「ただいま」の場所が2つあることで、心の自由が生まれた。家賃10万円ちょっとから始める二拠点生活
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2022年10月11日 10時0分
「ただいま」の場所が2つあることで、心の自由が生まれた。家賃10万円ちょっとから始める二拠点生活
この記事を今、瀬戸内海が少しだけ窓から見える、古いアパートの一室で書いている。
名前も知らない鳥の声とざわざわ揺れる葉擦れの音。そして遠くから聞こえる連絡船の汽笛がBGMだ。
2022年3月まで約1年間、岡山の瀬戸内海にあるこの港町と、東京のど真ん中を行き来する二拠点生活を続けてきた。「二拠点生活をしよう!」と張り切って始めたわけではなく、自分の心がその時求めるものを探していたら自然とそういう暮らし方になった、が一番近いと思う。
物心がついた頃から「旅をして生きていきたい」と切願してきた。20代、旅暮らしを目標に職を転々とし、たどり着いたのは写真を撮ったり文章を書いたりする仕事だ。しかし、タイ・バンコクに拠点を置き、世界中を飛び回り人生を謳歌(おうか)していた矢先にコロナが流行したため、帰国し現在に至る。
空っぽの心にもう一度栄養を入れるため(そして旅のリハビリのため)、国内を行き来するニ拠点生活を始めた。現在はその頻度を少し緩め、懲りずにもう一度、海外拠点に視野を向けつつある。
そんな私の生活を「泳いでいないと死んでしまう魚みたい」と友人は笑う。だけれど、食べたいものや体調が毎日変わるように、自分の身を置きたい場所が日々違うのは当然のことだと思うのだ。にぎやかな都会がしっくりくる日もあれば、風の音と鳥の声に包まれて仕事をしたい日もある。
自分の心のコンディションに合わせて居場所を選ぶことは、人生を豊かにしてくれる。私は普段断定することは少ないけれど、これだけは絶対。そしてそういう生活は今や一部の特別な人のものではなく、「それいいね」と思える人が平等に得られるものになってきたな、と感じている。
今回は私の体験談をベースに、東京と岡山の二拠点生活でかかったお金や実際の暮らしのこと、岡山に住み始めたきっかけや金銭感覚の変化についてまとめてみた。
いつかこの生活を始めてみたい人、これから検討している人にとって、何かヒントや足がかりになったらうれしい。
二拠点の場所をどう選ぶ? 「自分が心地よいと思えた場所と条件リスト」のススメ
まず、岡山県は私の出身地でもないし、特別仲の良い友人がいたわけでもない。ではなぜこの場所を暮らす土地に選んだかというと、「条件リスト」に当てはまったからだ。
タイ・バンコクから引き上げて国内での二拠点生活を始めようと考えた時、東京はすでに自分の中で確定していたが、もう一拠点の候補地が特になかった。そこで始めにやったのが「これまで自分が心地よいと思えた場所と条件」のリストを作ってみること。
リストの作り方はシンプルで、これまで自分が訪れてみて「なんだかよくわかんないけど好きだな」と感じた場所の“よくわかんないけど”を言語化していく。
私は以下をスプレッドシートにそれぞれまとめてみた。
1.これまで心地良いと感じた町の名前(国内外問わず)
2.町の人口
3.町の地形
4.町の特徴
5.特に好きだなと思ったポイント(ざっくり)
6.ここは嫌いだなと思ったポイント(ざっくり)
私がリストに載せたのは、国外だとインド・リシケシュやネパール・ポカラ、ベトナム・ダナン、台湾・台南。国内だと沖縄・宮古島、長野・松本など。
とにかく最初は思いつくだけ並べてみる。出し終わったら今度はGoogle 検索で「インド リシケシュ 人口」などを調べてリストを埋めていく。そうすると、その好きな場所の共通点が見つかったりする。
私の場合、出した場所の共通点は以下が多かった。
このリストは100%正確である必要はなく、自分が「この場所が私のアナザースカイかもしれない!」という目星を付けるためのものなので、検索しても情報が出てこない場合は「人口は多分5万人くらい?」みたいなざっくりとした記入でOK。
大事なのは自分の中の納得感だ。特に「苦手なポイント(嫌だと思うポイント)」は、出しておくとわかりやすい指標になる。私の場合は「寒い」が最大の苦手なポイントなので、この時点で雪国や寒さの厳しい土地は確実にリストから外れる。
