インバウンド需要とは|これまでの推移や各業界の動向をわかりやすく解説
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年8月8日 10時0分
ポストコロナの時代、日本の経済において注目されているのが、インバウンド需要です。新型コロナウイルスの流行が落ちつきを見せる中、海外からの観光客が戻ってきており、日本経済に良い影響を与えると考えられています。さらに、円安もインバウンド需要を後押しする要因となっています。本格的な回復に向けて、国や地方自治体、各企業では、インバウンド需要をどのように盛り上げているのでしょうか。次の投資先を見つける1つの材料として、インバウンドの動向と関連業界の取り組みもあわせて確認していきましょう。
インバウンド需要とは?
インバウンド需要とは、海外から日本を訪れた観光客による、さまざまなモノやサービスへの需要のことで、インバウンド消費と呼ばれることもあります。インバウンドは、ここでは訪日外国人客を意味します。日本を訪れた観光客は、さまざまなモノやサービスを日本で購入・利用するので、外国人観光客数の増加は、日本の経済に良い影響をもたらすことになるでしょう。
外国人観光客によるインバウンド需要の範囲は、幅広いものとなっています。日本に滞在する観光客は、寝泊まりするためのホテル、移動するための飛行機や鉄道、バス、タクシーなどの交通機関、旅行の楽しみのひとつとなる食事、ショッピングなどがインバウンド需要の大部分となります。ショッピングといえば、「爆買い」という言葉は、インバウンド需要の代名詞ともなり、ニュースで聞いたことがある方も多いでしょう。
このように、さまざまな業界で収益を左右する存在になっているインバウンド需要。どのようにその消費を取り込むかが各業界での課題となっています。近年、新型コロナウイルスの流行や世界的な物価上昇など、日本や世界を取り巻く環境は変化しています。これらは外国人観光客の数にも影響し、インバウンド需要を左右する要因となっています。
今後のインバウンドの動向は、どうなっていくのでしょうか。
インバウンドの動向
急激に拡大してきたインバウンド需要
インバウンドの動向について、JNTO(日本政府観光局)の「日本の観光統計データ」で見てみましょう。まずは訪日外客数です。政府が「観光立国」を宣言し、訪日外客数の増加を目指す「ビジット・ジャパン・キャンペーン」をスタートさせたのは2003年のことです。その頃の訪日外客数は、約520万人でした。その後2010年には約860万人にまで増えています。しかし、2011年には、東日本大震災の影響で約620万人まで減少してしまいます。
そこから、大きく上昇を始め2019年には約3,200万人と、これまでの最高人数を記録します。要因のひとつとなったのが、アベノミクスです。それまでの歴史的な円高ドル安が解消され、円安方向に為替が動きました。外国人観光客から見ると、円安は日本へ旅行する際のコストを下げる要因となり、大きくインバウンドを増やすこととなったのです。LCC(格安航空会社)の路線が拡大したことも、インバウンドを増やす後押しとなりました。
次に、1人当たりの旅行支出を見ていきましょう。2019年の数字を見ると、外国人旅行客が日本滞在中に支出した金額は、1人当たり15万8,531円となっています。これは、年間約4兆8,000億円にのぼります。急激に拡大してきたインバウンド需要は、関連する業界にとって見逃すことができない規模となっています。
インバウンド需要が見込める業界とは
外国人旅行客は、さまざまな形で消費を行っています。日本経済の活性化の一助となるインバウンド需要を取り込めるのは、どんな業界なのか見ていきましょう。
- 宿泊業界:ホテル、旅館、民泊など
- 小売業界:百貨店、家電量販店、ドラッグストア、コンビニなど
- メーカー:家電メーカー、化粧品メーカーなど
- 飲食業界:飲食店、居酒屋など
- 観光業界:テーマパーク、動物園など
- 交通業界:航空、鉄道、バス、タクシーなど
外国人旅行客が増えることですぐに恩恵を受けそうな産業は、まずは宿泊業界かもしれません。実際に、急激な観光客の増加にホテルの供給数が追いつかず、民泊が大きな注目を集めています。また、移動手段として必要な交通業界も、日本文化の多様な食にも注目が集まっており、恩恵を受ける一方で観光客を受け入れるための対策が急務と言われています。
インバウンド需要へ対応するためのポイント
東南アジアからの旅行者対策がカギ
インバウンド需要は、海外からの旅行客が行う消費。ただ海外といっても、国はさまざま。どんな国からの訪日外客数が多いか、データをチェックしてみましょう。
JNTO(日本政府観光局)が公表する2023年の数字を見ると、韓国からの訪日外客数が約160万人でもっとも多くなっています。割合にすると全体の約3割を占めています。韓国や中国を含む東アジアが、全体の約6割を占めている状況です。こうした旅行客への対策がインバウンド需要取り込みのポイントとなるでしょう。
時間帯を意識したインバウンド戦略
