企業分析に必要な力は“俯瞰力”。米国株投資家・投資カピバラさんに聞く米国株の魅力と見極め方
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2022年12月21日 10時0分
企業分析に必要な力は“俯瞰力”。米国株投資家・投資カピバラさんに聞く米国株の魅力と見極め方
歴史的な円安が続き、円以外の資産を持とうと考え始めた方も少なくないのではないでしょうか。ただ、今まで投資をしたことがない投資初心者の方にとって、日本以外の国の株への投資はハードルが高く感じられるかもしれません。今回お話を伺ったのは、投資デビュー時から米国株投資を行い、特にアメリカのハイテク株に詳しい投資カピバラさんです。テクノロジーに詳しくない方でもできるハイテク株の企業分析の方法や、ハイテク株に限らない米国株の企業分析法についてもお話を伺います。
Twitter・Clubhouseで米国株投資の情報を発信
マネ活編集部:現在の活動内容についてお聞かせください。
投資カピバラさん:兼業投資家として、IT企業の会社員として働く傍ら、投資家として活動しています。投資カピバラという名前で活動し始めたのは2020年10月で、主な活動場所はTwitterです。あとは音声SNSアプリClubhouseで、平日22時30分から米国株の相場実況をする部屋を開いています。その日のニュースや決算情報、リアルタイムな相場情報や経済指標について、ほかの投資家の方と話している感じですね。
あと、日曜日にはTwitterのスペースで「カピバラジオ」という場を設け、1週間の振り返りやリスナーさんからの質疑応答を放送しています。その内容をまとめ、noteでも発信しています。
マネ活編集部:現在の投資ポートフォリオをお話できる範囲でお教えください。
投資カピバラさん:時期によって変わりますが、基本的には米国株が中心で、安定的に運用する「コア」がVTI(全米株式インデックスファンド)をはじめとした投資信託です。リスクを取り高いリターンを目指す「サテライト」のほうに、半導体やヘルスケアなど、将来業績の伸びや成長が期待されているグロース株、シクリカル系(景気の変動によって業績が変動する企業・業界)の中で企業の業績や価値と比べて現在の株価が割安になっているバリュー株をバランスよく入れている状況ですね。
※このポートフォリオはインタビュー当時のものです。
米国ハイテク企業に親しみがあったことから、米国株への投資を開始
マネ活編集部:投資カピバラ名義での活動は2020年10月からとのお話でしたが、投資自体はいつ、どのようなきっかけで始められたのでしょうか。
投資カピバラさん:投資を始めたのは2020年4月、コロナショックの直後です。もともと、投資にはあまり良いイメージがなく、株で大損した友人がいたこともあって、ギャンブルのような怖いものという印象がどうしても拭えなかったんですね。ただ、コロナショックで株式市場が暴落しているというニュースを見て、今始めれば儲かるんじゃないのかと思いまして。そこから急ピッチで調べ、投資を始めたという経緯があります。ちょうど在宅勤務に切り替わったタイミングでもあったので、調べる時間の余裕があったのもありますね。
マネ活編集部:最初から米国株投資を始められたのでしょうか。
投資カピバラさん:はい。先ほどお話した友人の経験談から日本株に警戒心を持っていたことに加え、仕事上アメリカのハイテク企業が取引先だったり、アメリカ企業の製品を使う機会があったりと、アメリカ市場には親しみがあったんですよね。ですので、米国株に焦点を定めて投資を始めることにしました。現在はたまに日本株や中国株をたしなむこともありますが、メインは米国株でずっと投資しています。
マネ活編集部:投資初心者がいきなり米国株を投資対象とするのは難しくなかったのでしょうか。
投資カピバラさん:調べ始める前は、株自体に難しそうなイメージがありましたし、決算も英語で書かれているし難しそうだなと思っていました。ただ、今はプロ、個人問わず、米国株について取り上げている日本語の動画やブログ記事が多くあるので、日本株・米国株の間に情報格差はそれほど大きくないと感じています。私も最初はそうした動画や記事を片っ端から見て勉強していました。
マネ活編集部:本は読まれていましたか?
