「顔も腫れあがり、髪の毛もむしり取られていた」妹が殺され償いを求めた遺族 加害者へ賠償求めても全額払われず 相手の口座に残っていたのはたった"931円"「憎みたくなくても憎んでしまう...今の制度では」
MBSニュース / 2024年5月19日 19時40分
兵庫県尼崎市で行われた講演。会場の壇上には2人の人が座っていました。いずれも事件で最愛の家族を亡くした遺族です。その中にいたある男性。男性の名は稲田雄介さん。 (稲田雄介さん)「亡くなった後に見せてもらった最期の顔は何年たっても色あせないです。『絶対に加害者に、復讐、仕返しをしよう』と、かすむ目を何とかしてぬぐいながら、その写真をまじまじと見て考えていました」
2021年6月、大阪市北区でカラオケパブ「ごまちゃん」を経営していた稲田真優子さん(当時25)は店の常連客だった宮本浩志受刑者(58)に首や胸などを刃物で何度も突き刺され殺害されました。
突然起きた悲惨な事件。当時妹を失った悲しみに暮れる一方、裁判期間中の宮本受刑者の言動に苦しめられていました。1審で宮本受刑者は「被害者遺族の意図をくむなら、ぜひとも死刑を下していただきたい」などと身勝手な主張を展開しました。下された判決は懲役20年でした。
心を踏みにじられた雄介さんら家族。雄介さんは宮本受刑者に対して「損害賠償命令制度」でやり場のない怒りへの償いを求めます。この制度は刑事裁判の有罪判決後に、手続きに関与した裁判官のもとで審理が行われるものです。裁判所は宮本受刑者に約2980万円の賠償を命じました。
妹の最期は『顔が腫れあがり…髪の毛むしり取られたような状態』
18日、講演に立った雄介さん。事件で亡くなった後の妹の様子について話しました。
(稲田雄介さん)「最初は、遺体と会うにしても顔は布で覆われていて、中は包帯で巻いている状態。自分は亡くなった認識を持たないと前に進めないなと思って、1枚でもいいから亡くなった時の写真を見せてほしいと話をした。ただ刺されて亡くなっただけではなく、顔にも複数の暴行の跡があって腫れあがり、髪の毛もむしられている状態でした。刺されただけじゃなく、顎も刃物で皮膚をえぐり取られているような、カラスが猫の死体をついばんだような、そんな最期でした」
加害者に命じられるも賠償は全額支払われず
加害者に対して「許せない」。そんな思いを抱く中、受刑者に命じられた賠償金も全額、支払われていないと言います。
(稲田雄介さん)「損害賠償は2980万円と大きな金額をもらえた判決だったが、実際に判決が出てから約2年弱経つのですが、実際に払われているのは600万円のみでした」
賠償命令制度は刑事裁判の有罪判決確定後でないと実施できない制度です。そのため、遺族自身が相手の資力や資産などを調べるにもすぐには動けない現状についても話が及びました。
(稲田雄介さん)「まずはすぐに動けない、殺人事件の場合ですと裁判まで1年以上期間を要しますし、事実認定を要するまでに1年半はかかってしまう。いくら相手を恨めしい、憎いと思っても事実認定をされたあとでなければ、責任や賠償を求めることができない。相手に時間を与えてしまうということです」
『損害賠償で何とか少しでも償いをしてもらいたい』そう思っていた稲田さんが相手の資力などを調べると、口座にはわずかな金額しか残っていなかったということです。
(稲田雄介さん)「相手は持ち家がありましたが、1年半という期間があくと、その間に家を手放し、配偶者への財産分与もなされていた状態でした。そして口座には931円しか残っていませんでした。その931円が償いなのかなと。分相応ではないのかなと、憎みたくない人間でも憎んでしまうんですよね、今の制度ではどうしても」
「故人に思いはせる余力のある生活を送らせてもらいたい」
稲田さんは相手からの賠償金の未払い問題と向き合いながら、それ以上に事件で大切な人を失い、精神的にも辛い現状を次のように話しました。
(稲田雄介さん)「人の命を電卓ではじくことは僕はナンセンスだと思います。包括的に支えることが、この立場に立って思うのは必要だなと感じます。一番嫌だったのは、恨みつらみで目が曇ってしまって、故人との思い出が生活に忙殺されたり忙しくなって、薄れてしまうことなんです。せめて生活の立て直しができる、故人に思いをはせる、悲しめる余力のある生活を送らせてもらいたいなとこの立場に立って思います」
加害者の大半は賠償金を“踏み倒し”
日本弁護士連合会が2018年に行った調査では、加害者に賠償を求めたケースで、裁判などで認められた賠償額のうち実際に被害者に支払われた金額は、殺人事件で13.3%、強盗殺人事件で1.2%などとほとんど支払われていないのが現状です。
さらに判決から10年が経つと時効を迎えてしまうため、加害者側からの支払い義務がなくなってしまいます。そのため被害者は、加害者の逃げ得を阻止するためにも、再び裁判を行う必要があります。
稲田さんが所属する「犯罪被害補償を求める会」では国に対して賠償金の立て替え制度の創設を国に求めています。
この記事に関連するニュース
-
最愛の母を殺した死刑囚の父…葛藤の末に受け入れることを決めた息子「生きて罪を償い続けてほしい」
マイナビニュース / 2024年6月23日 6時0分
-
【速報】「弟の無念を晴らして」重度脳障がいの男性が死亡前日に自宅売却…契約書が偽造された疑い 遺族が不動産会社の社長を刑事告発
MBSニュース / 2024年6月21日 11時25分
-
「明日も生きていこうと思える制度に」犯罪被害補償の改革、歩みを止めるな
産経ニュース / 2024年6月17日 17時41分
-
【通園バス置き去り裁判】検察は元園長に禁錮2年6か月 当時の担任に禁錮1年求刑…両親は実刑求め結審(静岡地裁)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年6月13日 17時3分
-
「両親の責任はっきりさせる」神戸高2刺殺事件の遺族、被告と両親に損害賠償求め提訴
産経ニュース / 2024年6月12日 20時23分
ランキング
-
1「無法地帯の都知事選」"悪用する者"多発の必然 今回の選挙で"制度の穴"が浮き彫りになった
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 9時0分
-
2唐揚げ店の閉店ラッシュは「当然の結果」。飲食大手の参入が”悪手”だった理由
日刊SPA! / 2024年6月24日 8時52分
-
3《「ほぼ裸」ポスターや立候補しない女性格闘家も》都知事選の選挙ポスター問題 「おそろしい時代」「恥ずかしい」と嘆く大人に「あたおか」と笑う小学生たち
NEWSポストセブン / 2024年6月23日 16時15分
-
4身に覚えのない当選ハガキが届く… 名古屋のプレミアム付き商品券 「亡くなった妹の名前で」「名前が違う」など
CBCテレビ / 2024年6月24日 12時12分
-
5男性に車ぶつけ30m走行、殺人未遂容疑の男「有料のレジ袋を精算せず口論になった」…熊本市
読売新聞 / 2024年6月24日 9時8分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください