扶養控除の条件とは?子供や配偶者、高齢者がいる場合の受け取り方と注意点
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年9月5日 10時0分
年末調整や確定申告の時期が近づくにつれて、「扶養控除」という言葉を耳にすることも多いでしょう。扶養控除は親族を扶養しているときに受けられる控除ですが、さまざまな要件があるので、扶養者がいるからといって誰もが受けられるわけではありません。ここでは、扶養控除を受けるための条件や、子供や配偶者、高齢者がいる場合の受け取り方と注意点などについて解説します。
扶養控除とは
扶養控除とは、養っている子供や親、親族がいる場合に受けることができる所得控除のひとつです。税金を計算する際に所定の金額を課税所得から差し引くことができるので、適用されれば納める税金が少なくなります。家族を養っている人は、そうでない人に比べて生活費などの経済的負担が大きくなるため、税金の負担を軽くすることが扶養控除の目的です。
なお、養われる親族といえば、一般的に配偶者や子供、両親などが考えられますが、配偶者は扶養控除の対象となりません。配偶者は扶養控除の対象とならない代わりに、配偶者控除や配偶者特別控除という扶養控除と同じような控除の対象となります。
扶養控除の控除額
扶養控除の金額は、対象となる親族の年齢や同居の有無等によって異なります。区分ごとの扶養控除額を以下にまとめました。
扶養親族区分と控除額
扶養控除の条件とは
扶養控除の対象となる親族の要件は、以下の4つです。すべての要件を満たさないと控除が受けられないので、家族などを養っている場合は当てはまるかどうかをしっかり確認しましょう。
(1)扶養控除の対象者について
扶養控除の対象となるのは、配偶者以外の親族で、「6親等内の血族および3親等内の姻族」です。血族は納税者と血縁関係にある人を指し、姻族は配偶者の血縁関係にある人を指します。親等とは親族間の近さや遠さを表すもので、本人に一番近い1親等となるのは子供と両親、2親等となるのは兄弟姉妹や祖父母、孫です。
6親等内の血族と3親等内の姻族が対象なので、伯父伯母・叔父叔母や甥姪だけでなく、血族の場合は従姪孫(じゅうてっそん/いとこの孫)など、かなり遠いと感じる親族も当てはまることになります。
(2)扶養控除対象者の生計について
扶養控除を受けるには、対象となる親族が納税者と生計を一にしている必要があります。「生計を一にしている」とは、納税者の収入で生活をしている状態のことです。同居をして生活費を負担してもらっている場合はもちろんですが、一人暮らしをしている子供や離れて暮らす親など、別居していても納税者からの仕送りなどによって生活費がまかなわれている場合は、生計を一にしていることになります。
また、親族が病気やケガなどで病院に入院している場合や、老人ホーム等に入所している場合でも、療養費や施設利用料が納税者によって支払われているのであれば、生計を一にしていることになります。
(3)扶養控除対象者の所得について
扶養控除の対象となる親族が働いていたり、年金を受け取っていたりして収入がある場合は、その親族の年間の合計所得金額が48万円以下でなければなりません。
48万円以下という金額はかなり少なく感じるかもしれませんが、ここでいう「所得」は収入とは異なり、収入金額から必要経費や控除を差し引いたものです。給与収入の場合は、必要経費の代わりに収入金額に応じた給与所得控除があり、その最低金額は55万円になります。パートやアルバイトなどによる収入がある場合、年間の合計所得金額が48万円以下となるためには、収入が103万円以下でなければなりません。
また、年金を受給している場合も、受け取る金額に応じた公的年金等控除があります。65歳以上で所得が年金のみ、または、年金以外の所得が年間1,000万円以下の場合の公的年金等控除の最低金額は110万円なので、年金収入を含む合計所得金額が158万円以下であることが扶養控除の対象となる条件になります。
(4)扶養控除対象者の所得(青色申告、白色申告)について
青色申告者の事業専従者とは、個人事業主などで青色申告者となっている納税者の事業を手伝っている親族のこと。青色申告者は手伝ってもらった対価として給与を払うことができますが、この給与収入を得ている場合は扶養控除の対象外です。
なお、青色申告者のほかに白色申告者の事業専従者のケースもありますが、納税者が白色申告者の場合は、給与収入の有無に関係なく、手伝う親族は扶養控除の対象外となります。
配偶者がいる場合の扶養控除
配偶者は扶養控除の対象外となりますが、代わりに配偶者控除と配偶者特別控除の対象となる可能性があります。
配偶者控除と配偶者特別控除の違いは、配偶者がパートなどで働いて収入がある場合、48万円よりも所得金額が多いか少ないかというものです。配偶者控除を受けるには、年間の合計所得金額が48万円以下、配偶者特別控除は年間の合計所得金額が48万円超133万円以下である必要があります。