投資カピバラさん:恥ずかしながら、本はあまり読んでいないです。最初はネット記事や個人ブログ、note、動画がメインで、今は一次情報を求めて決算書を読んでいます。英語が得意でなくとも、今は精度が高い無料翻訳ツールがあるので、昔と比べたら英語の情報にアクセスするハードルも低いんじゃないかなと思いますね。
マネ活編集部:これまでの投資の変遷についても教えてください。
投資カピバラさん:1番最初に買ったのは高配当銘柄でしたね。その次にGoogle、Apple、Facebook、Meta、Amazon、Microsoftなど、いわゆるGAFAMなどの大型グロース系の銘柄を買いました。その後、徐々にそのとき上がりそうな銘柄に乗り換えていった感じです。基本的にはグロース株(売上や利益などの成長率が高く、将来的に大きく株価上昇が期待できそうな株)寄りの投資ですね。
マネ活編集部:今回のテーマはハイテク株ですが、カピバラさん自身はハイテク株に特化して投資しているわけではないということでしょうか。
投資カピバラさん:そのとおりです。そもそも、少なく絞って投資するのはリスクが高いですから、企業だけではなくセクター(投資先のグループ)も分散させるようにしてきました。ちなみに、現在は私が得意としているソフトウェア関係のハイテク株は投資ポートフォリオには入っていません。ソフトウェア関係は今年に入ってから下がり調子なんですよ。半導体もハイテク株に含めるのであれば、4分の1くらいを占めている感じですかね。今は特定セクターにこだわらず、数日、数週間単位の波に乗って勝てる投資を意識しています。
企業分析をする際は業界を俯瞰する意識を持とう
マネ活編集部:今は日本株や中国株にも投資しながら、メインは米国株だというお話でした。投資カピバラさんにとって、米国株投資の魅力は何なのでしょうか。
投資カピバラさん:いろいろなところでいわれているのが、米国株式市場はほかの市場よりも長期間にわたってパフォーマンスが良いということですね。その成長を支える軸が、私は大きく2つあると思っています。まずは市場。米国株式市場は非常に規模が大きく、透明性が高いです。加えて、中国株や日本株市場と比べて流動性が高い。米国市場は世界中から資金が集まってくる金融マーケットの中心地であり、世界の中心地であるということは世界中から監視されているとも言い換えられます。米国株式市場はガバナンスについても一定レベルが保たれ、安心して投資できる環境だと思っています。
2つ目は米国株式市場に上場している企業の姿勢ですね。米国企業は会社の成長のためなら社員を容赦なくレイオフ(一時解雇)しますし、株式会社は株主のものであり、利益は株主に還元するという意識が根付いています。余分なリソースを抱えて低成長になりがちな日本企業にはない魅力があると思いますね。
マネ活編集部:世界情勢が変わり、他国の市場が台頭してきたとしても、米国株の魅力には変化はないと思われますか?