この話をすると「古性さんて普段は結構感覚派なのに、めちゃめちゃ計画的なんですね!」と笑われるけれど、こうして選んだ今の町を、はちゃめちゃに愛している。データは裏切らない。
「二拠点生活をやってみたいけれど、場所はまだ決まっていない」という人はぜひ試してみてほしい。
出費の大きな割合を占める「交通費」と「家賃」を抑える工夫
二拠点生活中は、月の半分を岡山、半分を東京で暮らしていた。つまり約15日に一度移動をする。
仕事の都合で移動することもあれば、自分の心が今都会を求めているのか、自然を求めているのかで決めることもあった。突然自然が恋しくなれば岡山にトンボ帰りすることもあったし、もっと東京にいたければ滞在を伸ばすこともあった。
そんな話をすると「すごくお金がかかりそうですね」と言われる。
だけれど、自分の財布の状況と合わせていくつかの選択肢を持っておき、自分が最低限どの状態であれば心地よいのかをきちんと知っておけば、実は金銭的なダメージは少ない。
行き来する手段。金額は私が利用した際のもの
(画像はピンチアウトでご確認ください)
例えば、二拠点生活で大きな割合を占める交通費。岡山と東京を行き来する手段は大きく分けて「新幹線」「夜行バス」「飛行機」の3つがある。
金銭的に余裕がある場合は、単純に新幹線を選べば良い。速いし、何より移動しながら仕事もできる。逆にとにかく安く移動したければ、夜行バスを選ぶ。新幹線より時間はかかるけれど、1/4程度の金額で行き来できる。最近では充電やWi-Fiが利用できたりするし、女性専用車もある。
飛行機は時期によって価格が大きく変わるので、タイミング良く利用できればお得な手段だ。航空会社によってキャンペーンがあったりもするので、都度チェックしておくのをおすすめしたい。ちなみに私がよく使うのはスカイスキャナーで、出発日の欄を「最安値の月」に選択しておくと、少し先の月の、一番安い日をピンポイントで表示してくれる。新幹線やバスよりもさらに事前の予定を立てる必要があるけれど、岡山と東京を1万円以下で行き来できる月もある。
次に家賃の話。私の場合、東京と岡山の両方合わせて1カ月で10.5万円ほど。ここに光熱費を入れると12万円前後くらい。
岡山の家はごく一般的な賃貸。2年契約の2K、築40年くらいで家賃約3.5万円の古いアパートを借りている。家の条件はあらかじめ決めていて「家賃5万〜6万くらい」「窓から海が見えること」「駅から徒歩15分以内であること」の3つ。本当はもう少し築年数の浅い家を探していたのだけれど、ノスタルジックな雰囲気と、何より家から海が徒歩5分以内であることに心惹(ひ)かれて決めた。ちなみに想定より家賃は安かったけれど、地域柄、都市ガスではなくプロパンガスのため、光熱費が思いのほかかかる。結果、想定家賃と出費はトントンくらいになった。
ちなみに物件を探しているとき、一度市内の移住窓口で話を聞いてもらったけれど、なかなか良い物件が見つからず。結果、もっとコンパクトに物件を扱う町の移住コンシェルジュさんに条件を伝え探してもらった。
東京の暮らしは少しユニークで、賃貸ではなく、ホテルやアパートに住んだ分の家賃だけで暮らせるサービス「unito」を利用していた。unitoは「帰らない日数分家賃が差し引かれる」料金システムで、事前に家を空ける日を申請しておくと、物件をホテルとして貸し出してくれる。
貸し出し時、帰宅時のクリーニングもお任せできるし、専用の収納ボックスに荷物を置いていくこともできる。岡山から東京に帰ってきた日に、そのボックスから荷物を取り出すことで、ストレスなくいつもの暮らしが取り戻せる。二拠点生活者にとって、かゆいところに手が届く理想のサービスだと思う。
unitoの他にも、月額4.4万円から全国に住める「ADDress」や、月額2,980円から全国1,017以上の宿泊先に泊まれる「HafH」など、多拠点の行き来を手助けしてくれるサービスが次々と現れている。いろいろ試しながら、一番自分に合ったサービスを探してみてほしい。
二拠点生活のメリットとデメリット
