旅した土地の料理を作ると、思い出がより愛しいものになる。大好きなフィンランドを想いながらシナモンロールを作った話
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2022年7月20日 10時0分
旅した土地の料理を作ると、思い出がより愛しいものになる。大好きなフィンランドを想いながらシナモンロールを作った話
週末北欧部 chikaさんは、大のフィンランド好き。今回は、フィンランドで食べた中でも思い入れのある「シナモンロール」を自宅のキッチンで作ります。材料は簡単に手に入るものばかり。フィンランドに想いをはせながら作ると、旅の思い出がより愛しいものになりました。
私はとにかくフィンランドが大好きだ。12年前にフィンランドを訪れてからというもの、北欧好きをこじらせながら生きている。
現在は会社員として働きながら「週末北欧部」としてブログや漫画の執筆をしつつ、いつかフィンランドで暮らすために、現地就業を目指して寿司職人の修行の真っ最中だ。フィンランドに出会わなければ、きっと私の人生は全く別のものだったに違いない……。
毎年のようにフィンランドを訪れていたけれど、最近は新型コロナウイルスの影響で渡航することも難しい。だけど、やっぱりフィンランドをめいっぱい感じたい……!
そこで、フィンランドで食べた思い入れのある食べ物を自宅で作って、旅の思い出に浸ってみることにした。すると、当時の思い出も、フィンランドのことも、より一層愛しくなったのだ。
今回は、特に思い入れのある「シナモンロール」を作ってみることにした。シナモンロールと私にまつわるエピソードも含めて、思い出をたどりながらつづっていきたい。
映画「かもめ食堂」で知った、フィンランドのシナモンロール
「フィンランドの味」と言われて真っ先に思い浮かぶのがシナモンロールだ。私が初めて「フィンランドのシナモンロール」を知ったのは、「かもめ食堂」という日本映画だった。
かもめ食堂は主人公のサチエさんがフィンランドのヘルシンキに構えた食堂の名前で、映画では食堂を訪れる人々との交流が描かれている。その中に、主人公がシナモンロールを焼くシーンがある。そのシナモンロールがとてもおいしそうで、フィンランドに行ったら必ず食べたいと思っていた。
この映画のロケ地となった場所には、今なお「かもめ食堂」のサインの残った食堂がある。この12年間でオーナーさんは変わりつつも、このサインだけはずっと残り続けている。
わたしが初めてフィンランドを訪れたとき、ここはフィンランド人ご夫婦のオーナーが営むフィンランド料理の食堂で、もちろんシナモンロールも看板メニューの一つだった。
初めてフィンランドで食べたシナモンロールは、大きくて平べったくてモサモサしていて不思議な味がして……形も味も日本で食べていたものとは違っていた。けれど、食べれば食べるほどにクセになる味でコーヒーにとてもよく合った。
不思議な味の正体は、フィンランドのパンやケーキには欠かせない「カルダモン」というスパイス。フィンランドの人たちが映画と同じように笑顔でシナモンロールを頬張る姿を見ながら、いつしか私もシナモンロールの虜になっていた。
あとで友だちに聞いたところ、フィンランド語でシナモンロールは「Korvapuusti(コルバプースティ)」といい、その意味は“パンチされた耳”。まさにその通りの形で、思わず笑ってしまった。
フィンランドに行き、このペチャリと潰れた大きなシナモンロールを見るたびに「ああ、またフィンランドに来れたんだなぁ」とじんわり実感する。
思い出のシナモンロールを、自宅で作ってみよう
毎年一度はフィンランドに行くことがライフワークだった私にとって、自由にフィンランドに行くことができない今の時期は少し切ない。けれど、日本にいてもフィンランドを感じることはできる。ラジオを聴いたり、友だちと話したり、北欧食器を愛でたり……。
そして「もうダメだ、全身でフィンランドを摂取したい!!」と居ても立ってもいられなくなると、シナモンロールを焼く。
去年も「今すぐ!!」と思い立ったのが深夜12時過ぎで、材料を24時間営業のスーパーで調達してシナモンロールを焼いた。部屋中がシナモンとカルダモンの良い香りに満たされて、なんとも言えない幸せな気持ちになるのだ。
シナモンロールを捏ね、焼きながら香りを楽しみ、そしてコーヒーをお供に食べる。これこそ、日本にいながらにして、私なりに「全身でフィンランドを楽しむ」最高の方法だと思っている。
発酵時間は30分、材料もすぐに手に入るものばかりで意外と簡単に作ることができる。フィンランドのシナモンロールに絶対欠かせない「カルダモン」も、スパイスコーナーに行くと大体のスーパーには売っている。
唯一手に入れにくい材料が「パールシュガー」だけれど、私は身近な材料で代用している。例えば角砂糖を砕いたり、アーモンドダイスを振りかけてみたり……意外と何とかなるものだ。
早速材料をそろえる。今回は材料をすべてこの半量にし、4つ作ることにした。
▼材料(8〜9個分)
【生地】
・強力粉……250g
・薄力粉……50g
・塩……小さじ1
・バター……30g
・卵……1/2個
・牛乳……180ml
A:砂糖……35g
A:カルダモン……小さじ1
A:ドライイースト……5g
【中身のフィリング】
・バター……適量
・シナモンシュガー……適量
【飾り付け、ツヤ出し】
・ワッフルシュガー……適量
・卵黄……1/2個
▼作り方
1……フライパンにバターを入れて焦がさないよう火にかけ、溶けたら牛乳を加える。人肌くらいに温めたらボウルに移す。
2……ボウルにAを加えて混ぜ、強力粉と薄力粉と塩、卵をダマにならないように少しずつ加える。カルダモンの香りにワクワクする。
3……よく混ぜて1つにまとめ、ラップをして30分寝かせて発酵させる。
4……30分経過したら、まな板に打ち粉をし、生地を長方形に伸ばす。
5……表面にバターを薄く塗り、シナモンシュガーをたっぷりかける。
6……生地をくるくる巻き、最後の端をつまんで閉じて棒状にする。
7……生地を1つ1つ台形になるように切っていく。
8……台形の頂点を親指でグッと左右に押し付ける! 映画「かもめ食堂」の主人公に自分を重ね、楽しい気持ちになる。
9……照り出しの卵黄を塗って、ワッフルシュガーを振る。
10……200℃で10〜15分焼けば、出来上がり!!
