エスカレーター「２列で立ってたら怒鳴られたことが…」という人も なかなか根付かない『２列立ち』 実は『片側空け』を推奨した時代もあった

　エスカレーター、あなたはどのように利用していますか？鉄道各社などは安全のため「２列で」「立ち止まって」と呼びかけていますが、実際には立ち止まる人が片側を空け、歩く人が反対側を歩くことが多いのではないでしょうか。実態を調べてみました。

　大阪メトロ・本町駅。エスカレーターの様子を見てみると…右側の人は立ち止まり左側は空いている、いわゆる『片側空け』の状態です。そして、空いている左側を歩く人の姿が。中には、駆け上がっていく人も。利用者に聞くと…

　「立ち止まりますね、基本。『２列で行ってください』のエスカレーターに２列で立ってたら、後ろから来た歩いている人に怒鳴られたことは何回かありますね。『立ち止まるなや！』みたいな」
　「走るか歩くかどっちかですね。止まることはほぼないですね。（Ｑ『立ち止まって利用してください』というポスターが貼られているのは知っている？）知らないです、初めて聞いた」

　そもそもいつから片側空けで歩くようになったのか。１９７３年、国鉄・大阪駅にエスカレーターが設置されたときは、今と違って利用者は２列に並び立ち止まって乗っていました。

　変化が訪れたのはバブル時代。経済優先の風潮から「急いでいるビジネスマンに邪魔にならないように」と、鉄道会社が片側空けを推奨した時代があったのです。

　しかし、現在は安全のため各社とも２列で立ち止まって乗ることを呼びかけています。

　（Ｏｓａｋａ　Ｍｅｔｒｏ　原田雄生副管区駅長）「本町駅では、毎週水曜日ラッシュ時間帯に、お客様には立ち止まって２列でご利用いただくようお願いしています」

　そしてこんな動きも。名古屋市では去年１０月から、エスカレーターに立ち止まって乗ることを義務付ける条例（罰則なし）が施行されました。埼玉県に続き全国で２例目です。

　条例で変化はあったのか？取材した日、名古屋市営地下鉄の伏見駅では、ある実証実験が行われていました。今年２月に導入された「エスカレータ見守り君」。センサーとＡＩを用いて、利用者が歩いていたり、片側を空けていたりすると注意が呼びかけられます。

　（センサーを開発した来栖川電算　山口陽平さん）「『条例違反です』っていう言い方をしているので、結構強烈なワードだと思うんですよね。そういうワードが使えるか使えないかは少し効いてくるかなと。歩行が難しい人とか、お年寄りの方がエスカレーターで転落したりとかってあると思うので、そういうのをなくせたらいいなと思っています」

　来年度以降、各駅などに設置することを目指しているそう。利用者からは…

　「歩かないようにって放送でも言われているんで、基本的には止まって利用しています」
　「歩いていないですね。放送がかかるので、そういうことなんですねっていう」

　また、空いている片側に人が立ち、２列での利用を呼びかける「なごやか立ち止まり隊」という活動も行っています。

　条例施行後、変化はあったのでしょうか。市の調査によりますと、条例が施行される前には歩いたり走ったりする利用者の割合は２１．３％（２０２２年度）でしたが、条例が施行された後には７．３％（２０２３年度）まで減少したということです。

　（名古屋市スポーツ市民局・消費生活課　渡邉弥里課長補佐）「この条例は名古屋市民だけではなくて、名古屋市に遊びに来た人や、ビジネスで出張で来られた人、そういった方も対象になってきますので、こういうものが全国に広がっていくといいなと思っています」

　せっかちなＭＢＳ山中真アナウンサーが、フジテック・エスカレータ設計部の渡邉雅也さんに、気になったことを聞いてみました。

　（山中アナ）「技術的にはエスカレーターはどれくらいまで速くできるんですか？」
　（渡邉雅也さん）「分速３０ｍで動くのが標準です。ただ、最大で分速５０ｍまではできます」
　（山中アナ）「今まで分速３０ｍだったところを分速５０ｍにしたら『歩かなくても速いから歩くのやめましょう』というのはダメなんですか？」
　（渡邉雅也さん）「われわれとしては、お子さんや高齢者が安全に乗れるものを目指していますので、なかなか速くするというのは考えていない」

　大阪市・神戸市・京都市に聞いてみると、現時点で条例化の動きはないということですが、鉄道各社などは「歩かず立ち止まろう」キャンペーンを７月２２日～８月３１日に行います。

　一朝一夕では根付かない２列立ち。ちょっと立ち止まって考えてみませんか？