インバウンド戦略を考えるうえでは、観光客が活動する時間帯に注目することも必要です。日本の観光で弱いといわれているのが、「ナイトタイムエコノミー」。18時から翌日朝6時までの夜間帯の観光のことで、NTEと略すこともあります。ニューヨークやベルリン、ロンドンなど先進国の主要都市では地下鉄の深夜運行があるのに対し、日本では終電が都心でも午前1時ごろであることなどもあり、夜間における飲食や娯楽への支出が海外における観光に比べて弱いとされているのです。インバウンド需要によって各業界の収入をさらに伸ばすのであれば、この時間帯を意識した戦略が有効ということになるでしょう。
ナイトタイムエコノミーとして海外で人気となっているのは、例えば20時以降に開演するようなエンターテイメントショーやライブです。有名な美術館や博物館の中には夜間に利用できるものがあり、人気を集めています。また、ロボットやダンサーによるショーが開催されるレストランでは、夜遅くまで観光客が食事などを楽しみます。こうしたナイトタイムの活動を好む観光客は、現地の人たちとの交流に積極的で、旅行先での消費が贅沢になる傾向があるようです。
スムーズな支払いを意識したインバウンド戦略
海外からの旅行客にどうやってお金を使ってもらうかというインバウンド戦略に、各業界が取り組んでいます。例えばキャッシュレス決済が進む中、支払い方法を便利にするというのもそのひとつ。中国では「銀聯カード」のデビットカードを保有する人が多いので、関係するお店では使えるようになってきています。またスマホを使った「Alipay」など、観光客が使い慣れた決済方法で支払いができるような対応が進んでいます。
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外国人観光客向けのメディアを活用したインバウンド戦略
百貨店やドラッグストアなどの小売店では、海外からの観光客に向けた販売促進の戦略を行っています。そのひとつがメディアの活用です。例えば、台湾・香港向けプロモーションとして利用されているのが「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」という日本情報サイトです。ここでの記事でお店を紹介したり、クーポンを掲載したりすると、インバウンドによる売り上げを増やす効果を得られるというわけです。海外での認知度を高めるには、多言語での情報発信も必要となるでしょう。
快適な移動を意識したインバウンド戦略 海外を訪れて難しさを感じることのひとつ
海外を訪れて難しさを感じることのひとつに、交通機関の利用があげられます。移動を便利にすると、旅行客はさまざまな観光地を訪れたり、目的とするお店へ行ったりするのが簡単になるでしょう。JR東日本では、訪日外国人旅行者向けに、新幹線と在来線が5日間乗り降りし放題になる鉄道パス「JR EAST PASS」を販売しています。都度切符を購入する必要もなく、指定席の予約も券売機でできるので、日本での慣れない移動も快適になりそうです。
インバウンド需要の裾野拡大のために求められること
「コト消費」の拡大
百貨店などでお土産を購入したりする「モノ消費」だけでなく、体験にお金を使う「コト消費」が拡大すると、消費の幅がひろがるのではないでしょうか。
最近、純粋体験型のコト消費として、古民家を活用した宿泊体験や、使われていない田畑を利用した農業体験などの取り組みが進められています。外国人旅行者の間では、「古き良き日本を堪能できる」と話題となっているようです。また、観光しつつ、外国に行き治療を受ける「医療ツーリズム」もニーズが高まっています。これは、各国の医療体制が異なることから、自国では受けられない治療を受診できたり、レベルの高い水準で治療を受けられたりするなど、外国で治療を受けたほうがメリットが大きいと判断した方が活用しています。
有名観光地以外への訪日外国人客の呼び込み
海外から日本へ観光に訪れるという場合、有名観光地に観光客が偏ってしまう傾向があります。しかし、ガイドブックに載っているような有名観光地以外にも、魅力的な場所がまだまだあります。できるだけ訪日外国人の目につく場所で情報提供し、「行ってみたい」と思ってもらえる工夫をしなくてはなりません。また、さまざまな地域に足を運んでもらうために、交通機関やインフラの整備は必須となります。地方では、Wi-Fiや多言語対応、駐車場などインフラの整備が追いついていないところも多くありますので、1つずつ課題を解決していく必要があります。また、観光客による騒音やゴミ問題などが生じる可能性もありますので、地域住民の理解を広げながら、活動していくべきでしょう。
今後も海外から日本を訪れる観光客が増え続けると、インバウンド需要のすそ野拡大に期待がかかります。今回見てきたようにインバウンド需要で恩恵を受ける業界は幅広く存在します。各企業でインバウンド戦略を日々練っていますので、今後も目が離せません。インバウンド需要の未来に可能性を感じた方は、関連銘柄を検討してみるのも良いかもしれません。
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※この記事は2023年7月時点の情報をもとに作成しております。
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