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インド映画俳優・ラジニカーントに魅了された私の究極の推し活

楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年3月14日 10時0分

インド映画俳優・ラジニカーントに魅了された私の究極の推し活

インド映画俳優・ラジニカーントに魅了された私の究極の推し活

こんにちは。安田英俊と申します。

 

最近では、日本で「バーフバリ」や「RRR」などのインド映画が話題になっています。そんな中、私は20年ほど前からインド映画の俳優である「ラジニカーント」のファンになり、さまざまなファンとしての活動を行っています。いま流行りの言葉でいえば「推し活」です。

 

ところで、私の行っている「推し活」は、みなさんの考える推し活とは少し違っているかもしれません。今回は以下のような順で、私の推し活について語らせていただければと思っています。

そもそも、インド映画とはどんなものか

まずは「インド映画とはどんなものか」について説明をします。近年、日本にも浸透しつつあるインド映画ですが、詳細についてはあまり知られていないかもしれません。

インド映画は歌って踊る? 上映時間が長い?

インド映画といえば「歌って踊るやつでしょ?」と考えられている人も多いと思います。

 

インド映画が日本で初めてヒットしたのは、1998年に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』。この時に「やたらと歌って踊る」「意味もなく歌って踊る」というふうに宣伝されていました。この印象がいまだに続いているのかもしれません。

 

しかしインドは広く、インド映画も一様ではありません。中には歌も踊りもまったく登場しない芸術的な映画も多数あります。

 

…とはいっても、やはり歌と踊りがふんだんに登場すると、私としても「インド映画らしい」と思うのです。

 

歌と踊りは、インド映画のストーリーの構成上とても重要です。例えば、5分程度の歌と踊りで、5年間のストーリーを一気に進めたり、知り合ったばかりの男女の恋愛を一気に進めて結婚させたり…。歌と踊りがあることで、そんなことができるのです。

 

その一方で、ストーリーの構成とはまったく関係なく歌って踊るシーンも、やっぱりあります。例えば、主人公がステージ付きの飲み屋にフラっと入ると、そこではストーリーの本筋とは関係なく、華やかな歌と踊りのステージが行われている。そんなシーンです。インド映画では「アイテム・ソング」と呼ばれており、一種のお約束のようになっています。

 

また、インド映画というと「上映時間が長い」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。これは、確かにその通りです。

 

実は昔ながらのインドの映画館は上映開始時間と終了時間が決まっていました。そのため、短い映画でも、長い映画でも、一日に上映する本数は一緒。なので、決められた時間の枠をめいっぱい使おうと、3時間くらいの映画がよく作られる傾向にありました。

 

こうした方式は、都市部では過去のことになりつつあります。ただ、上映時間の長さについては現在でもこの名残があるというわけです。

 

また、長い映画には「休憩」が含まれています。観客は、そこでポップコーンやスナック(インド独特の揚げ物などです)を食べて、一緒に来た友だちとこれまで見た前半部分について語り合います。インド人は、こんなふうに友だちと1日かけて映画を楽しんでいるのです。

まるでお祭り会場。インドの映画館はかなり独特

インドの上映スタイルはかなり独特で、びっくりする人も多いかもしれません。

 

上映初日は朝の4時くらいからファンが映画館の前で爆竹を鳴らしたり、太鼓が出てきて演奏したり、お祭り騒ぎです。みんな「映画が無事に公開された」ことを喜んで祝っているんです。

 

映画館の周りにはたくさんの映画の看板が立ち並んでいます。でもこれは、公式の物ではありません。ファンが勝手に看板を作って映画の宣伝をしたものです。

 

大量の人がいるので、長い列ができます。私は映画館に入るための列が2キロくらいになっているのを見たことがあります。

 

列といっても整然としているものではなく、警官が列からはみ出した人をバシバシと棒で叩いて、どうにか2キロの列を作っている…という感じです。こんな状態ですが、みんな楽しそうなんです。ちなみに私も叩かれたことがありますが、やっぱり楽しかったです。

 

映画館は1,000人から2,000人くらいは入るような大劇場。席が壊れていたり、無かったりします。ちなみに、席が無いところでも、お構いなしにチケットを売っています。

 

上映が始まると、客席に紙吹雪が舞い、興奮したファンがスクリーンの前で踊り始めます。これはファンが「映画を盛り上げよう」としてやっていることで、決してマナーが悪いわけではないんです。

 

そして、スピーカーは大騒ぎしている観客に対抗するために、爆音になっています。音も悪いし、割れています。

 

