平均年収でも実現可能!好きな仕事をしながら生きる「サイドFIRE」を達成するには
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年9月22日 10時0分
米国のミレニアル世代から広まったFIRE(Financial Independence, Retire Early)という考え方。SNSなどで「FIREを実現した」という人の投稿を見たり、メディアで記事を読んだりしたことがある人も多いのではないでしょうか。今回お話をお聞きしたまなさんは、FIREの中でも「サイドFIRE」を目指し、実現した当事者です。サイドFIREとは、お金のためではない好きな仕事をしながら実現するFIREのこと。どのような経緯、手順でサイドFIRE実現に至ったのか、その先に描く生活はどのようなものなのか、お話を伺いました。
自己実現のための仕事はしたい。まなさんが実現した「サイドFIRE」とは
マネ活編集部:まなさんは「サイドFIRE」を目指してこられたと伺っています。「FIRE」は見聞きすることがありますが、「サイドFIRE」はまた別のものになるのでしょうか。
まなさん:少し異なります。もともとFIREという言葉は欧米で生まれたもので、欧米諸国では「食べていくための仕事、いわゆるライスワークからリタイアし、自己実現しよう」という考え方なんですね。なので、FIREをしたあとも自己実現のためなら働いていい、稼いでいいんです。
でも、日本では「働いている=FIREじゃない」という印象が強くあります。私が目指したいのは日本でいうFIREじゃなく、欧米のFIREだなということで、あえて「サイドFIRE」という呼び方をしています。働きたくないわけではなく、自己実現のために生きられる生活をしたいというのが私の想いだったので。
マネ活編集部:そもそも、まなさんがFIRE、そしてサイドFIREを知ったきっかけ、目指すようになった理由は何なのでしょうか。
まなさん:きっかけは夫です。2018年ごろ、彼が読んでいた雑誌にアメリカ人の方でFIREを達成された方が載っていて「アメリカではこういう生き方があるんだって」と教えてもらいました。雇われて生きていくのが当たり前だと思っていたので、贅沢をしない代わりに経済的な自由を得て自己実現のために生きられる生き方があると知れたのは新鮮な驚きでした。
2018年当時、まだ日本ではFIREを知っているのは少数でした。広がったのはYouTuberによる発信がきっかけだったのではないかと思います。そこで広がったのが「遊んで暮らして金もある」というキャッチフレーズだったため、日本ではFIRE=遊んで暮らす=働かないという認識が根付いたのかもしれません。
でも、マズローの欲求の段階(※)にもあるように、人間にとっては人との繋がり、やりがいは絶対に必要なものだと思うんですよね。衣食住が満たされていて、お金にも時間にも余裕があったとしても、それだけでは満たされないものがあるのではないかなと思ったので、私は自分のやりたい仕事をしながらのFIREを目指したいということで、「サイドFIRE」と区別して目指してきました。目指し始めたのが29歳のときで、33歳で達成しました。
※心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」のこと。欲求5段階説は人間の基本的欲求を5段階に分類したもので、集団に属したい、他者からの愛情を受けたいという欲求は「所属と愛の欲求(社会的欲求)」と呼ばれる。
参考:承認欲求とは|強い人の特徴や対処法、マズローの欲求5段階説についても解説
「お金でお金を増やせる」実体験から資産形成を本格化
マネ活編集部:サイドFIREをしようと決めてから、どのように資産形成を進めていったのでしょうか。目指す以前から資産形成はしていたのですか?
