能登半島地震「被災地は今」 震災に豪雨…冬を前に再起した町唯一のスーパー「雪の孤立を覚悟で生きている」
MBC南日本放送 / 2024年12月11日 19時41分
北陸地方を襲った能登半島地震から間もなく1年です。ニューズナウでは、能登半島地震についてお伝えします。
先月中旬、石川県を取材しました。元日の地震だけではなく9月の豪雨災害、その爪痕が至るところに今も残っていました。
能登半島は、海や山に囲まれた半島であること、また、高齢者が多く住んでいる地域であること、この2つの要因が被害を大きくし、復旧の遅れにもつながっていると感じました。
今、能登の人たちは本格的な冬を前に、雪による孤立を覚悟して生活しています。被災地の今を取材しました。
1月1日午後4時10分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の地震が発生。震度7を石川県の輪島市や志賀町で観測しました。
石川県内では、全壊などの住宅被害が9万4910棟、住宅の下敷きなどにより228人が死亡。地震後に避難所などで亡くなった関連死は241人です。
(記者)「元日から11か月が過ぎ、7階建ての倒壊したビルもようやく解体作業が始まっています」
元日の地震で倒壊した7階建てのビルは先月から取り壊しが始まり、すぐ近くの輪島朝市も重機によって解体が進められていました。
そのすぐ近くで営業を再開した酒造会社があります。
創業112年の歴史を持つ日吉酒造店です。
Q.いつから営業再開した?
(日吉酒造 池田優美子さん)「5月の終わりに水が出始めて、少しずつ営業し始めた」
製造ラインは地震で壊滅的な被害を受けました。現在は北海道や広島にある別の酒造会社の施設を借りて日本酒をつくり続けています。
従業員の池田優美子(58)さんです。自宅で大きな揺れを感じ、500メートル離れた高台に走りました。
(池田優美子さん)「東日本大震災(を思い出し)海が近いから、『地震』=『津波』と以前から思っていたので、貴重品と重要なものだけ急ぎ取って逃げた」
能登半島地震では東日本大震災以来となる大津波警報が発表され、最大およそ5メートルの津波が沿岸を襲い、2人が亡くなりました。地震直後の火災で池田さんの自宅は全焼。現在、仮設住宅に暮らしています。
「先のことは当分考えられない」と言いながらも、活気に溢れていた輪島朝市の復旧を願っています。
(池田優美子さん)「災害に強い町づくりができればいいと思うし、また観光客が戻ってくればありがたい」
9月、被災地を再び災害が襲いました。輪島市では1時間に121ミリの猛烈な雨を観測。石川県で初めて大雨特別警報が発表され、15人が亡くなるなど豪雨災害となりました。
石川県によりますと、最大17地区・115か所の集落が孤立。地震や豪雨の爪痕は今も多くの道路に残ったままです。
(石川県危機対策課 大野昌人参事)「能登は地滑りが多い土地柄で、大雨が降って地震でゆるんだ地盤が、雨によって一気に流出したような形。地震が起因した大雨との二重災害、複合災害的な大被害になった」
町野町に唯一あるスーパーの3代目社長・本谷一知さん(47)です。地震があった元日以降、毎日欠かさず営業を続けていましたが…
(提供映像:本谷一知さん)「浸水してきました」
9月21日の豪雨で近くの川が氾濫。水はあっという間に店内に流れ込み、町は濁流に飲み込まれました。
地震と水害による被害総額はおよそ1億3000万円。2か月間休業し、スタッフやボランティアの協力を得て、先月11日から営業を再開しましたが、今も停電は続いています。
(本谷一知さん)「これ見てもらえばわかるが、客が勝手に書いてくれる」
店内に掲げられたのは、再建後の店のイメージです。買い物スペースのほか、工事関係者やボランティアの宿泊スペースを確保し、復興の拠点となる姿が描かれています。
(地元の住民)「ここを見た時、涙が出てどうしようかと思った。スーパーがなかったら食べていけない」
(本谷一知さん)「育ったこの場所にこだわる人がいるのと、のべ1000人ほど(のボランティアが)泥出ししてくれた。この場所で水害対策して、明かりを灯すことが私の責任の取り方だと思っている」
能登半島はこれから本格的な雪の時期を迎えます。今も通行止めの道路や雪を溶かす装置が断線しているところも多く、先行きが見えず不安を募らせています。
(本谷一知さん)「地震の前から雪が降れば孤立するが、それに輪をかけて今年の冬は特別な冬。孤立することを覚悟で、ほぼ100%孤立することをみんな想定して生きている」
輪島市によりますと、大雪警報が予想される場合などは早めの除雪を始めるとしていますが、それ以上の対策はないのが現状です。被災地は1年経った今も厳しい環境を突きつけられたままです。
(キャスター)被災者にとってこれから過酷な季節を迎えますね。
(記者)3週間ほど前の先月中旬に取材して、最も寒い日の最高気温は鹿児島市より10度低い8度。午後5時には日が暮れていました。寒さや日照時間の短さは、復旧作業や被災者の生活に大きな影響を与えていると実感しました。
自宅が全壊して家族3人を亡くした60代の女性は、「1年経った今も現実を受け止められない。“想定外”は起きるもので、鹿児島の人たちも最悪の事態に備えてほしい」と話していたのが印象的でした。
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