はっきり言って、鑑賞の環境としては最悪です。なにしろ、映画の内容はよくわかりませんので。でもこれがものすごく楽しいんですね。私自身も現地の人と同じように大騒ぎしています。ちなみに、後日映画館が落ち着いた頃に行って、もう一度上映を見ます。ここで映画の内容をようやく理解するんです。

 

こうしたスタイルはインドの中でも比較的古いもので、都市部では日本と同じような最新のシネコンが多数になってきました。英語字幕がついていることもあるので、映画の内容を理解するならこっちです。ただ、古いスタイルの方が圧倒的に楽しいです。

私が応援しているインドの人気俳優・ラジニ様の魅力

こうしたインド映画で、現在もっとも人気のある俳優が「ラジニカーント」です(以下、ラジニ様)。そして、私もそのラジニ様の魅力に取りつかれ、応援している1人です。では、ラジニ様のなにが人を惹きつけるのでしょうか。

「アクション」「スタイル」「エリメイ」

俳優としてのラジニ様の魅力を語るときによくいわれるのが「アクション」と「スタイル」と「エリメイ」です。

 

まずは「アクション」。インド映画は、絶対にありえないことをありえるように見せるのが上手いんです。

 

例えば、ラジニ様が勢いよく歩きます。ただそれだけで、敵は全員吹っ飛ぶんです。完全にありえないことなんですが、見ている側としては異常な説得力を感じて現実的に見えるんです。

 

ハリウッド映画などは、CGを使っていろいろな演出をしますよね。すごくリアルなんですが、頭のどこかで「作り物としてリアルだな…」なんて思ってしまいます。それなのに「ラジニ様が歩いているだけで敵が吹っ飛ぶ」方が「これは現実にありえそうだ」と思わされてしまうんです。

 

そして「スタイル」。「スタイルがいい」なんて言うと、体型がスッキリしているという意味にもとらえられるかもしれませんが、それはちょっと違います。ここでは「所作」とでもいうべき、動きの美しさのことです。

 

例えば、歩くシーンがかっこいい。サングラスをかけるお決まりの仕草があるのですが、これも非常にかっこいい。いつまでも見ていられます。

 

 

ラジニ様主演の映画『帝王カバーリ』のグッズのサングラス 

 

2023年2月現在、ラジニ様は72歳。おじいさんといってもいい年齢です。しかし映画の中では年齢を全く感じさせません。映画によっては、お父さん役の人が年下ということもよくありますが、見ていて全く違和感がないのです。

 

最後に「エリメイ」。聞き慣れない言葉だと思いますが、これは「質素」という意味のタミル語(※1)です。ラジニ様はインドでもトップの俳優なのに、贅沢なことはしません。高級車にも乗らないし、高級なレストランにもめったに行きません。飛行機に乗るときはエコノミークラスです。

 

公の場で賞をもらうときなども、着飾るようなことはありません。インドの一般の人が着ている民族衣装で現れます。そしてラジニ様は年齢もあって頭頂部の髪の毛がほとんどありません。役を演じるときはカツラをつけているのですが、役から離れるとカツラをつけないんです。

 

一見すると、どこにでもいるインドのおじいさんにしか見えない。でもそれが現地の人にはものすごく感動的なことなんです。

 

※1:タミル語……インドには大きく分けて22の言語が存在し、タミル語はその一つ。南インドのタミルナードゥ州で主に話されている

 

俳優を超えた活動をしている

俳優活動で大金を得ているのに、質素に暮らしているラジニ様。では、お金を何に使っているのか…? それは慈善活動といわれています。

 

例えば、お金がない人のために小学校を作る。病院を作る。どうも、そんなことをしているようなのです。…ここで私が断言をできないのは、ラジニ様は「自分が慈善活動をしている」ということをPRしないから。

 

インドでお金を持っている人が小学校や病院を作ると、普通は建物の中に設立者の肖像画や銅像が飾られます。しかし、インドにはラジニ様の肖像画や銅像がある建物はありません。本人も特に言及していません。つまり「この施設がラジニ様によって作られている」という証拠がないんですね。

 

それでも私は「お金がないけれども、(本人が、あるいは親族が)ラジニ様に助けてもらったことがある」という声をたくさん聞きました。日本に住んでいるだけでかなりの数を聞いているので、現地ではもっとたくさんの人がそう言っているのではないでしょうか。

 

このように、ラジニ様の慈善活動はあくまで噂のレベルになってしまいますが、まったく何もないところに噂は広がらないと私は思っています。

ラジニ様のために、ファンも慈善活動をしている

ラジニ様のファンクラブに入っているような熱心なファンは、日本で行われているような「推し活」とはちょっと違う活動をしています。

 