投資カピバラさん:米国株式市場で代表されるS&P500のような銘柄の企業群はアメリカ市場だけではなく、世界中でビジネスを展開しているので、アメリカの代表的な企業群に投資をすれば結果的に世界に分散投資しているとも考えられると思っています。
もちろん中国やインドなど、ほかの市場にも注目していますし、分析もしています。ただ、これらの国は日本人がアクセスできる情報量がまだ少なく、投資環境が整っていないのが現状なんですね。環境が整えば、新興国株市場にも投資対象を広げていかないといけなくなるだろうなとは思っています。
マネ活編集部:カピバラさんにはIT企業勤務という背景がハイテク企業の分析にも役立ってきたのではないかと思います。今はソフトウェア関係のハイテク株はポートフォリオに入っていないとのことですが、ハイテク株の保有自体にメリットはあるのでしょうか。
投資カピバラさん:保有メリットがあるかどうかはそのときの状況次第ですね。自分が知っている企業かどうか、という自分本位な判断軸ではなく、株価が上がるかどうか、という軸で保有するかどうかを決めるようにしています。私が過去、プロフィールに「ハイテク株をもっと身近に」と書いていたのは、ハイテク株が私の得意分野だったからです。情報発信をするにあたり、ソフトウェア関係であればほかの方とは違った分析を記事にできるかなと思いまして。
マネ活編集部:テクノロジーに詳しくない初心者がハイテク株の企業分析をするならば、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。
投資カピバラさん:ハイテク株に限らず、前提として言っておきたいのは、株価は企業の業績が良ければ上がるというものではないということです。ハイテク株に限らず、株を買ったときにすぐ株価が下がってしまったとき、「決算はいいのに」「成長ストーリーは変わっていないんだよ」といった感じで、会社が大好きで保有し続けてしまい、損をしてしまうという人を非常に多く見てきました。
どんなに優れた企業であっても、経済が縮小してしまう局面にあったり、マーケット全体が落ち込んでいたりするときには株価が軟調になってしまうものなので、必ずしも業績が良ければ上がり、悪ければ下がるわけではないんです。株式投資のプロたちですら株を売っているようなときに、投資の素人が「いや、私は上がると信じている」と言えるほどの分析をできるのかというと、難しいですよね。ですので、常にマーケット全体を俯瞰しながら、思考を止めずに売買のタイミングを見ていく必要があるのかなと思います。株価と業績は切り離すことですね。
マネ活編集部:テクノロジーに詳しくない人ほど、企業の知名度や業績に影響されて判断してしまいそうですが、どうやって企業の分析能力を高めていけばいいでしょうか。注意点はありますか?
投資カピバラさん:話題性だけで飛びつかないことですね。ハイテク株やグロース株などで特に多く見られるのが、SNSやブログでインフルエンサーがおすすめしていたとか、すごく夢のある話を聞いて何となくすごそうというイメージだけで株を買ってしまうケースなんです。もちろん、それが上手くいって儲かることもありますが、多くは売り時がわからず塩漬け(やむを得ず長期保有すること)にしてしまったり、話題性で飛びついたために高値掴みしてしまったりすることが多いんです。
テクノロジーに疎い人にとっては、ハイテク企業は事業内容がわかりづらく、業界外の人が見たらたいしたことのない企業でもすごそうだと思えてしまいがちなところがあるんですよ。
じゃあ、初心者はどうしたらいいか。ハイテク株でいうなら、まずはGAFAMのビジネスモデルや決算書を徹底的に調べることをおすすめします。
ハイテク企業は大体GAFAMと競合したり提携していたりするので、基本となるGAFAMについて学ぶことが大切なんです。プロの投資家の記事でまとめられている情報が多くあるので、いろいろなものを読み込んで、わからない単語がでてきたら都度調べましょう。そうすると、自然とほかのハイテク企業がやっていることも読んで理解できるようになっていきます。
インプットだけではなく、アウトプットしてみることもおすすめです。私がやって良かったなと思うのは、分析ノートです。私はそれをnoteでやっていました。最初は企業分析の記事を見ていてもわからない単語ばかりなのですが、1個1個調べて書くようにするんです。noteのように公開されるものだと、間違って説明してしまうと恥ずかしいため、きちんと調べるようになる。そうやってわからないことを1個1個つぶしていくと、理解度が高まるうえ、読んだ方から感謝されて嬉しい気持ちにもなれます。インプットだけではなく、ぜひアウトプットもしてみてほしいなと思いますね。
あとGAFAMをおすすめする理由は、決算書フォーマットの見やすさですね。世界を代表する企業なだけあり、英語ではあるものの非常にわかりやすいです。世界中の投資家から常に監視されている企業ですから、ニュースもすぐに出ますし、日本語解説も早く見られます。最初の教科書としてGAFAMを調べるのが第1歩ですね。
マネ活編集部:第2歩はいかがですか?
