つけ方を紹介したいと思います。
1. レビューサイトの「点数」を、まずはいったん信じてみよう
レビューサイトでは店ごとの「点数」がまず表示されるのが常です。世の中では「レビューサイトの点数なんてあてにならない」という人も少なくありませんが、僕はこれは半分正しく半分間違っていると思います。
特に飲食店への経験値がまだそれほど高くないうちは、点数はおおいに参考にすべし、というのが僕の考えです。なぜなら点数の高い店は必ず何らかの突出して良い点があるはずだからです。
なのでお店選びの第一段階として点数の高い店をいくつかピックアップするというのは決して間違っていません。ただし、先程「点数があてにならないというのは半分正しい」と書いたのにも一応の理由はあります。点数だけを基準にピックアップすると「点数は低いが実はとても良い店」がそこからごっそり漏れてしまうから……ではありますが、そういう店を頑張って見つけるのは、経験値をある程度上げてからでも良いと思います。
2. なぜその店の「点数」が高いのかを読み解こう
さて、点数の高い店をいくつかピックアップしたら、その後の方が実は重要です。それらの店がなぜ評価が高いのか、その理由を読み取るのです。それには具体的にいくつかの口コミを読み込む必要があります。
例えば「居酒屋」というジャンルだと、日本酒を多く取り揃えそれに合う気の利いた酒肴を出す渋めの店は点数が上がりやすいのですが、もしそのとき「ビールをガンガン飲んでボリュームのある料理をお腹いっぱい食べたい」という気分なのに点数だけを見てそこに行ってしまうと確実にがっかりする結果になります。
エスニック系の店は、日本人の舌に合わせることなく現地そのままの味覚を愚直に提供する店が、マニアの熱い支持を受けて点数が跳ね上がっているケースが多く見られます。つまりそのジャンルに関して「初心者」だと、その良さが全く理解できない可能性もあるわけです。
そういう部分を読み取りつつ、より自分が求めている部分が高く評価されている店を絞り込んで行く、というのがセオリーです。
ただし、ここであえて自分の気持ちの方を切り替えるという方法もあります。
先の居酒屋の例で言えば「たまには渋いつまみでしっぽり日本酒を飲んでみるのも大人っぽくていいかも」と、あえてその店に行くということ。あるいは現地流のエスニック店に、慣れないうちは食べづらいし良さがわからないかもしれないけど覚悟を決めて飛び込んでみる、みたいな。
そういう「柔軟に自分の気持ちを切り替えて試してみる」ということができるようになると、経験値はさらに上がりやすくなります。
3. あえてその日の予算より少し安めの店を選ぶべし
店選びでは当然予算も重要な要素になります。基本的な傾向としては客単価の高い店ほどレビューサイトの点数も高いところが多いので、これは悩ましいところ。ここに関して僕は「その日の予算の上限より少し安めの店に行く」ということをおすすめします。理由は2つ。
まずひとつ目。これは多くの店で言えることなのですが、最初からその店の平均客単価より少し多めに使うつもりで行くと、ある段階から突然満足度は爆上がりすることが多いのです。
料理ごとの話で言えば「その店にしてはちょっと高いな」と感じる料理こそ、実は本質的なコストパフォーマンスが高いことが多いものです。そういう料理を見つけたら躊躇なくオーダーできるようにしておくためにも、予算には多少の余裕が必要です。
もうひとつの理由はもっと単純です。予算のギリギリでビクビクしてると楽しむものも楽しめないということ。
もう一杯ワインを飲みたいのに会計を気にして我慢、デザートも我慢……みたいなことは本末転倒です。行った以上はその店をとことん楽しむというのは外食の鉄則だと思います。
そういう意味ではうっかり予算を超える店に入ってしまったらそこで腹をくくって散財する、というのも経験値稼ぎ的にはむしろ極めて有効です。「明日からしばらく牛丼とスーパーの値引き弁当だな」と心中嘆きつつその場を刹那的に楽しむというのはかなりタフな精神が必要ですが、そこは頑張ってみてほしい。そんな経験も長い目で見ると決して無駄にはなりません。
今の時代、実は失敗せず食の経験値を上げやすい
僕も過去には手痛い失敗を繰り返してきましたし、こんな店来なきゃ良かった……みたいなことは何度もありました。でも実は今の時代って、そういう点では昔よりずっと恵まれていると思います。
まず第一に世の中から「おいしくない店」がほんと減りました。価格も適正です。昔はデート向きのおしゃれっぽい店は値段ばかり高く内容が全く伴わない、なんてことも珍しくありませんでした。だから人々はわざと小汚い店を選んで行ったりもしたのです。
でも今はそんなことありません。スタイリッシュな店もそうでない店も、(一部例外はあるとはいえ)それぞれの店ごとの考えに沿って適正な料理を適正な価格で提供していると感じます。良くも悪くもそうでない店はあっという間に淘汰されてしまう時代だからです。
