こども家庭庁とは?創設された目的や理由、国民の生活はどう変わるのか解説
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年6月19日 10時0分
こども家庭庁とは、子供に関する行政事務の一元管理を目指して2023年4月1日に設置された組織です。現在の日本において大きな社会的課題となっているのが、少子化問題や子供の貧困など、子供に関するもの。今後、こうした課題への取り組みが、一層強化されます。子供は国だけでなく、家計やライフプランなど、個人のお金や人生設計にも大きな影響を与えます。ここでは、こども家庭庁が創設された背景にある課題や、私たちの生活への影響などを見ていきましょう。
こども家庭庁とは?
こども家庭庁創設のきっかけ
新たに設置されることとなった「こども家庭庁」。そのきっかけのひとつが、子供に関するさまざまなデータの悪化です。例えば「小中学校における不登校者数」は、2015年には12万5,991人だったのですが、2020年には19万6,127人へ増加しています。適切な学校教育を受けられるよう、支援を必要とする子供が増えている状況です。
生まれる子供の数が減少していく、少子化への問題意識も高まっています。出生数を見ると、2016年に97万7,242人だったのが、2021年には81万1,622人まで減りました。こうしたデータを見ると、子供が生まれ育つ環境への、より積極的な取り組みが必要だと思われます。
このような課題に取り組むべく、2021年6月に閣議決定されたのが「経済財政運営と改革の基本方針2021」。子供政策に関する行政組織を創設する方針が示されたのです。
こども家庭庁の目的
こども家庭庁創設の目的は、子供に関する行政事務を一元化することです。これまで子供に関する行政は、児童虐待防止対策を厚生労働省が、少子化対策および子ども・子育て支援は内閣府の子ども・子育て本部が担うなど、多くの行政機関に分散している状態でした。そこで事務を移管して、政策の調整権限をこども家庭庁に一本化し、縦割り行政と呼ばれる状態を改善することを目的としています。
こども家庭庁はいつ始動?
こども家庭庁は2023年4月1日、内閣府の外局として430人規模の体制で始動しました。もともと子供関連の行政を担っていた厚生労働省や内閣府などから移管される約210人に加え、さらに人員を増やしています。そこには地方自治体や民間から登用される人材も含まれているようです。少子化から子供の貧困、児童虐待の防止までさまざまな課題への対応が必要なため、より多くのリソースを振り向ける姿勢がうかがえます。
こども家庭庁が日本で果たす役割
こども家庭庁には、子供政策担当の内閣府特命担当大臣が置かれます。大臣には各省庁に対し、子供政策の改善を求めることができる権利、「勧告権」が与えられました。
また内閣府や厚生労働省から子供に関する行政が移管されるこども家庭庁は、子供政策の「司令塔」としての役割を担います。これまでの縦割り行政下では、組織のすき間からこぼれ落ちるようにして、支援が届かないケースがあると指摘されていました。こども家庭庁に一本化することで、よりきめ細かくカバーする役割も期待されます。
こども家庭庁の関連法律
こども家庭庁の設置に関連する法律を3つご紹介しておきましょう。いずれも2022年6月15日に成立しています。
まずは「こども基本法」。これは、日本国憲法および児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子供に関する施策を総合的に推進することを目的とする法律です。
2つ目の「こども家庭庁設置法」は、こども基本法附則第10条の改正を反映した法律。こども家庭庁の具体的な事務や組織について定めています。
3つ目は「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」。こちらは、こども基本法附則第11条の改正を反映した法律です。こども家庭庁を新たに設置することで、児童福祉法や内閣府設置法など、関連する法律を整備する必要が出てきます。学校に関するもの、医療に関するものなど範囲は広く、新たな行政機関の設置による影響の大きさがうかがえます。
このように、さまざまな法律の整備により、こども家庭庁が始動するというわけです。
こども家庭庁が創設された理由
加速度的に進んでいる少子高齢化
子供に関連した社会的な課題といえば、まず思いつくのが「少子化」の問題。日本全体の人口構成を見ると、少子高齢化が進んでいるのがわかります。厚生労働省のWebサイトでは、「我が国の人口について」として、さまざまなグラフが紹介されています。その中の「人口ピラミッド」に注目してみましょう。
1990年には14歳以下の人口が、2,254万人と全体の18%を占めていました。それが2020年には、1,503万人と全体の12%まで減少しています。将来の予測まで見てみると、2040年には14歳以下の人口が1,142万人まで減り、全体における割合は10%まで低下するとされています。一方、75歳以上の人口は1990年には599万人で、全体の5%を占めていました。それが2040年には、2,227万人まで増え、全体の20%を占めると予測されています。
こうした人口の問題を根本的に解決するには、まず子供の環境を整備する政策が必要という認識のもと、こども家庭庁創設が進められました。
不景気による貧困
1990年頃からの日本経済の停滞を「失われた30年」と呼ぶことがあります。低迷する経済が子供の生活にも影響を及ぼし、「子供の貧困」という問題を引き起こしているのです。厚生労働省が公表した「2019年国民生活基礎調査」によると、2018年時点での「子供の貧困率」は13.5%で、子供の7人に1人が貧困の状態にあるということになります。
子供の貧困率とは、所得中央値の半分を貧困線としたとき、これに満たない所得の家庭で暮らす18歳未満の割合のことです。2023年には賃金の引き上げに関する話題が増えてきました。そうした状況を、貧困の状態にある子供の生活改善につなげるためにも、子供にフォーカスした施策が期待されます。
増加するいじめ・児童虐待
いじめや児童虐待の増加も、解決しなければならない子供関連問題として注目されています。文部科学省が公表した「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」を見ると、2013年のいじめ認知件数は約19万件でした。それが2019年には約61万件、2020年には一時減少したものの、2021年には約62万件と高い水準になっています。
