国内総生産(GDP)とは?定義や求め方、最新の世界ランキングなどをわかりやすく紹介
楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2023年10月17日 10時0分
景気の動向を知る指標として注目度の高い「国内総生産(GDP、Gross Domestic Product)」。GDPの多くを占める個人消費が活発化すると企業の業績向上が見込まれます。そのため、株価との相関性も高く、成長率のプラス幅・マイナス幅に関心が集まる傾向にあります。投資信託等の投資をおこなう方々にとっても、GDPの動向を知ることは、現状や今後を知るための動向把握に欠かせません。ここでは、GDPとは、どういうものなのかを詳しく学んでみましょう。
国内総生産(GDP)とは?
国内総生産(GDP)とは、ある国で一定期間に生産されたモノやサービスの付加価値を合計した数字です。一定期間というのは、通常1年のことです。付加価値は、生産活動によって、新たに付け加えられた価値。つまり、モノやサービスを販売した時の価格から、生産にかかった原材料費やそのほかの費用などを差し引いた部分となります。
単純なイメージでは、国内の生産や販売で実現した利益を1年分集計した数字です。国の経済状況を知る手掛かりとなります。
国内総生産の求め方
国内総生産(GDP)は、四半期ごとに集計して公表されていますが、どのようにその数字を求めているのでしょうか。わかりやすいイメージで説明してみましょう。
生産活動にはさまざまな形があります。例えば、小麦から小麦粉を作り、それがパンになって消費者に販売されるというプロセスがあげられます。
まず農家が小麦を作り、製粉会社に100円で売ったとしましょう。仮に農家にかかった費用を0円としておくと、農家が生産した付加価値は100円です。
次に製粉会社が、仕入れた小麦を小麦粉にしてパン屋さんに200円で売ります。小麦の仕入れには100円かかっているので、利益は100円。ここでも100円の付加価値が生じています。
さらに、パン屋さんが小麦粉からパンを作って、消費者に300円で売ったとします。ここでも利益は100円。100円の付加価値が発生しました。ここまでのプロセスでは、農家が100円、製粉会社が100円、パン屋さんが100円とそれぞれ付加価値を生み出しています。ここでの付加価値の合計は300円となります。
売買のプロセスで動いたお金は、100円、200円、300円で合計600円ですが、その数字とは異なることに注意しましょう。また最終的に消費者が支払った300円と、全プロセスでの付加価値の合計が等しくなる点も重要です。
三面等価の原則
GDPに関しては、「三面等価の原則」と呼ばれるマクロ経済学上の原則があります。GDPの値は、生産面・分配面・支出面のいずれから見ても額が等しくなるというものです。生産面では、農業や製造業、小売業、サービス業などさまざまな業種で生産された付加価値の額を集計してGDPを算出します。次のような形で計算されます。
「農業で生産された付加価値+製造業で生産された付加価値+サービス業で生産された付加価値+…」
分配面である国内総所得(GDI)はどのようなものでしょうか。企業は生産活動を通じて付加価値を生み出します。そこから得た利益はさまざまな経済主体に分配されます。労働者への賃金、企業が留保する利益、投資家への配当、政府への税金となるのです。これらを合計した数字は、生産面から見たGDPと等しくなります。分配面から見たGDPは次のような計算式で表されます。
「雇用者収入+営業余剰等+固定資本減耗+純間接税」
支出面である国内総支出(GDE)はどうなるでしょうか。生産されたモノやサービスは、さまざまな主体によって購入されます。家計が消費する分、企業が投資する分、政府が支出する分、それに海外との輸出入による分を考慮して計算されます。計算式は次のようなものです。
「消費+投資+政府支出+輸出-輸入」
消費は民間最終消費とも呼ばれ、自動車やテレビなど、家計によるさまざまなモノやサービスへの支払いのことです。投資には、企業が建てる工場や、民間の住宅投資などが含まれます。政府支出には、公共投資である道路や橋などの建設費用といったものが含まれます。
輸出した分は海外の主体が購入します。輸入した分は国内で生産していないので、差し引きます。この式から、消費・投資・政府支出・輸出が増えるとGDPが増え、輸入が増えるとGDPは減ることがわかるでしょう。
GDPは生産した付加価値の合計ですが、その数字は生産面・分配面・支出面と、3つの面から見ることによって把握できるのです。そしてそれぞれの面から算出したGDPはすべて等しくなるのです。これにより、例えばGDPを増やすには付加価値を高めなくてはならない、賃金の上昇はGDPを押し上げるかもしれない、GDPを増やすにはさらなる政府支出の増加が必要だ、といったような見方が出てきます。
名目GDPと実質GDPの違い
GDPには名目GDPと実質GDPがあり、区別する必要があります。この2つの違いは、物価の変動を考慮しているかどうかです。GDPは国内で生産した付加価値の合計で、500兆円や5兆ドルなどお金の単位で表示されます。しかし、同じ大きさのお金でも、物価によってその価値が変わるため、物価を考慮する必要があるのです。
