4年前に決壊・氾濫…川内川支流「特定都市河川」に指定へ 中小河川の備え・リスクは？ 鹿児島

MBC

こちらは、4年前の豪雨で決壊した川内川の支流・隈之城川の当時の様子です。川からあふれた水は街に流れ出し、逃げ遅れた住民らがボートで救出されました。

当時の水害は、田んぼの宅地化が要因の1つとされ、国は流域の宅地造成などを制限する特定都市河川に来月にも指定する方針です。
鹿児島県内の1級河川で初めての指定で、地域の防災は進むのか？検証します。

今月1日、薩摩川内市。国と県、市が川内川の支流・隈之城川の流域を来月にも特定都市河川区域に指定するにあたって、地元への説明会を開きました。

特定都市河川は、著しい浸水被害が発生、もしくは、そのおそれがある流域を指定します。1000平方メートル以上の田んぼなどの宅地開発に県知事の許可が必要となり、雨水をためたり、浸透させたりする対策が求められます。

県内では、甲突川など3つの2級河川がこの春指定されたのに次いで、1級河川では初めてです。対象は隈之城川とその支流の流域・隈之城地区が中心の65.4平方キロです。

説明を聞いた市民は…
「隈之城川は非常に危険な川。国、県、市がいっしょになって物事が進むのではないか」
「4年前、救出されている人がいたので、対策が必要と痛感した」

市民の念頭にあるのが、4年前の2020年に隈之城川流域で起きた川の決壊・氾濫です。

7月3日夜、旧国道3号沿いのガソリンスタンドの映像です。このあと、水かさは腰の高さを超えました。

あの日の夜、南の山間部では時間雨量89ミリの猛烈な雨を観測しました。
隈之城川では、支流の百次川と勝目川が相次いで氾濫・決壊し、排水路からも水があふれ、住宅地など20ヘクタールが浸水しました。浸水の深さは最大1.6メートルに達し、逃げ遅れた住民ら54人が消防にボートで救出されました。

さらに3日後、応急復旧した場所が再度決壊、住民9人が再び消防に救出される事態となりました。

当時、住民は…
「ここまで来た」
「怖い。川の氾濫は一瞬。一瞬で胸の高さまで。手をつけられない」

水害の要因のひとつに、国などは田んぼの宅地化があるとみています。48年前の1976年には7.7パーセントだったのが、2021年には18.4パーセントにまで上がり、保水力が下がり、浸水リスクが高まっているとしています。

（川内川河川事務所流域治水課・永谷恵一課長）「田んぼだった土地、そういったところがこれまでは降った雨を一定量ためこみ、地中に浸透する効果が、都市化が進んでくると減少してきている」

宅地化だけが課題ではありませんでした。当時、川の氾濫から、住民に市が避難の情報を出すまで3時間も遅れ、問題視されました。

（坪塚自治会・椨光徳会長）「すぐ見たらここ（腰）まで来ていた。最終的にはここまでぎりぎり」

坪塚自治会の椨光徳会長です。市の情報を待たず、住民を率先避難させました。

（坪塚自治会・椨光徳会長）「市からの情報はなかった。自治会の放送をして1時間過ぎ、午後11時過ぎてから」

川を管理する県だけでなく、防災部局や消防局などとの連携に課題があった市は…

（薩摩川内市市民安全部・上戸理志部長）「本部設置は遅れがあった。庁内と関係機関との連携が教訓」

現在、市の防災部局のトップ・上戸理志市民安全部長です。水害後、隈之城川には県が水位計や監視カメラを設置しましたが、洪水予報や氾濫情報を伝える仕組みはできていません。4年前を教訓に、いざという時には県の動きを待たず、市独自で氾濫のおそれを発表するとしています。

（薩摩川内市市民安全部・上戸理志部長）「市民に影響を与えるような決壊・氾濫のおそれの情報についても市として情報提供していきたい。何より市民の命を守るのが我々に課せられたミッション」

（鹿児島大学・井村隆介准教授）「内水氾濫にあうというのはありうる」

水害後、現地をたびたび調査した鹿児島大学の井村隆介准教授です。田んぼを造成した場所にはさらに別のリスクもあると指摘します。

（鹿児島大学・井村隆介准教授）「日向灘の地震で被害が大きかった大崎町の役場周辺は、今回、液状化の被害。建物の浮き上がりとか盛り上がりとか、洪水のときに被害にあいやすい土地は、地震の揺れによって液状化の被害も受けやすい地域」

特定都市河川の説明会には、坪塚自治会の椨会長の姿もありました。隈之城地区が抱えるリスクを今後も伝えていきたい。決意を新たにしています。

（坪塚自治会・椨光徳会長）「よりよい隈之城になってくるのではないか。少しずつ（教訓を）話をしていく。がんばります」