水俣病マイクオフ問題 10年にわたって被害を訴え続けた獅子島出身女性「死ぬまでこの苦しみが続くと思うと…」 鹿児島
MBC南日本放送 / 2024年7月10日 20時1分
水俣病患者らとの懇談会で、環境省の職員が患者の発言中にマイクの音を絞った問題を受け、伊藤環境大臣は8日から懇談をやり直し、11日は長島町の獅子島を訪れます。
ニューズナウでは獅子島出身の水俣病患者らに、救済の現状や大臣との懇談への思いを聞くシリーズをお伝えしています。
同じ家族の中で国の救済の対象外となり、裁判で被害を訴え続けている獅子島出身の女性です。
人口600人余り、長島町・獅子島出身の山本サト子さん(75)。
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山本さんは高校生まで獅子島で暮らし、その後は熊本県水俣市で看護師として働き、今も水俣市で暮らしています。
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山本さんは中学生のころから、足がつるこむら返りなどの症状を頻繁に繰り返し、今も手足のしびれや頭痛に悩まされ、痛み止めが手放せない日々が続いています。
(獅子島出身 山本サト子さん)「足がつる(痛みは)人には分からない。死ぬまで引きずっていかなければならないのかと、情けなく思う時がある。人には分からないだろうな、この苦しみは」
水俣病は1956年に公式確認された四大公害病の1つです。熊本の企業・チッソが八代海に流したメチル水銀を含む排水が原因で、八代海沿岸の住民が手足のしびれやまひなどの症状を起こしました。
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鹿児島でも八代海に面する出水市、阿久根市などで患者が確認され、水俣市の対岸にある長島町の獅子島もその1つです。
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水俣病をめぐっては、これまでに熊本と鹿児島で2284人が患者に認定されましたが、今も1400人余りが県や国に認定を申請し、審査を待っています。
2009年、認定基準が厳しく、水俣病の症状がありながらも患者に認定されていない人を救済する特別措置法が成立。
山本さんは両親がすでに救済対象となっていて、63歳の時、4人の姉妹とともに特措法による救済を申請しました。
しかし、結果は、長女は一時金の支払いを含むすべての救済措置の対象となったのに対し、サト子さんを含むほかの4人の姉妹は医療費の支払いしか認められませんでした。
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救済が認められなかった理由は明らかにされず、同じ環境で暮らした姉妹の間で「線引き」される結果となりました。
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(獅子島出身 山本サト子さん)「1番上(の姉)は1回目でOKだったのに(私たちは)はねのけられた。始めからもう決まっていて、はねのけると。終わらせるために、ただ義務的に聞くだけ。不信感、ずさんだと思った」
国による2度の救済策などで熊本・鹿児島あわせて5万600人が救済を受けていますが、特措法では地域の線引きなどを理由に対象外になった人たちもいました。
救済が認められなかった患者らは、2013年に国や熊本県、チッソを相手に損害賠償を求める裁判を起こしました。
山本さんも医療費を受け取らず、国の救済を求めて裁判への参加を決めました。
(獅子島出身 山本サト子さん)「だんだん(時が)過ぎていく。だんだん弱気になりました。正直、医療手帳だけ受け取っていたらどんな人生だったんだろうと思う時がある。みんな高齢で亡くなるばかりだから、もう救ってくださいって言いたい。もういい加減に苦しませるのは終わりにして、これを最後に救ってくださいと言いたい」
最初の提訴から11年が経った今年3月、鹿児島を含む1400人の原告のうち144人についての判決で、熊本地裁は全員の請求を棄却。再び、救済への道は閉ざされました。
一方、水俣病を巡る同様の裁判で、去年9月に大阪地裁は原告全員を水俣病と認定し、司法の判断はわかれる形となっています。
(獅子島出身 山本サト子さん)「子どもからもお母さん負けたじゃないと言われ、絶望というか、このままで死ぬのかなと思った。自分の生まれ育ったところ(獅子島)が、水俣が目の前にあるから。ぬぐい切れない、知らないふりはできないと思った」
そして今年5月。水俣病の公式確認から68年目の慰霊祭の後に開かれた、伊藤環境大臣と患者・被害者団体との懇談会。環境省の職員がマイクの音量を絞り、水俣病に対する国の姿勢が問題となりました。
伊藤大臣は8日から水俣市で懇談会の参加者と改めて懇談し、11日は獅子島を訪れます。山本さんは伊藤大臣の島への訪問を通じて、国が患者らの苦しみを理解し、救済のあり方を見直すきっかけにしてほしいと願っています。
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(獅子島出身 山本サト子さん)「獅子島にも目の前にチッソがあって、苦しんでる獅子島の人もいることを分かってほしい。水俣よりも目立たない、この小さな島は救われない。不知火海(八代海)の魚を食べた人(全員が)救済されるべきと、そこで終わらせてほしい、苦しんでる人をなくしてほしい、それだけ」
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