加給年金とは|受給金額はどのくらい?受け取るための条件や手続き方法も
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2022年8月18日 10時0分
加給年金とは|受給金額はどのくらい?受け取るための条件や手続き方法も
年金の「家族手当」とも呼ばれる加給年金の制度をご存じでしょうか。厚生年金の加入者に年下で専業主婦(夫)の配偶者がいる場合、年金に上乗せで加給年金を受け取れる可能性があります。加給年金があれば老後の生活費の助けとなりますので、自分の家庭がもらえる対象か確認しておきましょう。ここでは、加給年金とはどのような制度なのか、受け取るための条件や手続き方法などについて解説します。
加給年金とは
加給年金とは、厚生年金の加入期間が20年以上ある人が65歳になり厚生年金を受け取る際、65歳未満の配偶者か18歳未満の子供がいる場合に受け取れる年金です。扶養家族のいる人が上乗せで受け取れる「扶養手当」や「家族手当」のようなものだと考えて良いでしょう。
会社員の夫と年下の専業主婦の家庭では、夫が定年退職して年金を受け取れたとしても妻は65歳になるまで自分の年金を受け取れません。夫の収入が少なくなった分、生活費に困ってしまうことが想定できます。そんな状況を避けるために、夫の年金に上乗せして支給されるのが加給年金です。
加給年金は厚生年金の制度のため、会社員や公務員など勤務先で厚生年金に加入していた人のみが受け取れます。そのため自営業の人など、国民年金のみの加入者は対象外となります。
また、加給年金が支給停止されるケースとして「配偶者が加入期間20年以上の老齢厚生年金・退職共済年金の受給権利がある」というものがあります。配偶者が60歳を過ぎて老齢厚生年金などを受け取り始めると加給年金が支給停止になるため注意しましょう。
加給年金をたくさん受け取れるのは「夫が会社員や公務員で、妻が専業主婦(会社に勤めていた期間が20年未満)だった年の差夫婦」です。夫が65歳になった時点から、妻が65歳になる時点まで加給年金が受給できるため、年齢が離れているほど長い期間受給できることになります。
加給年金を受け取るための条件とは
加給年金を受け取るための条件について、詳しく見ていきましょう。
まず、加給年金を受け取るための基本の要件が以下のとおりです。
1. 本人の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある
2. 本人が65歳到達以降に老齢厚生年金を受給する
3. その人に生計を維持されている配偶者または子がいる
配偶者や子に関する要件は以下のとおりです。
配偶者:65歳未満であること
子:18歳到達年度の末日(3月31日)までの子、または1級・2級の障害がある20歳未満の子
さらに、配偶者や子は厚生年金の受給者に「生計を維持されている」ことを示す必要があります。生計を維持されていることを示すためには、次の要件をどちらも満たさなければなりません。
●前年の収入が850万円未満である、または所得が655万5,000円未満である
●生計を同一にしている(同居している、仕送りを送っている、健康保険の扶養親族であるなど)
つまり、配偶者や子自身の収入が高いケースや、生活費を自分で賄っているケースでは加給年金は受け取れません。
加給年金の受給金額
では、加給年金はいくら受け取れるのでしょうか。対象者と年金額を以下の表にまとめました。
ここからさらに配偶者の加給年金には「特別加算額」という上乗せがあり、年金受給者(=老齢厚生年金を受給している人)の生年月日に応じて3万3,100円~16万5,100円の金額が加わります。
例えば「昭和18年(1943年)4月2日以後の生まれ」の人の特別加算額は、16万5,100円です。これから加給年金を受け取る人はここに当てはまるので、配偶者の加給年金の額は22万3,800円+16万5,100円の38万8,900円と考えて良いでしょう。月額にすると、約3万2,400円となり、かなりの金額がもらえることが分かります。老後の生活費が大きく増えることになるので、共働きではない専業主婦(夫)家庭にとってはとても助かる制度です。
ただし、年金額は物価や賃金の変動などに応じて毎年改定されており、加給年金の金額も変わるのでその都度確認しておくと良いでしょう。
加給年金の申請方法
加給年金は、申請をしなければ支給されません。はじめて老齢厚生年金を請求する際に加給年金に関する必要事項を記入し、必要書類を添えて「年金事務所」や「年金相談センター」に提出することで同時に申請ができます。
<手続きの流れ>
1. 請求書の事前送付
厚生年金の受給開始年齢の3カ月前頃に、日本年金機構から「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が送られてきます。
2. 請求書の提出
年金請求書は年金の受給権が発生する前に送られてきますが、提出できるのは誕生日の前日以降です。年金請求書に必要事項を記入し、必要書類を添付して提出を行いましょう。