まず映画の宣伝です。先ほども書きましたが、映画公開が近付くと、街中にファンが非公式に作った映画の看板が設置されます。ファンとしては「素晴らしいラジニ様の映画はヒットさせなくてはいけない」と考えて盛り上げているんです。

 

ほかにもラジニ様のためにファンが社会奉仕活動をしたりもします。例えば献血。インドでは赤十字のような組織がなく、患者の型にあった血液を探すのが難しいんです。

 

そんな時にファンクラブに献血を頼む、ということがよくあります。実は2022年に日本でも公開された『響け!情熱のムリダンガム』という映画にもそんなシーンがありました。映画の中で“あるある”として語られるくらい、インドでは一般的なことなんです。

 

ほかにも災害時に救援活動を行ったりもしています。インド洋大津波(2004年)や、チェンナイでの大洪水(2015年)の時もファンクラブは大活躍しました。

 

こういったことはあくまでもファンが自主的に行っていることで、ラジニ様が「社会奉仕活動をしよう」と言っているわけではありません。もちろん純粋な人助けの精神もありますが、そこにはファンによる「推しの名声を高めたい」という気持ちがあるんです。

 

ここまでで、ラジニ様と、それを取り巻く雰囲気がなんとなくわかっていただけたでしょうか。

私が行っていた「推し活」

ここからは私がラジニ様にハマる過程と、実際に行った「推し活」について語らせていただきます。

経営していた駅の売店にラジニ様グッズを置く

私がラジニ様を知ったのは、単なる偶然でした。当時、私はとあるターミナル駅で小さな売店を経営しておりました。朝から晩まで売店で働きづめです。

 

終電を逃すことも多く、そんなときは深夜に映画館で時間を潰していました。そこで、たまたま上映されていた映画にラジニ様が出演されていたんです。それが本当におもしろかった。

 

それをきっかけに、経営していた売店にラジニ様のポスターを貼ったり、タオルを売ったり、LED式の電光掲示板で「ラジニ」と表示させてみたりしたんです。売場は自分の裁量で比較的自由にレイアウトすることができます。このときは「売店に来る人のちょっとした話の種にしてみたい」くらいの気持ちでした。

 

 

 

 

ほとんどの人は特に気にせずに通り過ぎていったのですが、ある日インド人のお客さんがたまたま来て、もう、私の想像を遙かに超えるくらい喜んでいました。この時に「ラジニって、ひょっとしたら単なる俳優ではないのかもしれない…?」と思うようになりました。

 

また、あるときには日本の「公式ラジニファンクラブ」の人がやってきて、店の様子を取材していきました。彼らが「取材した動画をファンクラブのイベントで流すので、ぜひ来てください」と言うので行ってみると、私の売店がものすごい熱量で紹介されており、私自身も強烈に歓迎されています。ここで「インド映画で人とつながった」というような感覚があったんです。

「マサラ上映」を企画する

このように私はファンと交流し、その熱に魅せられていきました。そして、私自身もファンクラブに入り、ラジニ様を応援するようになったのです。

 

2000年頃、日本でのインド映画は不遇の時代を迎えていました。とあるインド映画が権利関係でトラブルを起こしてしまい、日本の映画館ではインド映画を上映することが敬遠されるようになってたんです。

 

その時にファンクラブのメンバーで企画したのが「マサラ上映」です。現地のインド映画は、劇場の中で声を出して応援したり、歌に合わせて踊ったり、紙吹雪が舞ったりするらしい…と耳にしました。当時は現地に行ったことはないので微かな情報です。

 

そんな現地スタイルに「マサラ上映」と名付けて、集客に悩んでいる映画館に話を持ちかけてみました(ちなみに、かつて大阪にあった「フェスティバルゲート」という施設の中の映画館です)。

 

シャイな日本人に現地スタイルの上映方法がマッチするのかな…と、不安もあったのですが、結果は超満員に。こうした実績を積み上げることにより、ほかの映画館でも、マサラ上映ではなくても、インド映画を次第に上映してくださるようになりました。

 

ちなみに、こうした活動をしていても、ファンクラブの人達にお金が入るわけではありませんし、映画会社とつながっているわけでもありません。あくまでも「推し活」の一環なのです。

インドで現地のファンたちと交流

現在では、ラジニ様の新作映画が発表されたら、できるだけインドに行って見るようにしています。やはり現地での鑑賞は格別な体験です。

 

インドに行ったときは、インドの人々とも交流をすることになります。私が日本でラジニ様のファン活動をしていることが、現地でも知られているんです。

 