まなさん:していました。これも夫がきっかけですね。彼はよくビジネス書を読むタイプなんですよ。結婚した2014年は一般NISAが始まった年で、夫から「これからは僕らのような一般家庭でも自分で投資をして資産を形成していかないといけないんだよ」と言われたんです。彼の勢いに押され、非課税額の満額分の投資信託を毎月積み立て始めました。
そこからは会社員生活、妊娠・出産と慌ただしい日々が続いたため、すっかり一般NISAのことは頭から抜け落ちていたんですね。思い出したのは、少し心に余裕が生まれた3年後。ふと「そういえば一般NISAをやっていたな」と思い、夫に聞いたところ「利益が出ているよ」と言われたんです。
ふたを開けてみると、3年で100万円ほどの利益が出ていました。衝撃でしたね。お金でお金が増える経験をしたことがほぼ初めてでしたから「もっと本腰を入れてやっていこう」と思うようになりました。
それと同時期にFIREという生き方を知り夫婦でシミュレーションを作ってみることに。「夫婦で協力し合い、本気で頑張れば実現できるかもしれない」ということがわかり、夫婦で同じ方向を向いて資産形成ができるようになり、今に至るという流れです。同じ方向を向けてからは、資産形成スピードも上がりましたね。
今思うと、利益が出たという経験が大きかったですね。実は、私が一般NISAを始めてから、チャイナショックなど下落相場な時期があったんです。でも、当時の私はすっかり自分が投資をしていることを忘れていたので、下落のニュースに不安に陥ることなく自動積み立てでコツコツと続けられました。初心者の関門のひとつは続けることだと思うので、私はその点においてラッキーでしたね。
マネ活編集部:サイドFIREを目指す前、最初に一般NISAを始めたときには特に目標はなかったのですか?
まなさん:なかったですね。結婚もしたんだし、老後のためにも資産形成を始めないとな、という感じです。結婚前は都内でそれぞれ一人暮らしをしていまして、結婚して郊外で一緒に暮らすようになったことで、家賃や生活費の合計額が減るよねという話になったんです。そこで、夫から「生活はまなの収入だけでやりくりし、僕の収入は貯蓄や投資に回していこう」と提案を受けたんです。そうすればもしもどちらかが働けなくなっても、一方の収入で生活はしていけます。家庭内でもしもの時の保険機能を持たせることで、保険料を節約しようというのが彼の考えで、私も納得できたので始めたという経緯でした。
マネ活編集部:そこからサイドFIREというゴールができたわけですが、そのゴールはどこにあるのでしょうか。
まなさん:私たちの場合は、金額で決めるのではなく、夫婦でライフプランシートを作ってシミュレーションをすることでゴールを決めました。
100歳まで生きると仮定して、毎年のキャッシュフローを組み、生涯に渡り資産がマイナスにならなければサイドFIRE成功としたんですね。「この年まで働いて入金を増やし、ここからは取り崩しの生活をする」と仮定し、キャッシュフロー表を作りました。当時は40歳までにサイドFIREを達成したいなと漠然と思っていたので、40歳以後にキャッシュフローが赤字にならず100歳まで過ごせるシミュレーションを作り、そこを目指すことにしたという感じです。
マネ活編集部:実際には33歳で達成されたということで、かなりの前倒しですね。その理由は何でしょうか。
まなさん:それまでの「何となく投資をしている」状態と比べると、やはり支出削減のやる気が違いましたね。発信活動も始めたことで、本業以外からの収入も得られるようになり、入金額が増えました。
投資自体はインデックス投資しかしていないことに変わりはないのですが、これまでは一部を小遣いにしていたボーナスを全額投資に回すようにしたり、副業収入があっても使わずに投資に回したりしました。夫の収入は結婚当初からあえて自己申告制を採用していて、夫が稼いだ給料から毎月3万円を目安にお小遣いとして夫自身が抜き取って、残りの金額を証券口座に入金してもらっていました。
