パワハラの定義とは?3要素や具体的な事例、対処方法などについて解説
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年9月27日 10時0分
家計を維持するには、仕事などで収入を得ることが必要です。仕事を続けていくには、職場でのトラブルに対処しなければならない場面も出てきます。そのひとつがパワーハラスメント。パワハラと呼ばれるものです。 職場でパワハラを受けて体調を崩すこともあれば、自分がパワハラを行ったとして責任を追及されてしまうケースもあるでしょう。防止対策の義務化も始まっているパワハラについて、さまざまな角度から解説していきます。
パワハラ(パワーハラスメント)の定義
パワハラ、パワーハラスメントというと、職場で上司から受ける威圧的な言動といったイメージがあるでしょう。職場での業務に支障を生じるパワハラに対しては、法律によって防止措置が義務付けられるようになりました。労働施策総合推進法が2019年に改正され、2020年6月1日からは大企業に、2022年4月1日からは中小企業にまで義務化されたのです。パワハラの法的な定義を確認しておきましょう。
パワハラの3要素
労働施策総合推進法の第30条の2は、事業主が雇用管理上措置を講じなければならない対象を定めています。これによるとパワーハラスメントは、次の3つの要素をすべて満たすものと解釈されます。
- 優越的な関係を背景とした言動である
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
- 労働者の就業環境が害されるもの
ある行為がパワハラに該当するかどうかは、これらの3要素をすべて満たしているか確認が必要です。それぞれの点について、もう少し詳しく見てみましょう。
「優越的な関係」というと、上司と部下という関係が思い浮かびます。これ以外にも、知識や経験における優位性や、集団による行為も含まれます。
「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」という部分は、判断が難しいところかもしれません。状況にもよりますが、人格を否定するような言動などが含まれます。
「就業環境が害される」とは、精神的・身体的な苦痛により、職場環境が悪化し能力を発揮できなくなるような状況のことです。
6つの類型
厚生労働省が示している資料を見ると、パワハラに当たる言動を6つの代表的な類型に分けられているので、こちらを見るとよりイメージが湧きやすいかもしれません。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
身体的・精神的な攻撃には、殴打したり侮辱したりといったことが該当します。「人間関係からの切り離し」というのは、仕事から外して別室に隔離したり、自宅で研修させたりすることです。
また無理な要求をして、できなければ叱責するなどは「過大な要求」、退職させることを目的として嫌がらせのために簡単な仕事を与えたり、全く仕事を与えなかったりすることは「過小な要求」となります。職場の外で監視を続けたり、病歴を暴露したりといったことは「個の侵害」となり、これも優越的な関係を背景とするなどの条件を満たすと、パワーハラスメントと判断される可能性があります。
パワハラの具体的な事例とは?
暴力や暴言
ここまで見てきたように、パワハラのパターンはさまざまです。ここで3つの要素と照らし合わせながら具体例を見ていきましょう。まずは職場において係長Aが、部下Bを足で蹴ったり罵声を浴びせたりした場合はどうなるでしょうか。
まずAとBは上司と部下で、優越的な関係があったといえます。蹴ったり罵声を浴びせたりというのは、業務上で必要な指示などの範囲を超えていると判断されそうです。さらにBや周囲の従業員が不快に感じ業務に支障が出ているということであれば、パワハラに該当すると考えられます。
部下が上司に行うパワハラ
パワーハラスメントというと、上司が部下に行うもの、というイメージが強いかもしれません。しかし、逆のパターンも存在します。
例えば新しく着任した課長Aと、その下で働くベテラン社員Bがいるとしましょう。まだ業務に精通していない課長Aに対し、部下のBが「役立たず」などと、ほかの職員の前で侮辱したとします。部下による暴言ですが、業務上の知識が豊富という優越的な関係を背景としています。暴言の内容が人格を否定するもので、課長Aの業務に支障が出ていれば、これもパワハラと判断されそうです。
SNSを使ったパワハラ
インターネットの普及にともない、広く使われるようになったSNS。家族や友人との連絡に便利ですが、仕事上の連絡手段として使われることもあります。例えば上司Aが部下Bに対し、深夜でも休みの日でも、業務上の指示をSNSで連絡してくるとしましょう。さらにそれを部下Bが確認していないと、強く叱責するというケースがあります。