もうひとつはネットの存在です。気になる店の情報は、グルメサイトやマップですぐに得ることができます。あるジャンルに特化したマニアのブログもありますし、お店自らが公式サイトから発信していることもあり、とにかく情報の量にはこと欠きません。
具体的にお店選びを、となると今はそういったネットの情報を拾うところから始まるということが多いのではないでしょうか。街を歩いていてふと気になったお店があれば、その場でスマホで検索してより具体的な情報を得るなんてことも可能です。
いざお店に入ったら。まずは「お店のおすすめに素直に従ってみる」
お店の選び方がわかってくると、次々いろんなお店に行きたくなるものです。しかしその中で特にお気に入りの店が見つかったら定期的に通うのもまた大事。単に季節ごとにメニューが変わるから、というだけではなく、良い店というものは通えば通うほどその良さを再発見できるもの。またそれが今後のお店選びの基準にもなります。
どこかホームを決めて、そこを拠点にあちこち遠征するイメージです。「いつかまた絶対に帰ってくる店」があることは人生を豊かにしてくれます。
いずれにせよお店では「お店のおすすめに素直に従う」というのが、店選びより更に重要です。これは単に「お店のおすすめメニューをそのまま頼む」ということではなく「お店はお客さんにどう楽しんで欲しいのか」ということを読み取って、なるべくそれに沿った使い方をするということ。つまり、郷に入れば郷に従え、ですね。
あるイタリアンのお店の話をします。この店はコース料理が無くアラカルトのみの店なのですが、メニューブックは、冷前菜・温前菜・メイン・パスタの4ページ。そしてこのメニューブックには一番目立つところにこんなことが書かれています。
「お二人様なら各ページから1品ずつ選んでシェアするのがおすすめです」
これはわかりやすいですね。お店がお客さんにどう楽しんで欲しいかがシンプルに伝わります。食べ歩き初心者のときにこんなお店に当たったら本当にラッキーですね。メタルスライム並みに経験値が稼げます。
もちろんここまで具体的に分かりやすく導いてくれる店はなかなかありませんが、メニューなどからなんとなくそれを読み取ることは可能ですし、わからなければ店員さんにガンガン質問することを強く推奨します。お店側としてもそういうことを質問されるのはうれしいものです。実際僕も自分のお店に立って接客しているとき、質問はされればされるほどうれしい。つい張り切っちゃいます。
その店を高く評価している人たちがどういうスタイルで利用してるかをレビューで予習して臨むのも有効ですし、そのジャンルのおおまかな作法みたいなものもネットで簡単にアクセスできますから、先にざっくりそういう知識を身につけると更に良し。いずれにせよ、メニューを漫然と眺めて食べたいと思ったものを適当に頼む、というのは、特に最初のうちはあまりおすすめできません。
外食初心者におすすめのお店
食との出会いが楽しくなってきたら。より気軽に充実した食を味わう方法
おいしい食(店)と出会えるようになってきたら、もっと日常から手軽にそういう食(店)と出会えるようになりたいもの。ここからはより気軽に、充実した食体験を味わう方法をご紹介しようと思います。
1. ランチタイムは「1.5倍の法則」のお店に入るべし
懐をさほど痛めずに満足度と経験値を上げるのには、ランチタイムも有効です。僕は「ランチ1.5倍の法則」というものを提唱しています。
ランチの相場はエリアによってけっこう違いますが、例えば相場800円前後のエリアなら1,200円、相場1,000円なら1,500円を少し超えたくらいで突然満足度が爆上がりするポイントがあるのです。日常と非日常の境目とも言い換えられるかもしれません。もちろん日常的な価格で満足のいく、安くておいしい店を発掘するのも楽しいものではありますが、こちらではなかなか経験値が上がりにくい。
1週間毎日コンスタントに800円使い続けるよりは、途中でおにぎりの日や菓子パンなどの日を挟みつつ使う日は思い切って使う、という生き様を僕は推奨します。昼休みの時間に余裕があれば、和洋問わず「ランチタイムのミニコース」は特に狙い目です。
2. 「自分で自分をもてなす」テイクアウト術でさらに食を楽しもう
外食で少し経験値を上げると、テイクアウトもぐっと楽しくなります。レストランで料理を楽しむ「流れ」を理解していると、デパ地下などでもそれを応用できます。
単に目についたおいしそうなものをピックアップするだけでなく、冷前菜→温前菜→メインみたいなレストラン的な流れを意識して「自分をもてなす」という感覚がキモ。
レストランより割安で同じような満足を得られるだけでなく、例えば、前菜は中華とフレンチでメインは和食、みたいなお店では不可能なコースを組める密かな楽しみもあります。
デパ地下テイクアウトでお二人様用フルコースを組み立ててみた
・【温前菜】肉しゅうまい……単価高めのデパ地下で、点心は狙い目! ボリュームたっぷりの専門店の味わいがリーズナブルに楽しめます
・【メイン】三種の西京焼き丼……メインの魚料理を兼ねた締めごはんとしてこんなチョイスはいかが?
・【デザートを兼ねたおつまみに】チーズの盛合せ/バゲット……食事の最後をチーズで締めるレストラン的な楽しみをお家ご飯にも取り入れてみては。おいしいバゲットとともに
3. 「おひとり様」ディナーに挑戦してみよう
テイクアウトはこのコロナ禍の時代において以前より更に重要な食の楽しみの一角となりましたが、僕はこれにプラスして「おひとり様」を推奨したいと思っています。
ランチや定食はともかくディナーのおひとり様には抵抗のある方も多いかもしれません。しかし実際はすでにいろんな店でおひとり様ディナーを楽しんでる人たちはたくさんいます。もちろん僕もそのひとりです。
メニューやお店の構造上おひとり様を受け入れ難いお店も一部あることは確かですが、言ってもそれは予約の段階でわかります。たぶん多くの人が思っているより、お店としてはおひとり様大歓迎なものです。
いや、むしろディナータイムにおひとり様の多い店は確実にいい店と僕は断言します。実際僕は、通りすがりのレストランをちらっと覗いてそこでワインを傾けながらゆっくり料理を楽しんでいるようなひとり客がいたら、後日必ず自分もその店を訪れます。まずハズしたことはありません。付き合いや体面と関係なく純粋に自分自身が良い時間を過ごすために選ばれる店が悪かろうはずがありませんから。
おひとり様にはもうひとつのメリットがあります。お店選びの自由度が上がるということ。クセの強そうなエスニック店でも、自分さえ覚悟を決めれば同行者の同意を得る必要はないのです。普段よりちょっと高い店に行くのもある意味気軽に決心できます。
逆にデメリットとしては、コースは2人からだったり、だからといってアラカルトだと一品の量が多すぎてひとりではいろいろ頼めない、みたいなところでしょうか。しかしこの状況下で、お店にとってもおひとり様は以前にもまして重要な存在。そういった部分を見直しておひとり様が利用しやすいように工夫する店は今後どんどん増えていくと思いますし、個人的にもそれをとても期待しています。
「おひとり様」初心者におすすめのお店
伝統的なインド料理と、世界最新のモダンインディアンキュイジーヌを楽しめる個性的なレストラン。2ヶ月ごとに替わる季節のコースはひとりから利用できるとともに、普段使いならカウンター席限定でおひとり様用アラカルトメニューも気軽に楽しめます
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食の経験値を積むことは一生の財産になる
ここまで僕自身の体験をもとにした、食の経験値を上げるようなおいしい食(店)の出会い方について紹介してきました。
僕自身、割烹料理を知ったことで、それまで何とも思ってなかった実家のどうってことない和食の晩ご飯の良さを再発見したり、クラシックフレンチを知ったことで近所の昔ながらの洋食屋さんが実はそれと繋がる尊さを秘めている事に気付いたり。とにかく経験値は決して裏切らないのです。
人生トータルで見ると、当時頑張って捻出した飲食代金はきっちり回収してやったな、とほくそ笑んでいます。
また、おいしい食(店)に出会うことは、自分の「好き」が広がるきっかけにもなると考えています。好きな食べ物を食べるのは、人生におけるシアワセの中でもトップランクのものですよね。人はそれぞれ、自分にとってとっておきの大好物があると思います。
子供の頃から気がついたら大好物だった、というパターンもあると思いますが、意外とあるのが、最初は別に好きじゃなかったのにあるとき突然好きになった、というパターンではないでしょうか。そして、最初は好きじゃなかったのに後から好きになったものは、最初から好きだったものよりむしろ強烈な大好物になることがあります。
僕にとってはそのひとつが南インド料理の「ミールス」でした。ミールスというのは南インド伝統料理の定食。大きな丸い金属皿の中心に盛られたライスの周りに、カレーやカレーっぽいおかずがぐるりと並べられたスパイシーなワンプレートです。
15年ほど前、当時南インド料理を提供する店など日本で数軒だった頃、僕はこれを初めて食べました。最初は正直、これの何がおいしいのかよくわかりませんでした。元々好き嫌いはさほど無いこともあって、食べられないわけではないのですが、いったい何がおいしいのかいまいちわからない。
しかし今ではミールスを始めとする南インド料理は僕の大大好物です。なぜなら、最初はいまいちわからなかったにもかかわらずなぜか不思議と心惹かれるものがあって、その後いろんな店で食べ続けたからです。何回目かでそれは突然愛してやまない食べ物になりました。
ミールスに関してもそうでしたが、食の経験値を積むことは一生の財産になる、というのが僕の確信です。
気軽に外食を楽しみづらい日々ではありますが、今まで食に対して無頓着だった……という人も、まずは無理をしない範囲でチャレンジしてみて、食の経験値を増やしていっていただければ幸いです。
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