2つの場所に「ただいま」が言える生活は、何よりも心の自由を運んでくれる。仕事が忙しくて行き来できなかった月も「もう一つの部屋がいつでもそこで自分を待っていてくれる」という事実が気持ちを楽にしてくれたりする。
そんな心の平穏のほかに、大きかった変化が二つある。一つ目は、自分の人生に必要なものがわかるようになったこと。
移動を考えると持てるものには限りがある。だからこそ、自分の五感を研ぎ澄ませて選ぶようになる。質の良いものを、必要な分だけ購入するようになった。おかげで自分の中の好きと嫌いのスイッチが敏感になったし、何か欲しいものと出会ったときも「これは自分が1年後も手元に置いておきたいかどうか」を一旦立ち止まって考えることで、無駄な出費が減った。
人間関係にも同じような変化が起きた。片方の拠点にいる時間が短くなることで会える人も限られてくる。おかげで定住の時「なんとなく」で参加していた飲み会やイベント、集まりなども、本当に行くべきかどうかを自分自身とよく話しあうようになった。人間関係のデトックスだ。
二つ目の変化は、固定費の見直しと徹底を始めたこと。移動費や交通費を工夫したり、自分の生活を見直したりしているうちに自然と、今まで無関心だった月々の固定出費にも意識が向くようになった。
例えば通信費。インターネットの契約を見直してみると、実は全く使っていないサポートプランなどが料金に組み込まれていたりする。月々のスマホ代も然り。他にも、もう利用していないサブスクや使っていないカードの年会費などポロポロと出てくる。それらを一つずつ見直すには時間がかかるが、一度やってしまえば気持ちも出費もすっきりする。私は一度腰を据えてカレンダーに「固定費を見直す!」と2〜3時間の予定を入れて作業をした。おかげで月々5,000円〜1万円くらい出費が変わった。
二拠点生活のデメリットを挙げるとすれば、仕事のパフォーマンスが落ちてしまうこと。荷造りや移動などで、どうしても物理的に作業する時間が減り、効率が落ちてしまう。だけれどその分、本当にしたい仕事しか手元に残さなくなるし、自分の単価や作業のフローなどを徹底的に見直すようになる。それに伴い、今まで苦手意識が大きかったスケジュール管理を徹底する力がついた。もちろん収入面とのバランスもあるので前提として「自分の生活は毎月どれくらいの収入があれば満足なのか」を知っておく必要がある。
つまり私の場合、デメリットは時間の経過とともにメリットへと変化したことになる。
一方で、二拠点生活で唯一解決策を模索し切れなかったのは、移動のたびに生活のルーティンが乱れてしまうこと。眠る時間や起きる時間、食べるものなど、場所が変わるとどう足掻いても崩れてしまう。もっとルールをシンプルにするべきなのだろう。これから先の人生も旅暮らしを続けていくので、模索し続けたい。
人生に一度、「二拠点で暮らす」という選択肢を
私は現在、二拠点生活をお休みしている。理由はもっとこの暮らしをアップデートしたいからだ。次は世界中のお気に入りの国に一つずつ自分の「家」と呼べる場所を持ちたい。そのために今は自分と作戦会議をするフェーズなので、こうして岡山の拠点で仲間たちと日々策を練っている。二拠点ではなく、多拠点暮らしに挑戦したいのだ。
ただいまと言える場所が複数あることは「今ここにいられなくても、自分には他に生きる場所がある」というお守りになる。そして何より、毎日が旅をしている気持ちになる。単純に、楽しい。
万が一、二拠点生活が嫌になっても、定額制の居住サービスなどを利用していれば、いつでもすぐに手放せる。今の時代には、そんなわがままな生活を支えてくれるサービスがたくさんある。「ここで一旦終わり」と思ったら、お休みがしやすい。
あらためて金銭的な部分を振り返っても、東京一拠点の頃よりもお金の使い方が圧倒的に上手になった。というより、人生にあって損のない「選択するスキル」や「メリハリをつけるスキル」、そして「お金がなんたるかを知るスキル」が自然と身に付いた気がする
もし、この記事を読んで二拠点生活を始めたいと思ってくれた人がいたならば、「めちゃ良いよ」とハイタッチしたい。
人生の選択に、二拠点で暮らすことの楽しさを。
ぜひ一度、味わってみてほしい。
編集:はてな編集部
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