また、厚生労働省が公表した「令和3年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)」を見ると、全国の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は20万7,659件で過去最多の数字となりました。2009年には4万4,211件だったことから、こちらも増加傾向にあることがわかるでしょう。
このような、いじめや児童虐待の増加にともない、子供が学び、育つ環境の悪化が懸念されています。
親世代にのしかかる子育ての負担
少子化の原因としてよく問題視されるのが、教育費など親の負担が大きいという点。教育にかかる費用は、私立・公立の選択などで変わってきますが、幼稚園から大学までの間におよそ1,400万円から2,000万円といわれています。親世代の中には「子供をもう1人持ちたいけれど、教育費の負担を考えるとなかなか踏み出せない」という意見もあるようです。こうした子供に関するお金の問題を解決することも、政策として求められています。
日本の子供の低すぎる幸福度
日本の子供に関して、幸福度の低さを指摘するレポートがあります。ユニセフ(国連児童基金)・イノチェンティ研究所が2020年に公表した「レポートカード16」の数字を見てみましょう。日本の「子供の幸福度」の総合順位は、38カ国中20位です。低めの順位になっていることが気になりますが、その内容を見ると特徴があることがわかります。
「5~14歳の死亡率」や「5~19歳の過体重/肥満の割合」から見た「身体的健康」では、日本が1位となっています。順位を下げる要因となっているのは、精神的幸福度(37位)。「生活満足度が高い15歳の割合」が低く、「15~19歳の自殺率」は平均より高いことが要因となっています。
またスキル(27位)を見ると、「数学・読解力で基礎的習熟度に達している15歳の割合」は高いのですが、「社会的スキルを身につけている15歳の割合」が低い数字となりました。社会的スキルには、「すぐに友達ができる」ことなどが含まれています。
ここに、子供の幸福度を上げるためのヒントが隠されているのかもしれません。
こども家庭庁が創設されてからの予想される動き
こども家庭庁の基本方針
こども家庭庁の基本方針は6つです。「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」(2021年12月)を見てみましょう。
- (1)こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策立案
- (2)全てのこどもの健やかな成長、Well-beingの向上
- (3)誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援
- (4)こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ目ない包括的な支援
- (5)待ちの支援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に支援が確実に届くようプッシュ型支援、アウトリーチ型支援に転換
- (6)データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案、PDCAサイクル(評価・改善)
企画立案・総合調整部門
こども家庭庁は3つの部門からなります。まず「企画立案・総合調整部門」。子供の意見を聞き、政策の立案を行う部門で、地方自治体や民間団体との協力もここが担当します。
こども家庭庁では、子供や子育てをしている人たちから意見を聞く姿勢を打ち出しています。要望や不満などがある場合、それが反映される機会が増えてくるかもしれません。
成育部門
こちらは子供の育ちをサポートする部門。妊娠・出産する母親と小さな子供の健康支援、小学校入学前の保育所や幼稚園での育ち、小中高生の居場所づくり、性的被害などから子供を守るなど、さまざまな役割があります。
切れ目のない支援や、誰一人取り残されることのない支援、といったことが基本方針として掲げられています。どのような年齢・状況でも、何らかの支援が用意されている可能性を期待できるようになるでしょう。
支援部門
とくに支援が必要な子供を担当する部門です。虐待防止やヤングケアラーの支援、血のつながった家族以外と暮らす子供の支援、ひとり親家庭や子供の貧困への支援、障害のある子供への支援などを行います。
基本方針では、プッシュ型支援・アウトリーチ型支援の推進が挙げられています。SNSを活用したプッシュ型の情報発信や、民間団体などが支援を必要としている場所へ出向くアウトリーチ型支援(訪問支援)といった形での活動が増えそうです。なかなかSOSを発信し助けを求めることが難しい子供や家族へも、支援が届きやすくなる可能性があります。
こども家庭庁が創設されて国民の生活はどう変わる?
こども家庭庁では、「こどもまんなか」や「こどもまんなか社会」といったキャッチフレーズを使っています。これまでは大人中心の社会でしたが、これからは子供を社会の中心に据えた取り組み・政策を実施していくということです。これにともない、私たち国民の生活や意識も、より子供を中心としたものにシフトしていくのかもしれません。子供に関する課題解決が、社会での優先順位を高めていくことになるでしょう。
日本の子供の未来を守るこども家庭庁の今後の動きに期待!
子供に関する問題の解決は、人口や経済など日本の未来に関わる課題となっています。データを見ると、現在を生きる子供の環境には改善すべき点が多いようです。
今回設置されたこども家庭庁は、子供の意見を聞いたり、アウトリーチ型支援を進めたりしながら、積極的な姿勢で責任を果たしていくものと期待されています。子供に関する問題は、これまでなかなか解決していないように感じられる部分もありました。新たに設置されるこども家庭庁には、より実効性のある政策が期待されます。
子供とお金に関しては、教育費の負担が大きいなどの課題がありますが、その一方で、家計における子供関連の支出は、親や祖父母、あるいは周囲の大人にとって、ちょっとした楽しみがある部分といえるかもしれません。服やおもちゃ、文房具など、子供のためのショッピングには、ある程度のお金をかけたいと考える方も多いでしょう。
楽天市場では、キッズ・ベビー・マタニティ・おもちゃなど子供関連のショップも充実。楽天カードと組み合わせて使うとよりお得に、子供たちへのプレゼントを手に入れることができるかもしれません。
※この記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しております。
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