投資カピバラさん:自分が調べてみたい企業の分析ですね。ここで気を付けてほしいのが、俯瞰的な分析です。時間をかけて取り組むと、それだけで非常に価値のあるものに見えてくるというサンクコストバイアスという心理学用語があるんです。投資でいうと、何時間もかけてある企業について調べていると、その企業の良いところばかりに目がつくようになるというバイアスですね。ですから、必ず一歩引いて業界全体から俯瞰して分析することが大切です。私はあえて調べている企業の弱みも意識して調べるようにしています。
例えば、Microsoftのこの事業と似たことをやっているけれど、どういうところが違うのかであったり、シェアや成長の度合いの差を見てみたり。ハイテクセクターは成長分野ですので、必ず競合先がいます。ビジネスとしての優位性も調べてほしいですね。私も企業分析noteを書く際には、競合はここで、その会社との違いはどこなのか、勝つための戦略は何なのかを必ずまとめるようにしています。
マネ活編集部:そのほか、初心者に注意してほしい点はありますか?
投資カピバラさん:インフルエンサーの信者になるな、ですね(笑)。発信者としてちょっと自己否定みたいな言い方ですが、やっぱり投資は自己責任なんですよ。本当に投資に詳しく信用できるインフルエンサーであったとしても、100%鵜呑みにしていい意見はないわけです。最終的な投資判断、損切や利益確定の判断は自分でしなければなりません。もちろん、初心者が最初から完璧にできるわけではありませんが、インフルエンサーの意見は参考にする程度にし、自分で試行錯誤していってほしいと思います。
マネ活編集部:投資カピバラさん自身が初心者のときは、どうインフルエンサーの発信と向き合っていたのでしょうか。
投資カピバラさん:あまりはっきりとは覚えていないのですが、ずっと発信を見ていると、どんな人も100%予想が当たることはなく、はずれることもあるとわかってくるんですよね。それで、インフルエンサーの人たちも神様ではないし、自分で考えていかなきゃいけないよねと思うようになりました。
冬の時代を投資仲間と支え合って乗り越えたい
マネ活編集部:投資カピバラさんのような投資スタイルが向いている人の傾向は何かありますか?
投資カピバラさん:まずは投資を通じて何を得たいかだと思います。私のスタイルは、堅実な資産形成なので、投資を通じて社会や経済について勉強したい人に非常に向いているやり方かなと思いますね。投資を通じて学んだことは、普段の仕事やニュースの理解にもつながってくる非常に役立つスキルにもなりますよ。逆に「この企業が好きだから応援したい」みたいな思いで投資したい人にはあまり向いていないんじゃないかなと思います。
マネ活編集部:ありがとうございます。最後に、投資カピバラさんの今後の展望についてお聞かせください。
投資カピバラさん:私はまだまだ若手のひよっこ投資家ですから、今後も引き続き自分の投資スキルや知識を磨いていきたいです。情報発信者としては、発信規模の拡大よりコミュニティに焦点を当てています。
2022年に入ってから株式市場が低迷していることもあり、Twitterにいた株クラと呼ばれる投資家さんたちもアカウントを停止されたり投資をやめられてしまったりしているんです。ただ、冬の時代はいつか終わり、春の時代がやってきます。そのときにしっかり1番おいしいところを全力で掴み取るためにも、投資情報を交換し、ともに高めあえるコミュニティが必要なのかなと思っているんですね。やっぱり投資やお金の話は普通に会社で話しにくかったりしますから。今、私にとってはClubhouseでの配信部屋が1つのコミュニティになっているので、これをもう少しいろいろな形で発展させていけるとおもしろいのかなと思います。
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