ドローン(無人航空機)の免許制度。国家資格と民間資格の違いや費用について解説
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年6月14日 10時0分
2022年12月にドローンの免許制度が始まりました。ドローンはこれからの時代、社会的な課題を解決する手段として期待されており、農業や建築、運送などさまざまな分野で活用が進むと考えられています。免許が国家資格となったため、今後は仕事でドローンを使う場面が増えるかもしれません。ここでは、新たな国家資格を中心に、ドローンの免許について解説していきます。
ドローン(無人航空機)とは
ドローン(無人航空機)は、無人航空機の一種です。無人航空機にはドローンのほか、ラジコン(無線操縦機)や農薬の散布に使用するヘリコプターなども含まれます。ドローンのことは、マルチコプターと呼ぶこともあります。マルチコプターというのは、ローターが3つ以上あるヘリコプターのことです。
2015年に航空法が改正され、無人航空機を飛行させる際のルールが新たに導入されました。航空法の規制対象となる無人航空機の定義についても確認しておきましょう。
まず「飛行機や滑空機、飛行船のうち構造上人が乗ることができないもの」とあり、人が乗れない点がポイントとなっています。航空法では、人が乗るものは「航空機」と呼んでいます。旅客機や通常のヘリコプター、飛行船、空飛ぶクルマなどを意味する用語です。
また「遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの」であることも、無人航空機の条件です。ラジコン(無線操縦装置)のように機体と離れた場所からコントロールしたり、センサーやプログラムなど機体に備わった機能によって自動で飛んだりするタイプがあります。そのほか、重さも法規制の対象となるかの条件となっています。2022年からは、重量100g以上の機体が「無人航空機」として扱われるようになりました。小さく軽いタイプも法規制の対象です。
ドローン(無人航空機)は、マルチコプターの登場により、さまざまな用途での利用が進んでいます。高い位置からの映像を撮影でき、趣味での撮影のほか、測量などにも応用されています。多数の光を発するドローンを制御することによる、大規模なショーも見かけるようになりました。物を運ぶのが難しい場所へ、小口の荷物を配送する役割も期待されています。
このように、将来的に多くの役割を果たすことが期待されていますが、これまで規制によりできなかった飛行形態もありました。活用の場を広げるために始まったのが、新たな資格を含む新しい制度の運用です。新たに可能となる飛行形態には、事故などのリスクが高いものも含まれるため、機体や操縦者に、より高度な性能や技術が求められるのです。さまざまな社会的な課題もあり、無人航空機のさらなる利用の必要性が高まったといえるでしょう。
ドローンの免許制度とは
ドローンを含む無人航空機については、2022年12月5日から新制度がスタートしています。そこには資格制度も含まれていて、「無人航空機操縦者技能証明書」と呼ばれる証明書の取得が可能となりました。
新制度では技能証明のほか、機体認証や運航ルールも整備されます。これにより、無人航空機のレベル4飛行が可能となるのです。ドローンの免許を含む新たな制度が整備されることで、ドローンの活用範囲が広がることになります。
新たなドローンの資格制度として導入される、無人航空機操縦者技能証明には、一等無人航空機操縦士と、二等無人航空機操縦士という2つの種類があります。ドローンを含む無人航空機については、飛行のリスクに応じて、カテゴリーI〜IIIに分類されています。リスクが高いカテゴリーIIIに分類されるレベル4飛行が可能なのは、一等無人航空機操縦士です。なおリスクが低いカテゴリーIについては、航空法上の飛行許可・承認手続きが不要な飛行となっています。
ドローンの飛行形態の分類は以下のとおりです。
- カテゴリーI飛行:特定飛行(航空法において規制の対象となる空域における飛行又は規制の対象となる方法による飛行)に該当しないもの
- カテゴリーⅡ飛行:特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者の立入りを管理する措置を講じたうえで行うもの
- カテゴリーIII飛行:特定飛行のうち立入管理措置を講じないで行うもの
ドローンの飛行レベルについても確認しておきましょう。
- レベル1(目視内+操縦飛行):ドローンが見える場所から人が操縦
- レベル2(目視内+自律飛行):肉眼で見える範囲内での自動運転
