「西郷でごわす」鹿児島弁で会話できる“AIせごどん”開発中 将来は学校、観光案内所にも? 開発した女性の思い 鹿児島
MBC南日本放送 / 2024年9月17日 20時4分
こちらの西郷隆盛、せごどんの肖像画。実は…
(AIせごどん)「さいごうでごわす。方言を好きになってくいやんせ」
今、開発が進められている、鹿児島弁を話すことができるという人工知能の「AIせごどん」です。「AIせごどん」の狙いとは?開発した女性を取材しました。
(AIせごどん)「ゆくさおじゃいやした」
鹿児島弁をしゃべるせごどん。しゃべりにあわせて顔や口も動いています。開発したのは…鹿児島大学で方言を研究する坂井美日准教授(37)です。
(坂井美日准教授)「リップシンクというソフトウェアを使い、音声に合わせて口と顔を動かしてみたもの。AIせごどんという名前をつけている」
この「AIせごどん」、今は決まった鹿児島弁しか話せませんが、今後はパソコンをつかって鹿児島弁で会話ができるコンテンツを目指しています。
鹿児島方言文化協会の協力で、鹿児島弁の音声データを集めながら開発中です。AIは専門外でしたが…。
(坂井美日准教授)「面白いなと思いながら、コード(プログラミング)も書けなかったが、今は独学で書くようになった。(AIせごどんは)方言のアクセントとイントネーションの再現を正確にするのが課題。研究チームを組んで工学部の人たちに協力してもらいながら作っている」
(記者)「このAIせごどんをみて、街の人はどのような反応をするのか?調べてみましょう」
(20代 鹿児島出身・京都在住)「すごい。鹿児島弁が普及していって、いいかもしれない」
(10代)「(AIせごどんをみて)なんて言っている?わからない。(祖父母の話が)わからないこともある。ゆっくり話してくれることも。(Q.それでもわからないことも?)たまにある」
Q.このようなツールがあるとどう?
(70代 5年前に福岡移住)「方言って大事だと思う。自分は鹿児島を誇りにして(福岡でも)鹿児島弁で話すが、本当の昔の鹿児島弁は話せない」
(80代 日置市出身)「(AIせごどんに)期待はするけど、知らないもん(若い人は)『はよせんか』といっても理解できない」
今では話せる人が減っているともいわれる鹿児島弁。坂井准教授がAIせごどんを開発したのは「将来、鹿児島弁が消えてしまうかもしれない」という危機感からでした。
(坂井美日准教授)「あと50年のうちになくなるであろうと言われている方言が多数ある。鹿児島もそのうちのひとつ。大学の授業で(AIせごどんを)扱っても、音声の意味が解る人は鹿児島出身でもほぼいない」
しかし、こうした“方言離れ”は、若い人たちの問題だけではないようです。
(80代 日置市出身)「小中学生の時は『標準語を使いましょう』と、方言をつかうと罰をもらいよった。そういう時代があった」
(坂井美日准教授)「鹿児島の話でいうと“方言札”が有名だが、高度経済成長期の教育において、学校で方言をしゃべった子どもに(札を首にかけ)罰する教育があった。どんどん言葉を封印させるということが、学校で行われてしまった歴史が」
熊本県出身の坂井准教授。もともと、方言研究の世界に飛び込んだきっかけは、認知症を患っていた亡き祖父との間のある“誤解”でした。
(坂井美日准教授)「祖父のお見舞いに行ったときに『みしらんね』と言われ、『お前なんかしらない』『知らない子ども』と言われたと思いショック受けた。(亡くなって)後日、『みしらんね』は『見違えるほど成長したね』という意味だと知った。(大学で)日本語の勉強をすると言いながら、おじいちゃんの言葉も分からないのはどうなのかと思い、方言を勉強するようになった」
方言を未来に残すために坂井准教授は、方言に親しんでもらうワークショップを開いています。
Q.鹿児島弁つかうことある?
(子ども)「ない」
ゲームやカルタづくりを通して鹿児島弁に触れた子どもたち。
(子ども)「(Q.ウシは?)べぶ?」
(坂井美日准教授)「どんどん方言がわかり、遊ぶうちに覚えて、成功体験を通して親しんでもらえたら」
方言を後世に受け継いでいくためのツールのひとつとして期待するのが、AIせごどんです。
(坂井美日准教授)「(方言の)継承をすすめるからには、言葉の壁を乗り越えるツールも同時に作っていかないといけない。小学校に提供して、西郷さんと方言で会話を楽しんだり、観光地でおすすめの場所を標準語で聞いて鹿児島弁で返してくれたりしたらいい。その先に(方言の)消滅を食い止めるアクションになるのではと願っている」
鹿児島弁がこれからも地域に愛され、受け継がれていくために。AIせごどんの開発は続きます。
(AIせごどん)「方言をみんなで未来につないでいきもんそ」
AIせごどんは、11月の「鹿児島県方言週間」までに完成を目指しているということです。
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