最初の頃は、残業代やインセンティブがあったはずなのに、証券口座にいれてくれる金額は毎月ほとんど変わらなかったんです。でも、夫の働くモチベーションを下げないためにあえて自己申告制を採用していたので、あまり気にしていませんでした。しかし、夫婦でサイドFIREを目指し始めてからは、残業代やインセンティブもしっかり証券口座に入れてくれるようになり、毎月の入金額がアップしました。
いち早くサイドFIREを達成するという夫婦共通の目標があったおかげで、投資に回せる金額が増え、資産形成のスピードが上がりました。外部要因として、コロナショック後の値上がりによる影響もあり、予定より早まったという感じですね。
マネ活編集部:ライフプランシートの作成はプロの力を借りたのでしょうか。
まなさん:いえ、夫と2人で作りました。これが大変でしたね。でも、やはり数字で可視化することは大切だと実感しています。サイドFIREを目指したい人だけでなく、将来のお金に不安がある人なら、ぜひライフプランシートを作ってほしいです。私たち夫婦が作ったシートは、プロにアレンジを加えてもらったうえで販売もしているので、ゼロから作るハードルが高い人は活用してもらえればと思います。
ちなみに、当時は漠然と「資産1億円でサイドFIRE達成かな」と思っていたんですが、相場の変動による影響を受けるため、漠然と1億円を目指すことに意味を見出せなくなったんですよね。それよりも、数字で見たときに赤字にならないようにできるかに重きをおいたほうが良いと思うようになり、1億という数字にはとらわれなくなりました。その代わりに定期的にライフプランシートを実態に合わせて更新することで、現状を正確に把握し、サイドFIREの失敗を未然に防ぎたいと思っています。
初心者がサイドFIREを目指して資産形成を進める秘訣とは
マネ活編集部:資産形成や金融知識のない方は、どう資産形成を進めていったらいいでしょうか。おすすめの勉強法があれば教えてください。
まなさん:段階があるかなと思います。生活費の支出が収入よりも多くなっている人は、まず収入内で暮らせるようになること。そこから、何かあったとき用の現金貯金「生活防衛費」を貯めること。これは会社員なのか自営業なのか、家族が何人いるのかによって金額が変わります。
収入以下の支出で暮らして、生活防衛費を貯める、この2ステップができてから、投資を始めましょう。ここからは貯金に回していた金額を全額投資に回して良いと思います。我が家では、生活費とは別に何かあったときのために特別費として毎月3万円を積み立てていて、冠婚葬祭や家電の買い替え、旅行費用はここから出すようにしています。いち早く資産形成を成功させたい方に個人的におすすめなのは、先取り生活費です。
マネ活編集部:先取り貯蓄ではなく?
まなさん:先取り貯蓄は上振れしないので、貯蓄額を固定するのはもったいないなと。生活費を固定してしまえば、余剰分の収入はすべて貯蓄や投資に回せるようになります。より早く資産形成を進められますよ。
マネ活編集部:投資に関する勉強方法はいかがですか?
まなさん:そこまで必要ではないと思っています。やはり王道は国が提示しているNISAなどで、そこに則って投資することが1番だと思いますね。私はただインデックスファンドへの自動積み立てをしていただけで、3年間で100万円の利益を得た経験から「投資の勉強をしたらもっとお金を増やせるのでは」と四季報を読んだり、個別株に投資してみたりした時期もあったんです。でも、お金や時間を割いて努力して投資した個別株の結果と、何もせずただ自動で積み立ててきたインデックス投資の結果を見比べてみると、インデックス投資の成績の方が少し良かったんです。
私には投資センスがないなと思い、限りある時間を割いて投資センスを磨くことに注力するより、入金力を上げるために時間を使ったほうが効率的だと考え方をシフトしました。
余計な情報を入れれば、その分だけ損をするリスクも上がりますから、初心者には毎月コンスタントにコツコツインデックス投資を続けていくことをおすすめしたいですね。ただ、インデックス投資は投資していることを忘れるぐらい投資感覚がないので、投資のおもしろみは感じられにくいかなとは思います。興味がある方は個別株などに投資するのもいいと思いますが、必ず余剰金でトライしてほしいですね。
マネ活編集部:では、初心者向けのコツは「続けること」になりますか?