- レベル3(補助者なし目視外+無人地帯):住民や歩行者などがいない場所を肉眼で見えなくなるほど遠くまで飛行させることができる
- レベル4(補助者なし目視外+有人地帯):人が多い市街地などを肉眼で見えなくなる範囲にまで飛行させることができる
飛行の方法には、機体が見える範囲で行うか、自分で操縦するのか自動操縦にするのか、また人がいない所で飛ばすのか人がいる所で飛ばすのかといった違いがあるというわけです。それぞれ飛行の難しさや事故のリスクなどに違いがあります。
レベル4は今回の制度整備で新たに可能になった飛行レベルです。リスクが高い飛行を行うためには、やはり高度な知識や技術が必要と考えられます。より高度なドローン飛行が求められるのに応じて、新たな免許制度が登場したということです。
国家資格と民間資格の特徴と違い
ドローン(無人航空機)操縦に関しては、2022年12月に「無人航空機操縦者技能証明」という国家資格制度がスタートしました。その一方で、以前から、いくつかの民間資格も存在しています。主なものを2つ挙げておきましょう。1つはJUIDA(ジュイダ、一般社団法人日本UAS産業振興協議会)の資格、もう1つはDPA(ディーパ、一般社団法人ドローン操縦士協会)が認定する資格です。JUIDAは2014年、DPAは2016年に設立されました。
国家資格が登場したことにより、これらの民間資格が廃止されるわけではありません。また、既存の民間資格を持っていても、それらが自動的に国家資格に書き換えられることはありません。それぞれ別々の資格として併存しています。
ただしカテゴリーIIIのレベル4飛行ができるのは、国家資格の一等無人航空機操縦士だけです。よりリスクが高い飛行を可能とするのが、国家資格というわけです。
民間資格と国家資格の関係ですが、既存の民間資格を持っていると、新しい国家資格を取得する際に有利になることがあります。国家資格の取得には、登録講習機関での受講が必要です。そこでは「初学者」と「経験者」の区別があり、民間資格を持っていて自信がある人であれば、初学者よりも講習時間数の少ない、経験者向けのコースを受講することができます。ただし、これは自己申告のため、民間資格を持っていても自信がないという場合は、初学者向けのコースを受講することも可能です。なお、講習修了審査は一律同じ内容となっています。
ドローンにカテゴリーIIの飛行をさせる場合も、民間資格を持っていると手続きが簡単になることがあります。飛行前に国の許可・承認を取る際、提出書類の一部を省略できるからです。
国家資格と民間資格、両方のライセンス制度は共存するかたちで運用が進められます。これまでに取得したものが無駄になるということはありません。むしろすでに取得したライセンスが、新たなライセンスの取得に役立つような仕組みとなっているのがわかります。
それぞれのライセンスにメリットがあることから、両方のライセンスを取得するというケースも増えるかもしれません。逆に、特に業務を拡張するのでなければ、新たなライセンスの取得は必要ないという場合も出てくるでしょう。
国家資格取得までの流れ
無人航空機操縦者技能証明書を取得する手順は、次のようになっています。(2023年5月時点)
(1)本人確認の手続き
まず必要なのが、オンラインで行われる本人確認の手続きです。利用するのは「ドローン情報基盤システム2.0」で、DIPS2.0と呼ばれています。手続きが完了すると「技能証明申請者番号」という番号が発行され、登録講習機関での講習受付や指定試験機関での試験受付で必要となります。
(2)登録講習機関での受講
登録講習機関での受講が基本的に必要です。この講習を修了しておくと、指定試験機関で行われる実地試験が免除されます。講習を受けずに受験することもできますが、その場合は指定試験機関の実地試験を受けなければなりません。
(3)指定試験機関で受験
指定試験機関に受験申請を行って、試験を受けます。受けるのは、学科試験・実地試験・身体検査の3種類です。なお実地試験は、学科試験に合格しなければ受験できません。登録講習機関で受講済みであれば、実地試験は免除されます。学科試験の概要を見ると、一等学科試験では三肢択一式問題を70問、75分で解くことになっています。二等学科試験では三肢択一式が50問で、時間は30分です。
(4)技能証明書の交付を申請
試験に合格したら、次に行うのは技能証明書の交付申請手続きです。申請先は国土交通省です。こちらの手続きもオンラインのDIPS2.0にて行います。その際手数料が必要となり、一等無人航空機操縦士の場合には登録免許税(3,000円)も納付しなければなりません。技能証明書は、郵送で届きます。