最近問題となっているインフレ。同じ1万円でも、物価が高くなると買えるモノの量が少なくなります。名目GDPは実際に取引された価格に基づく値で、実質GDPは物価の変動による影響を差し引いた値となります。
名目GDPから実質GDPを算出するのに使われるのが「GDPデフレーター」。一種の物価指数です。名目GDPと実質GDPとGDPデフレーター関係を式にすると、次のとおりです。
「GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP」
名目GDPとGDPデフレーターを使って実質GDPを算出するのであれば、変形して次の式を計算します。
「実質GDP=名目GDP÷GDPデフレーター」
GDPデフレーターは、物価が上昇するインフレ時には数値が1より大きくなり、物価が下落するデフレ時には数値が1より小さくなります。つまり物価が上昇した時は「実質GDP<名目GDP」、物価が下落した時は「実質GDP>名目GDP」ということです。同じ年の実質GDPと名目GDPが並んでいて、実質GDPの方が小さければ、この期間に物価が上昇した影響を受けたと理解すれば良いでしょう。
国内総生産と国民総生産の違い
国内総生産(GDP)が日本で使われるようになったのは、1980年代からです。代表的な指標として採用されたのが1993年。それ以前は主に、国民総生産(GNP、Gross National Product)が使われていました。2000年からは、国民経済計算の体系(93SNA)が変更され、GNPの概念がなくなりました。年代によってはGNPという言葉を知らないという方もいらっしゃるかもしれません。「国内」と「国民」という部分が異なる2つの言葉。違いを確認しておきましょう。
GDPは「国内」で生産された付加価値の合計。例えば、日本企業が海外支店で生産した付加価値は、そこに含まれません。GNPは「国民」が生産した付加価値の合計。日本企業が海外支店で生産した付加価値も含むことになります。GDPが属地的な考え方を取る一方、GNPは属人的な見方をしているといえるでしょう。
GNPの概念はなくなり、それに代わるものとして「国民総所得(GNI、Gross National Income)」が使われるようになりました。定義としては「居住者が国内外から1年間に得た所得の合計」となり、海外からの所得も含みます。
国内総生産と経済成長率
お金の計画を立てる時は、景気の動向が気になります。家計の収支や投資の判断を左右する景気の状況を示すのが、経済成長率。実質GDP成長率がそれです。例えば今年の実質GDPの値と、去年の実質GDPの値がわかれば、その増減率を計算できるでしょう。
実質GDP成長率については、日銀などが将来的な予測を公表しており、景気の見通しをつける参考にもなります。
景気が良く経済が好調であれば、経済成長率・実質GDP成長率は高くなり、逆に景気が悪く経済が不調であれば成長率は低くなり、マイナスになることもあります。金利の動向や投資に対するリターンについて考える時にも、重要な判断材料となる数字です。経済成長率とその予測については、高い関心を持つことが必要といえるでしょう。
統計で見る日本の国内総生産
日本のGDPは内閣府が公表しています。最新の数字を見ると、2022年度の名目GDPは562.7兆円、実質GDPは549.2兆円でした。名目GDPより実質GDPの方が小さいことから、この期間に物価が上昇していることがわかります。2022年度(前年度比)の年次GDP成長率は、名目GDPで2.0%、実質GDPで1.4%でした。(2023年10月時点)
リーマンショックのあった2008年からの推移を見ると、500兆円前後まで落ち込んだGDPは、2017年までに550兆円付近まで回復しました。その後2020年の新型コロナウイルス流行の影響から、再び500兆円付近まで下落しました。現在はそこから回復した状況です。
実質GDPについて2000年と2020年の数字を産業別に比較すると、「医療・福祉」が26兆2,340億円から、35兆7,990億円と上昇したのが目立ちます。一方「建設」について見ると、38兆5,700億円から26兆460億円まで下がっているのがわかります。時代の移り変わりとともに伸びる産業と縮小する産業があり、GDPを詳しく見れば産業構造の変化も見えてくるのです。
【最新】世界GDPランキング
グローバルノートが、IMFが公表するデータをもとに作成した、2022年の世界の名目GDPランキングを見てみましょう。次のような順位になっています(GDPは1千万ドル以下で四捨五入)。(2023年10月時点)
世界GDPランキング
このように、GDPの見方がわかると、日本だけでなく世界各国の経済状況をより詳しく知ることができるでしょう。物価や輸出入の動き、成長を引っ張っている産業など、さまざまな観点からの分析も可能です。
長期的な資産形成は分散投資が基本とされています。投資信託やETFを活用すれば、日本や世界各国の株式市場全体に、幅広い分散投資ができるでしょう。なお、投資信託やETFは楽天証券などの証券会社で始めることができます。
※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しております。
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