加給年金を請求する際は、本人の年金請求必要書類のほかに以下の書類が必要です。
●戸籍謄本(記載事項証明書)
●世帯全員の住民票の写し
●配偶者の収入を証明する書類:所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など
●子供の収入を証明する書類(義務教育終了前は不要、高等学校等在学中の子供は在学証明書または学生証など)
なお、マイナンバーを記入すれば住民票の写し、配偶者・子供の収入を証明する書類の添付を省略できます。戸籍・住民票などに関しては、受給権発生日(誕生日の前日)以降に発行されたものかつ、年金請求書の提出日の6カ月以内に発行されたものである必要があるので注意しましょう。
また、老齢厚生年金の請求時に加給年金の申請を行わなかったなど、後から請求する場合は「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」を使って請求します。
相談に関しては、受給開始日よりも前から受け付けています。不明な点があれば、事前にねんきんダイヤルや近くの年金事務所などで相談をしてみてください。近くの年金事務所については、日本年金機構のホームページから検索ができます。
振替加算について
振替加算とは、加給年金の対象となっていた配偶者が65歳に達して老齢基礎年金を受け取り始めた際、配偶者本人の老齢基礎年金に上乗せで支給される年金のことです。加給年金は専業主婦(夫)を養っていた夫(妻)が受け取れるものですが、65歳になると支給は停止してしまいます。しかし、完全にもらえるお金がなくなるというわけではなく振替加算と形を変えて、今度は専業主婦(夫)本人の年金に上乗せされるのです。
振替加算を受け取るには以下の条件があります。また、加給年金の対象でなかったケースでも、一定の条件を満たせば振替加算を受け取れます。
●生年月日が大正15年(1926年)4月2日から昭和41年(1966年)年4月1日までの間である
●老齢基礎年金のほかに老齢厚生年金や退職共済年金を受給できる場合、加入期間が合計240月未満であること
●厚生年金保険の35歳以降(夫は40歳以降)の加入期間が、定められた期間内(生年月日により異なる)であること
昭和41年4月2日以降に生まれた人は、振替加算は受け取れません。また、振替加算の年金額は配偶者の生年月日によって決まり、年齢が若くなるごとに減額されていきます。例えば、振替加算がもらえる最後の世代である昭和36年(1961年)4月2日~昭和41年(1966年)4月1日生まれの人であれば、年額1万4,995円が振替加算として受け取れます。
振替加算の支給手続きは、老齢基礎年金の受給手続きの際に配偶者の年金番号や氏名などを記入するだけで、特別な手続きは必要ありません。
ただし、夫が年下で65歳未満のケースなどこれまで加給年金を受け取っていなかった場合には別途手続きが必要ですので、年金事務所などに相談しましょう。
加給年金を停止するには
配偶者が自分の老齢厚生年金や退職共済年金(加入期間が20年以上)を受給し始めると、加給年金は受け取れなくなります。
この場合、自分で加給年金の支給停止手続きをしなければなりません。加給年金を停止するには、最寄りの年金事務所や年金相談センターで「老齢・障害給付 加給年金額支給停止事由該当届」を提出します。
また、配偶者や子供が死亡・離婚などによって対象から外れるケースでは「加算額・加給年金額対象者不該当届」を提出します。
届出が遅れると加給年金のもらい過ぎになり、返金する義務が生じるため早めの手続きが必要です。
加給年金の支給停止規定の見直しについて
令和4年4月から加給年金の支給停止のルールが見直されたため注意が必要です。
今までは「配偶者が厚生年金、退職共済年金などに20年以上加入していて受給する権利がある」というケースに当てはまっていても、給与や役員報酬が多いために年金の支給が全額停止されている際は加給年金がもらえることになっていました。
しかし、今後は全額支給停止されて実際には受け取れない間であっても、被保険者期間が20年以上ある厚生年金・退職共済年金などを受け取る権利があれば、配偶者加給年金額は支給停止されることになります。
ただし、令和4年3月に加給年金の支給がある人については、令和4年4月以降においても加給年金の支給を続ける経過措置が設けられています。
こちらのケースに当てはまりそうな人はルールを再度確認しておきましょう。
まとめ
加給年金は会社員と専業主婦(夫)の家庭で受け取れる家族手当のようなものです。共働きで収入が多いケースや、お互いに厚生年金を受け取っているケースでは支給対象とならないため注意しましょう。支給の条件などが複雑で自分の家庭が当てはまるのかはっきり分からないときは、最寄りの年金事務所や年金相談センターで相談してみることをおすすめします。
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