シナモンロールを作るときに一番幸せなのは、焼いている間の15分だと思う。オーブンから漂うカルダモンとシナモンの香りは、私が思う「THEフィンランドの香り」。部屋中がフィンランドの香りに満たされて、その瞬間だけはこの小さなキッチンがフィンランドのように感じられた。
私とフィンランドの出会い
そもそも、私とフィンランドの出会いは、8歳までさかのぼる。当時は近所の英会話スクールに通っていて、ある冬の日に先生から「今日はフィンランドのサンタさんにお手紙を書きましょう」と紙とペンを渡された。
サンタさんの存在を強く信じていた私は、自身の誕生日がクリスマスであることも相まって「いつも誕生日にプレゼントをありがとうございます、いつかフィンランドに会いにいきます」と感極まりながら手紙を書いた。これが、私とフィンランドの初めての出会いだった。
それから時が経ち、私が初めてフィンランドを訪れたのは大学3回生の冬だった。就職活動前の最後の海外旅行先を決めようと本屋に立ち寄ったとき、なぜか急に8歳のときの「サンタさんへの手紙」を思い出した。
「そうだ、フィンランドに行かなきゃ」
こうして私はクリスマスのフィンランドにひとりで行くことを決めた。
初めて降り立ったフィンランドに、私はすっかり恋に落ちた。自然豊かで美しい街、優しいフィンランドの人たち、素朴で美味しいフィンランド料理……挙げるとキリがないけれど、私が一番気に入ったのはフィンランドの「静けさ」だった。
フィンランドには「会話は銀、沈黙は金」ということわざがあり、友だちと一緒にいても話したいことがあるとき以外は静かに沈黙して過ごす。それが私にはとても心地よかった。
沈黙の中見上げた街中のクリスマスイルミネーションはゴールドだけが輝き、駅にも街にも余計な音や色が少ない。ヘルシンキは「自分の生きる音」が聞こえやすい、自然体でいられる街だと思った。
これまでいろいろな国を旅して、お気に入りの国はあったけれど「ここに住みたい」と思ったのはフィンランドが初めて。それから私はすっかりフィンランドの虜となり、毎年必ず1回はフィンランドを訪れるのがライフワークになった。
思い入れのある土地の料理を作れば、キッチンから現地へ旅立てる
コーヒーを淹れて、お気に入りの北欧食器でシナモンロールを食べる。頬張った瞬間に「コレコレ〜!!」と、思わず笑顔になってしまう。自分で作っておきながら、「フィンランドの味」が自分の手の中に収まっていることがうれしい。食べるたびに、フィンランドの思い出が込み上げて胸がいっぱいになった。
こんな時期だからだろうか、次にヘルシンキに降り立った時には感動して泣いてしまうんじゃないかなと思う。
もしまたフィンランドに行けたら、やっぱり初日は大きなシナモンロールを食べるだろう。そして友だちがおすすめしてくれた、ヘルシンキで一番大きいと評判のシナモンロールが食べられる「Café Succes」にも行きたい。そんなことを思いながら、シナモンロールを頬張る。
「きっと今日も、ヘルシンキのどこかでフィンランドの人たちも同じ味を楽しんでいるんだろうな……」
そんな姿を想像すると、この日本の小さなキッチンがフィンランドに繋がっているような気がするのだった。
もし同じように大好きな国や土地がある人は、現地で食べたお気に入りの料理を自宅で作ってみるのも素敵だと思う。料理を作っている間も、頬張っている時にも、その土地の思い出で胸いっぱいに満たされて、なんだかより一層愛おしい思い出になっていく。
たとえ今は遠く離れていても、レシピひとつでキッチンから旅を始められる……そんな風に思うのだ。
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