また、どちらも控除を受ける納税者本人の合計所得額によって控除の金額が異なります。下の表をご確認ください。
さらに、配偶者の年齢が、配偶者控除を受ける年の12月31日現在で70歳以上の場合は、老人控除対象配偶者となり控除される金額が増えます。配偶者特別控除に老人控除対象配偶者の区分はなく、配偶者の合計所得金額ごとに、控除額が細かく設定されているので注意しましょう。
なお、配偶者控除と配偶者特別控除を受ける場合は、所得要件以外にもさまざまな要件があるので確認が必要です。
【配偶者控除】
【配偶者特別控除】
子供がいる場合の扶養控除
子供は扶養控除の対象ですが、すべての子供が対象となるわけではありません。扶養控除を受ける年の12月31日現在に、16歳以上の子供が対象となります。
また、19歳以上23歳未満は特定扶養親族として区別されます。一般の控除対象扶養親族がいる場合の控除額は38万円ですが、特定扶養親族を養う場合の控除額は63万円です。子供がちょうど大学生に該当する年齢で、子供の教育費等の負担を考慮して控除額が大きくなっています。
高齢者がいる場合の扶養控除
69歳までは一般の控除対象扶養親族ですが、70歳以上の高齢者は老人扶養親族という扱いになります。さらに、同居の有無によって控除額が異なり、同居している場合の控除額は58万円で、同居していない場合は48万円です。高齢者は介護費用などの負担が大きいと想定されるため、通常よりも控除額が大きくなっています。
高齢になると、病院に入院したり老人ホームなどの施設に入所したりすることが多くなるでしょう。入院は自宅に戻ることが前提なので同居扱い、施設入所はそこに住むことになるので同居以外の扱いになります。
なお、年齢については、扶養控除を受ける年の12月31日現在を基準に判断します。
扶養控除を受けるうえでの注意点
扶養控除を受けるうえでの注意点を以下にまとめました。
納税者が2人以上いる場合
夫婦共働きで1人の子供を扶養している場合など、扶養控除を受けることができる納税者が2人以上いる場合、納税者全員が一律に扶養控除を受けられるわけではないので注意が必要です。例えば、扶養者Aの扶養控除を受けることができるのは納税者Bのみなので、この場合は夫か妻のどちらかとなります。
扶養控除を受ける納税者は当事者間で決めて問題ないので、納税者である夫婦と、扶養親族に該当する子供が2人いる家庭の場合、2人とも夫の扶養親族とすることもできますし、1人は夫、もう1人は妻の扶養親族とすることも可能です。ただし、高所得者ほど所得税や住民税の税率が大きくなるため、所得の多い納税者が控除を受けるようにすると、より税負担の軽減になるでしょう。
16歳未満の子供は控除対象外
子供は扶養控除の対象となりますが、16歳未満の子供は対象外となります。扶養していることには変わりないのにと思われるかもしれませんが、対象外となっているのは児童手当が支給されるからです。15歳で児童手当の支給が終わるため、16歳から扶養控除の対象となるという仕組みです。
国外に住む扶養親族の場合
留学などで海外に住む子供を扶養している場合も扶養控除を受けられますが、その場合は「親族関係書類」と「送金関係書類」の添付または提示が必要となります。
親族関係書類は扶養親族のパスポートの写しなど、納税者と親族の関係を証明するもので、送金関係書類は金融機関の書類またはその写しなど、生活費や教育費等の送金実態を証明するものです。海外に住む扶養親族がいる場合は、忘れずに準備しましょう。
扶養親族に給与収入と公的年金収入がある場合
パートやアルバイトの給与収入と、公的年金などによる収入がある親族を扶養している場合、両方を合わせた年間の合計所得金額が48万円以下でないと扶養控除の対象になりません。
所得金額とは、前述のとおり、給与収入は給与所得控除額を差し引いた金額、公的年金は公的年金等控除額を差し引いた金額です。両方を合計して48万円以上となると扶養控除を受けられなくなるので注意しましょう。
まとめ
扶養控除は、配偶者以外に納税者が養っている親族がいれば受けられる控除で、扶養する人数が多ければ多いほど節税効果が高くなり、手取り金額を増やすことにつながります。同居の有無にかかわらず受けることができ、対象となる親族の範囲が広いので、扶養者がいる場合は対象となるかを要件と照らし合わせて確認しましょう。
ただし、収入が多い親族は扶養から外れてしまうことになるので注意が必要です。パートやアルバイトなどで収入を得ている扶養者がいる場合は、年間の所得がオーバーしてしまって扶養控除が受けられないということがないように、しっかりと収入額を確認しておきましょう。
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※この記事は2023年8月時点の情報をもとに作成しております。
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