新作映画が発表されると、私が彼らの家を訪問するという前提で話が進んでいることもよくあります。「そういえば、お前はおれの家にいつ来るんだっけ?」という感じです。こうなると行かないとは言えません(笑)。家に訪問して、食事をごちそうになったりもします。

 

さて、なぜこれほどまでに私を歓迎してくださるのか。そもそも、インドは大きく「北インド」と「南インド」で文化が分かれます。その中でも南インドは州ごとのアイデンティティが強いのです。

 

そしてラジニ様の映画は、南インドのタミルナードゥ州で主に使われている「タミル語」を使った、「タミル映画」と呼ばれています。つまり、インドでは非常に地域性の高い映画と捉えられているのです(もっとも、近年ではそれが世界規模でウケているという流れができつつあるのですが)。

 

このような映画を日本人が現地に来て見ているというのは、タミルの方々からすると信じられないくらいすごいことに映るようです。

 

そんなわけで、公開初日の映画を見に行くと、たくさんのメディア(規模はそれぞれですが100くらいいます)に取り囲まれることになります。ちゃんと相手をしていると膨大な時間をとられてしまうので、毎回なんとか逃げるようにしています。ちなみに、メディアのインタビューに捕まって、映画を見逃したこともありました…。

ラジニ様誕生祭

コロナ禍前の2019年に実施した誕生祭の様子

 

ラジニ様の誕生日には、何度か「誕生祭」のイベントを行いました。誕生祭の様子を現地のラジニファンクラブやメディアに送って、「日本にも熱心なラジニファンがいる!」と知ってもらうんです。

 

そんな活動をしていたのですが、2020・2021年のラジニ誕生祭は、これまでとはちょっと違う方式になりました。まず、新型コロナウイルス感染症の流行で、人が集まることが難しくなってしまいました。

 

そこで私が考えたのは「ホテルを借り切り、参加者のそれぞれが個室に入る。ルームサービスとしてインド料理を大量に提供する」というもの。

 

これは単純な新型コロナウイルスの感染症対策というだけではありません。インドでは長いテーブルを使って宴会を行う形式があります。ここでは、ホテルの廊下を長テーブルに、個室をそれぞれの席に見立てているんです。

 

インド料理は、近隣にあるいくつかの南インド料理店から仕入れます。新型コロナウイルスの流行で、飲食店も打撃を受けていました。少しでも売上に貢献できれば…という思いもありますし、参加者には「いろいろな店のインド料理を食べることができる」というメリットもあります。

推し活で人生が変わっていった

思えば、このようにインド映画やラジニ様にハマる前は、特に趣味もありませんでした。ラジニ様のお陰で「何かにハマる」ということを実感できたんです。

 

ラジニ様の推し活をしていることで、数万人ほどのインド人と知り合って交流ができています。これも普通の生活をしているとなかなかない経験だと思います。また、妻もラジニ様の応援活動を通して知りあっています。

 

推し活によって人生が大きく変わったと思っています。もしもいまでもラジニ様を知らないままだったと思うと…ちょっとゾッとしますね。

 

僕のような活動は、ちょっと昔だったら「オタク」なんて言われて、バカにされていたと思うんです。「インド映画を見るためにインドに行く」というようなことは「お金と時間の無駄」なんて言われていたでしょう。私自身も始めた頃は「こんなことしていていいんだろうか」とちょっと後ろめたい気持ちがありました。

 

でも最近は、自分の好きなことを突き詰めるというのは悪いことじゃない、という流れがありますよね。お金を使うことに対しても、かなり抵抗がやわらいでいます。

 

そして、お金を使って自分が楽しむだけでなくて、「他の人の喜びになるようにしたい」と思うようになってきました。現地のファンは推し活をすることで社会奉仕活動をしています。あんなふうにできたらと思うのです。

 

例えば、以前はイベントを行うときは、できるだけ安い参加料金で実行できるように計画をしていました。でも今では料金を2割くらい上乗せしています。それで、余ったお金は困っている人に寄付するんです。

 

料金が上がったからといって、参加者から不満が出るわけでもないし、参加人数が減るということもありません。みんなで楽しくイベントをして、寄付した人には喜んでもらえます。喜びが2倍になりますよね?

 

こんなことを言うと、ちょっといいカッコしているように聞こえるかもしれません。でもインドでは「自分の楽しいときには、他人にも楽しんでもらいたい」というのはごく普通の考え方なんです。


こんな消費の仕方も、楽しいものですよ。

編集:はてな編集部

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