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所得金額調整控除とは?計算方法や確定申告時の書き方、対象者などをわかりやすく解説

楽天お金の総合案内 みんなのマネ活 / 2024年3月19日 10時0分

2020年の税制改正から所得金額調整控除が導入されました。主に年収が850万円を超えている子育て世帯や、給与収入と年金受給が両方ある人などが対象で、条件に該当すれば所得税の軽減を受けられます。 ここでは、所得金額調整控除の概要と申請方法をわかりやすく解説します。

所得金額調整控除とは

所得金額調整控除とは

所得金額調整控除とは2020年から導入された制度で、給与所得から一定額を差し引くことで所得税の負担を軽減できるものです

 

主に子供や障害者がいる年収850万円以上の世帯と、働きながら年金を受け取っている高齢者世帯が対象となります

 

これらの世帯は2020年の税制改正で給与所得控除の上限額や公的年金所得が引き下げられたため、実質的に増税となってしまいました。救済措置として新たに創設されたのが所得金額調整控除であり、負担が大きくなりすぎないように調整するねらいがあります。

所得金額調整控除の種類

所得金額調整控除の種類

所得金額調整控除には2つの種類があり、それぞれ対象者と内容が異なります。

①子供・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除

子育てをしている世帯や、家族の中に特別障害者がいる世帯が対象となる控除です。具体的な条件と内容は、以下のとおりです。

対象者

給与等の収入金額が850万円を超えており、かつ以下のいずれかに該当する者

 

  • 本人が特別障害者に該当
  • 23歳未満の扶養親族がいる
  • 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる

控除金額

{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%

 

※1円未満の端数は切り上げ。

 

この式を簡単にいい換えると、年収の850万円を超えた部分の10%を給与所得から差し引ける、という意味になります。ただし、給与の年収が1,000万円を超えている場合は1,000万円として計算するため、控除額の上限は15万円です。

②給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除

給与収入と年金受給の両方を得ている人が対象です。長寿化が進む日本では、年金を受け取りながら現役で働き続ける人も多くいます。具体的な条件と内容は、以下のとおりです。

対象者

給与所得控除後の給与金額と年金にかかる雑所得の合計が10万円以上の人

控除金額

{給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円

 

こちらの式は、給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得を合計したうえで、10万円を超える部分がそのまま控除金額となる、という意味です。

 

ただし給与所得控除後の給与等の金額と、公的年金等に係る雑所得はそれぞれ10万円を上限として計算します。よって控除額の上限は10万円です。

 

また、「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」の適用がある場合はその適用後の給与所得の金額から控除します。

No.1411 所得金額調整控除|国税省

所得金額調整控除で押さえておきたいポイント

 所得金額調整控除で押さえておきたいポイント

2種類の所得金額調整控除について、押さえておきたいポイントを見てみましょう。

申請方法の違い

①の子供・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は、年末調整または確定申告で申請できます。

 

一方、②の給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除の申請方法は確定申告のみです。年末調整では申請できません

国税庁「No.2676 年末調整で所得金額調整控除の適用を受けるとき」

控除を適用する順番

2種類の所得金額調整控除は併用できます

 

ただし、適用する順番が決まっており、必ず①の子供・特別障害者がいる世帯を対象とした所得金額調整控除を先に適用します

 

順番を間違えると計算結果が変わるため、確定申告を行うときには注意が必要です。

給与が複数あるときはすべて合算する

ダブルワークなどで複数の職場から給与を受け取っている場合は、すべての給与を合算した金額で考えます。また、この場合は年末調整ではなく確定申告を行う必要があります

 

なお、所得金額調整控除の対象にできるのは給与等の収入金額と公的年金等に係る雑所得のみです。事業所得や不動産所得などは対象になりません。

夫婦2人同時に控除が受けられる

例えば、夫婦2人と子供が1人いる世帯で、①の子供・特別障害者がいる世帯を対象とした所得金額調整控除を受ける場合を想定してみましょう。

 

このとき夫婦ともに年収850万円を超えていれば、夫と妻の両方が控除を受けられます

 

扶養控除であれば夫婦どちらか一方の所得しか控除できませんが、所得金額調整控除には片方のみという制限がないため、夫婦それぞれの所得から控除が可能です。

 

ただし夫婦のうち一方が年収850万円を超えていない場合は、控除を受けられるのは超えている1人のみとなります。

子供や特別障害者の人数は控除額に影響しない

①の子供・特別障害者がいる世帯を対象とした所得金額調整控除の適用可否や控除額には、子供や特別障害者の人数は影響しません。つまり、子供が1人でも2人でも、控除される金額は変わらないことになります。

 

これも扶養控除とは異なるポイントで、扶養控除の場合は人数が多いほど控除額が大きくなりますので違いを覚えておくと良いでしょう。

障害年金や遺族年金は対象外

②の給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除に関して、ここでいう年金所得とは公的老齢年金に係る所得を指し、障害年金や遺族年金は含みません

 

障害年金と遺族年金はそもそも非課税であり、所得税の対象として扱わないため所得金額調整控除にも関与しません。

所得金額調整控除と所得控除は違う?