無人航空機に関する手続きは、DIPS2.0と呼ばれるWebサイト上でできるようになっています。受験の時だけでなく、飛行の許可申請にも使われているWebサイトです。
なお、実地試験は自動車の運転免許試験と似たシステムと説明されることがあります。直接実地試験を受けることもできますが、学校で講習を受けていればそれが免除されるという点が似ているからです。実地試験での一発合格を狙うか、料金を支払って登録講習機関での受講をするかという選択が可能です。
国家資格取得にかかる費用
新たに登場したドローン(無人航空機)の国家資格、無人航空機操縦士の資格を取るための費用を見ていきましょう。(2023年5月時点)
まずは技能証明試験にかかる手数料です。学科試験の手数料は、一等学科試験で9,900円、二等学科試験で8,800円となっています。実地試験は、機体の種類ごとに手数料が異なり、およそ2万円前後がかかります。例えば、回転翼(マルチローター)を使った、一等の基本(昼間・目視内・25kg未満)という種別の実地試験での手数料は、2万2,200円です。
試験では身体検査も受けます。自動車運転免許証などを用いる書類での受験では5,200円、会場での受験では1万9,900円の手数料がかかることになっています。
合格後に技能証明書を受け取るには、交付手数料が必要です。新規申請の場合は3,000円で、そのほか一等無人航空機操縦士については、登録免許税として別に3,000円を納付しなければなりません。
また受験に向けては、必要に応じて「登録講習機関」での講習を受講します。これにより実地試験が免除されます。受講しなくても直接受験できますが、その場合は実地試験を受けなければなりません。受講料は登録講習機関によって異なるので、一例を挙げておきましょう。受講者は初学者と経験者に分類されます。二等無人航空機操縦士を受験するための講習費用は、初学者で40万円~50万円、経験者で15万円~25万円程です。
これらの数字から計算してみると、二等無人航空機操縦士の資格取得では、経験の有無などにより幅がありますが、費用総額は20万円~55万円が目安になります。個人の趣味として使うのであれば高く感じるかもしれませんが、会社の業務など仕事で使うのであれば、新たな業務を始めるために必要な投資となるでしょう。新たなライセンスの登場で、無人航空機を使った仕事への需要が増える可能性も考えられます。どういった方法で取得を目指すかも、考えどころといえるでしょう。
資格があれば何ができる?
新たな国家資格の登場で、レベル4飛行が可能になりました。これは一等無人航空機操縦士の資格を得ることで可能となります。レベル4飛行では、市街地など人の多い場所の上空でも、操縦者から機体が見えない状態でドローンを飛ばすことができます。
具体的なイメージとしては、例えばイベントやスタジアムを上空から撮影したり、警備したりといった用途にドローンを利用できるようになります。橋や工場、ビルといった建築関係でも、人が多い場所でのドローン利用が広がるでしょう。
荷物を運ぶ運送業においても、離島や山間部だけでなく、市街地・住宅地といった人の上を通るルートでもドローンが使えるようになります。有人地帯でのドローン利用が増えれば、この先、上空に見かける機会が増えるかもしれません。働くドローンが見られるというわけです。
人が多い場所でドローンを飛ばせば事故のリスクも高くなります。自動車の運転と同じで、無人航空機の利用にはより大きな責任がともなうものになったといえるでしょう。ただライセンスを取得するというだけでなく、そうしたリスクへの気配りも重要になってくると思われます。人の多い場所で無人航空機が多く飛ぶことには、危険を感じるという人が増えるかもしれません。安全な運航を続けることで、それが当たり前の社会になっていくことになるでしょう。
国家資格が登場して、活用範囲が広がると期待される無人航空機。仕事の道具として関心を寄せている方も多いでしょう。小型のドローンを実際に購入して飛ばしてみたり、無人航空機の資格取得を目指して勉強してみたり、より具体的に学んでみるのも良いかもしれません。新たなスキルの取得につながる可能性もあります。
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※この記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しております。
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