上司と部下という優越的な関係を背景としていて、勤務時間外の連絡で業務の範囲を超えていると考えられます。このことで部下Bが仕事に集中できないと感じれば、パワハラと判断される可能性が高そうです。
パワハラを疑われないために注意すべきこと
企業の従業員として仕事をしている場合、上司からパワハラを受けるのも困りますが、逆に自分が部下にパワハラをしてしまう心配もあります。もし自分がパワハラを行ったと認定されると、勤めている会社から何らかの処分を受ける可能性があります。
また精神的・身体的な被害を受けたとして、相手から損害賠償を請求されることも考えられるでしょう。パワーハラスメントが社会的な問題として注目されている中、自分が加害者とならないための知識も必要です。
パワハラを疑われないためには、まずパワーハラスメントの3要素と6つの類型を理解しておかなければなりません。さらに、その具体的な内容も良く理解しておきたいところです。
例えば「業務上必要かつ相当な範囲」の指導とはどういったものなのかという点。上司として部下を叱責するときは、その内容に正当性はあるか、合理的か、人格攻撃になっていないかが問われます。部下を指導するときは、適切な範囲で行っているか自問することが求められるのです。
部下が遂行する業務に改善すべき点が見つかったとしましょう。指摘するときは、まず自分が感情的になっていないか気を付けなければなりません。別のことでイライラしていると、それを部下にぶつけてしまう可能性があります。指導する言葉は、合理的な内容になっているでしょうか。「ふざけるな」などと怒鳴りつけるのは合理的とはいえません。また「無能」「辞めてしまえ」などの人格攻撃と取られるような言動にも注意が必要です。
パワハラにあったときの相談先や対処法
会社で自分がパワハラを受けたら、どうすれば良いのでしょうか。我慢して何もしなければ、表面化せず波風も立てずに済むかもしれません。しかし、それでは問題が解決せず、職場環境の改善にもつながりません。
まず、自分でできることはパワハラについて記録を残しておくこと。日時とともに、だれに何をされたか、目撃者はいるかなどをメモしておきます。録音などの記録ができれば、証拠になるでしょう。後から訴えるときに役立つと思われます。
相談先として考えられるのは、まず同僚や上司。問題の解決に協力してくれるかもしれません。社内には、パワハラの相談窓口が設けられている場合もあります。パワハラについて相談するときには、プライバシーが守られ、自分が不利益を被ることがないか確認しておきましょう。
社内に窓口がない場合は、外部の相談窓口を利用するのもひとつの手段です。パワハラの相談ができるのは、「総合労働相談コーナー」。各都道府県の労働局や労働基準監督署内などにあり、電話でも相談可能です。
総合労働相談コーナーは、全国で379カ所に設置されています。(2023年9月時点)
パワハラ以外にも、解雇や賃金の引き下げ、嫌がらせなどさまざまな問題についての相談先となっています。予約の必要はなく、通話料のみで相談料は無料で利用可能です。専門の相談員が、秘密厳守で対応します。解決へ向けては、都道府県労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんも行っています。
パワハラに関して、社内だけでなく外部にも相談先があることを知っておくと、より安心できるでしょう。
被害を減らすためにできること
2019年に労働施策総合推進法が改正され、パワーハラスメント対策が事業主の義務と示されました。厚生労働省はハラスメントを防止するための指針を策定し、事業主が講ずべき対策を定めています。そこには次のようなものが含まれます。
こうしたことが職場で行われているか、確認しておくと良いでしょう。
必ず講じなければならない措置のほか、パワハラ防止のための望ましい取り組みもあげています。ひとつはコミュニケーションの円滑化へ向けた取り組みです。定期的な面談やミーティングを実施することが、信頼関係や助け合いの基盤を作り、パワハラ被害を減らすことにつながるというものです。
またパワハラ防止につながる研修の実施も、望ましいとされています。例えば感情をコントロールする手法について学ぶ研修。感情的になってしまうと、業務命令のはずが理不尽な暴力や暴言にエスカレートしてしまうかもしれません。そのほかマネジメントについての研修も、パワハラを未然に防ぐのに役立ちそうです。組織管理を体系的に学んでおけば、自分の部下指導が合理的かどうか判断できるようになるでしょう。
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※この記事は2023年9月時点の情報をもとに作成しております。
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