所得金額調整控除と所得控除は違う?

所得金額調整控除と似た言葉に「所得控除」がありますが、指しているものは全く異なります。

 

所得金額調整控除はここで解説したように、2020年の税制改正で税負担が増えた世帯への配慮として創設された制度です。

 

一方、所得控除は従来からある所得の計算の際に使われる以下15種類の総称です。こちらは子育て世帯や年金受給世帯だけでなく、国民すべての所得税計算に関わっています。

 

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 寄附金控除

名前が似ていますが、違いをしっかり押さえておきましょう。

所得税のしくみ|国税省

所得金額調整控除の申請方法

所得金額調整控除の申請方法

所得金額調整控除の申請は、年末調整または確定申告で行います。

 

①の子供・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は、どちらの方法でも申請可能です。

 

②の給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得額調整控除は、確定申告に限られるため注意しましょう

 

以下に、年末調整・確定申告それぞれの申請方法を解説します。

年末調整で申請する場合

年末調整で申請する場合は、会社に「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出します。


長い名前の申告書で混乱しそうですが、要するに基礎控除、配偶者控除、所得金額調整控除を1枚で同時に申請できる書類です。年末調整の時期に会社から配布されるため、会社が指定する期日までに記入して提出しましょう。

 

所得金額調整控除に関係する欄は、書類の一番下にあります。「要件」の該当する項目にチェックを入れ、「扶養親族等」には扶養している家族の情報を記入します。

 

 

令和5年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(国税庁)を加工して作成

 

右側の「特別障害者に該当する事実」は障害者手帳の種類や交付年月日など、特別障害者である事実を記載する欄ですが、別で扶養控除等申請書を提出している場合は「扶養控除等申告書のとおり」にチェックを入れるのみです。

確定申告で申請する場合

確定申告で申請する場合は、確定申告書を作成します。

 

国税庁のWebサイトで提供されている「確定申告書作成コーナー」を利用すれば、所得金額調整控除が適用されるか自動で判別してくれます。しかも、金額の計算も自動で行われるため手間が減っておすすめです。

 

手書きでの作成であれば、地域管轄の税務署か国税庁のWebサイトから申告書の様式を入手しましょう。所得金額調整控除が関係する記入箇所は、以下のとおりです。

第一表

収入金額等の給与(㋔)

 

申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】(国税庁)を加工して作成

 

給与等の収入金額の合計を記入します。源泉徴収票の「支払金額」の金額を転記しましょう。「区分」の欄には、以下の条件に従って1・2・3いずれかの数字を記入します。

 

  1. 子供・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除を適用する
  2. 給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除を適用する
  3. 両方を適用する

所得金額等の給与(⑥)

申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】(国税庁)を加工して作成

 

所得金額調整控除を適用した後の金額を記入します。「区分」の欄は、「給与所得者の特定支出に関する明細書」がある場合は区分番号を記入しますが、該当しない場合は空欄で問題ありません。

第二表

配偶者や親族に関する事項(⑳~㉓)

 

申告書第一表・第二表【令和4年分以降用】(国税庁)を加工して作成

 

所得金額調整控除の対象となる家族の情報を記入し、右端の「その他」欄の「調整」に丸を付けます。

申告漏れをした場合どうなる?

申告漏れをした場合どうなる?

所得金額調整控除は申請をしなくても罰則はありません。

 

申告漏れしても大事には至りませんが、本来節約できるはずの税金を支払うことになります

 

年末調整で申請するのを忘れた場合は、あとから確定申告で申請しましょう。払いすぎた税金を返してもらうための確定申告を「還付申告」といいますが、5年分までさかのぼって控除の適用が可能です

 

また、年収が850万円を超えるかギリギリで申請を迷っている方でも、とりあえず年末調整で申請書を提出しておくのがおすすめです。結果的に適用されなくても特に問題はないため、使える制度は積極的に使って少しでも納税負担を減らしましょう。

還付金の返金口座には楽天銀行がおすすめ!

還付金の返金口座には楽天銀行がおすすめ!

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※システムメンテナンス時を除く。

 

※この記事は2024年1月時点の情報をもとに作成しております。

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