【全文】京アニ放火殺人事件 京都アニメーション社長のことば「生き様をどう引き継ぐのか、スタッフが目を真っ赤にして机に向かっていた」

５年前、京都アニメーション第１スタジオがガソリンで放火され、社員３６人が死亡、３２人が重軽傷を負いました。

殺人などの罪に問われた青葉真司被告（４６）は今年１月に死刑判決が言い渡され控訴しています。

現場のスタジオ跡地では、事件が起きた午前１０時半ごろから、遺族や関係者ら１４４人が出席して追悼式が行われています。

八田英明社長のことば、全文を紹介します。



本日は５年目の追悼式にご参列いただき御礼申し上げます。
５年目の節目にあたり一言ご挨拶申し上げます。

５年という月日は、あっという間に過ぎ去りましたが、ご家族の皆様にとって、さぞかしつらい日々をお過ごしのことと思います。

このような事件が起きてしまい、大事なご家族を守れなかったことは断腸の思いです。
まことに申し訳なく存じます。

私どももこの５年間、必死で過ごしていました。
作品をつくり続けることが皆の思いを引き継ぐことと強く胸に刺み、一歩一歩歩んでまいりました。

５年が経って、改めて振り返ってみて、３６人の仲間は当社を代表する、広い意味において日本を代表するクリエーターであり、将来確実にそうなるであろう仲間たちでした。
人間的にも魅力ある、そうそうたる人たちでした。

その仲間を亡くしたその時の無念さ、憤りは相当なものでした。
経営的には、会社を継続できるのか、相当な不安、懸念がありました。

ただ、会社を守り、彼ら彼女たちの生き様をどう引き継ぐのか、作品をどう繋げるのか、そういう一心でスタッフが目を真っ赤にして机に向かっていた様を思い出します。

５年の間に、３本のテレビシリーズ、６本の劇場映画を製作してきました。
直近では、皆とともに作ってきた大事な作品であります「響け！ユーフォニアム」シリーズの新作を公開しました。

昨年８月には「特別編響け！ユーフォニアム～アンサンブルコンテスト～」を劇場で公開、そして今年の４月には「響け！ユーフォニアム３」をテレビ放送したところ、大変ありがたいことに非常に多くの反響をいただきました。

吹奏楽にかける青春を描いた本シリーズの制作は、並大抵ではない相当な技術が要求されます。

みんなからの思いや技術を引き継いで、スタッフ一人ひとりが最大限の能力を発揮し、見事に作り上げてくれました。その情熱がご視聴いただいた方々に届いたことは、この上なく喜ばしいことでございます。

今後もみんなが遺してくれた志を胸に、作品をつくり続け、そして届けてまいります。

また、先日の７月１４日には、「志を繋ぐ碑」を宇治市に寄贈いたしました。
ご家族の皆様には、お力添えとご理解をいただき、まことにありがとうございます。

碑の建立にあたり、ここにおられますご家族代表の皆様には、慰霊碑建立委員会を始め、大変ご尽力をいただきましたこと、改めまして御礼申し上げます。

そのほか碑の建立に携わっていただいた関係者の皆様のお力添えをいただきまして、碑の建立を実現することができました。

「志を繋ぐ碑」が、多くの方々にとって想いを寄せる場所になりましたら幸いです。

「志を繋ぐ碑」に続きまして、ここ第１スタジオ跡地につきまして、慰霊碑や建物等、具体的に検討してまいります。
引き続きお力添えのほどよろしくお願いいたします。

改めまして、本日は追悼式に参列いただきありがとうございました。