まなさん:はい。すぐに結果が出なくても諦めず、とにかく継続してほしいです。一攫千金はないと思いましょう。インデックス投資はそこまで儲からないといわれるんですけど、それはそうなんですよ。その分、リスクを下げて資産形成できるものなので。続ければ資産は増えていくんだよということをお伝えするためにも、私はSNSでの発信で毎月資産を公開しています。2019年9月に始めて行った世帯純資産の公開も現在丸4年となり、その間コロナショックなど色々なことがありましたが、2023年9月現在のところ、当時から約6,000万円の資産を増やすことができました。この間特別なことはしておらず、ただひたすら共働きの会社員として頑張って働き、できるだけ小さく暮らし、インデックス投資を続けてきた、これだけです。兎にも角にも「続けること」が最も重要だと思います。
マネ活編集部:そのほか、初心者の方にお伝えしたいことはありますか?
まなさん:母のエピソードをお伝えしたいです。母は投資否定派で、私からの強いプッシュがあってしぶしぶ月1万円からつみたてNISAを始めたんですね。その2年後、そんな母から「もっと投資金額を増やしたいけど、どうしたらいいの?」と連絡がきたんです。今ではクレジットカード積み立ての満額5万円で積み立てていて、利益も40%ほど出ています。
私もそうですが、お金でお金が増える体験を味わうのが1番。長期スパンで行うものなので、「いつのタイミングがいいんだろう」と考えず、思い立ったら吉日くらいの勢いで少しでも早く始めてほしいなと思います。
あと、投資の勉強は特にいらないとお話しましたが、税金の勉強はおすすめしたいです。同じ手取りでも、節税しているかどうかで残る金額が変わるので。私もSNSでサイドFIREを目指す発信を始めてから勉強に本腰を入れるようになりました。
「どうやったらできるか」に思考を転換させ、理想の生き方を実現しよう
マネ活編集部:サイドFIRE達成後の生活についてお聞かせください。
まなさん:私は2022年末にサイドFIREを達成し、個人でやりたかった仕事をするための会社を立ち上げ、毎日充実した生活を送っています。やりたかった仕事とは、私の場合はこれまでの仕事の延長線上にあるものですね。会社員の場合は会社や上司の方針など制約があります。自分でやれば自由に決められますし、かつサイドFIREであれば資産の後ろ盾もある。脱サラして独立するより、心の安心がある状態で挑戦できるのがサイドFIREの魅力だと思います。「お金のためにやろうかな」という迷いがないのはメリットですよ。
夫も年内にサイドFIREを達成する見込みで、その後は夫婦の夢だった海外移住を実現させる予定です。結婚・出産を経て「小さい子供もいるし、私の人生このまま会社員でい続けるしか選択肢はないのかな」と思っていたんですね。でも、サイドFIREというライフスタイルに出会い、夫婦でがむしゃらに努力した結果、サイドFIREを実現することができ、自分のやりたい仕事と自由な暮らしを選べるようになり、非常に嬉しいです。小さい子供がいてもたった一度きりの自分の人生、諦めてはいけないなと実感しています。
夫婦で目指す場合は、ビジョンを一致させるのが大事ですね。我が家は賃貸ですし、車も持っていません。その分、自由な暮らしに重きをおいています。将来やりたいことリストを作り、夫婦でじっくり話し合うことが大切だと思っています。
マネ活編集部:これからサイドFIREを目指そうという読者に向けて、メッセージをお願いします。
まなさん:「どうせできない」ではなく「どうやったらできるか」に思考を転換し、諦めずに継続してほしいです。サイドFIREは高所得者層だけが目指せるものではないということを伝えるため、以前シミュレーションしたことがあるんです。その結果、過去実績からの算出ではありますが、我が家と同じ都内に勤務する会社員共働き世帯であれば、平均年収の方でも8年で7,000万円の資産を作れる可能性があることがわかりました。継続すれば結果はついてくるはずです。「絶対にできる」と思って、頑張ってみてください。
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