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「どこ行ったんよウチのばあちゃん!」家族はパニック『老人ホーム』突然閉鎖で入所者移動 突然解雇の職員も「社長ダメだって」記者の直撃取材に社長の説明は

MBSニュース / 2024年5月22日 12時16分

 ある日突然、兵庫県尼崎市にある老人ホームが閉鎖した。事前の説明はなく、急に放り出された入所者やその家族、そして突然解雇された職員たち。身勝手に閉鎖を断行した社長を記者が直撃取材した。

老人ホームが突然閉鎖 駆けつけるも『母親がいない』

 (中澤江身子さん)「何にもこの人ら考えてないねんなと思って、ほんまに腹が立ちました、あのときは。もうほんまモノ扱いですよ。ひどいなと思いました、もう本当に」
 (中澤與志一さん)「いまだに何の説明もないですから。なぜそういうふうな事態になったのかということがまず知りたいですよね」

 怒りの声をあげるのは兵庫県伊丹市に住む中澤江身子さん(59)・中澤與志一さん(59)夫婦。4月5日、母親の房子さん(86)が入所する老人ホームが突然閉鎖したとケアマネージャーから連絡が入った。

 (中澤江身子さん)「朝、主人からLINEがきて、えらいこっちゃ閉鎖や言うて、えー言うて」

 (中澤與志一さん)「何を冗談をおっしゃっているんですか?って、まず言いました。いや本当なんですっていうことで話を聞くと、今日中に施設から出てくれと言われていると」

 入所して1年ほどの出来事だった。その老人ホームは尼崎市にある。15年以上運営し、閉鎖前は約20人の高齢者などが入所していた。しかし、事前の説明は一切なく、突然閉鎖を告げられたという。中澤さんは急いで駆けつけたが現場は混乱状態だったという。

 (中澤江身子さん)「もうみんななんかちょっとパニクッていましたよね。パニクッてもう泣いている人もいたし。ばあさんがどこに行ったかがわからへんから、とりあえず探さなきゃと思って、もう行ったら施設を出ているんですよ。いないんですよ、そこに」

母親は何の説明もなく別の施設に

 中澤さんが母親の居場所を社長に問い詰めると…。

 (中澤江身子さん)「社長に『どこ行ったんよ、うちのばあちゃん』って言うたら、社長はあそこの施設ですって。そこやと思って今度ケアマネさんとかに連絡したら全然違う施設に行っていて」

 社長は入所者の移動先の施設すら把握していなかったという。中澤さんは別の施設に連れていかれた母親のもとに駆けつけた。

 (中澤江身子さん)「おばあちゃんの顔を見たときはホッとしました。あっおった…と思って。おばあちゃんも私の顔を見たら『江身子さん…』みたいな感じで言うから、おばあちゃん大丈夫やから捨てたんちゃうでとか言って。捨てられたと思いますよ、それはこれ私どこに行くんやろってなるでしょ」

 あまりにも突然だったため着の身着のままで、ほとんどの荷物は老人ホームに残ったままだった。すべての入所者は当日、何の説明もないまま出て行かされ、近隣の6~7施設に移された。ほとんどが数週間のみの緊急避難的な受け入れ。受け入れ先も突然のことに戸惑っていたという。

 (受け入れ施設の関係者)「2~3日前に突然10名以上を受け入れてくれと。従業員・家族にも伝えていないので口外しないでほしいと言われた。そんなことがあり得るのかと思った。ただ、入所者の行き場がなくなると言われたので、緊急で受け入れざるを得なかった」

職員らが社長を問い詰める『当時の音声』

 一体、老人ホームで何が起きていたのか。実は今回の閉鎖は社長が独断で決めていて、職員も寝耳に水だった。働いていた職員らが当時の様子をこう証言する。

 (施設の元職員)「施設に住まわれている方が何も説明もなく連れていかれるのは本当につらい。つらかったです。今もやっぱり会いたいですしね」
 (施設の元職員)「入所者が移動するときに挨拶をしたかったですし、これまでもいろんな対応をさせてもらったことに対してお礼も言いたかったです。そういうものもないままで途切れてしまったというのは、すごく残念であります」

 混乱する最中、職員らは社長に対して、順序をきちんと踏むべきだと怒ったという。そのときの音声が残っている。

 【やり取り音声】
 (職員)「社長、ダメだって。(入所者)本人にも説明していなくて何で連れて行かれるんですか。家族にも言わんと」
 (社長)「だから今から電話するって」
 (職員)「今からじゃダメ。利用者、準備できていないです」
 (社長)「だから、今から準備するって」
 (職員)「それはおかしいですよ」
 (職員)「利用者さん泣いていたじゃないですか」
 (社長)「申し訳ない」
 (職員)「申し訳ないと違って。順番踏んでからじゃないですか」

元職員の怒り「ペースメーカーが入っている人の大事な器具も置きっぱなしで…」

 被害を受けたのは入所者だけではない。30人ほどの職員に対して社長はその日の朝に一方的にこう告げた。

 【やり取り音声】
 (社長)「本日をもちまして当事業所を閉鎖させていただきます。皆さまにつきましては解雇というふうな形で対応をさせていただきたいと思っております」
 (職員)「こういうことになった理由は?」
 (社長)「経営難です」
 (職員)「経営難…」

 そして社長は職員に解雇通知書を渡したという。「経営上の都合から、事業を継続して行うことは困難」と記されている。職員らにとっては、入所者を突然移動させられ、まともな引き継ぎもできない状況だった。

 入所者を無視した社長のやり方に、元職員は怒りを隠せない。

 (施設の元職員)「物品やペースメーカーが入っている人の大事な器具とかも置きっぱなしで。知っているだけでも、新しい施設で骨折してしまって入院した、ベッドからずり落ちてケガをした、寝られなくなって認知症なので興奮して大声を出している。そんなんを一つも社長はわかっていないです。利用者さんを一番に考えて仕事をするっていうのは基本ですし、その人を裏切るなんてことは許されない。23人のおじいちゃんおばあちゃんが家をとられたのに、その経緯を説明せず、動くときにもなぜ説明しなかったのか。それを入所者の家族みんなに話してほしいです。謝罪してほしいです」

記者の直撃取材に社長の説明は

 なぜ閉鎖に至るまでに説明することができなかったのか。記者が社長を直撃取材した。

 (記者)「すみません、毎日放送なんですけれども。老人ホームの閉鎖の件で取材に…」
 (社長)「関係ない」
 (記者)「はい?」
 (社長)「関係ないしな」
 (記者)「関係ないとはどういうことですか?」
 (社長)「いやいや、何しに?」
 (記者)「社長ですよね?」
 (社長)「うん、社長やからって?」
 (記者)「突然閉鎖されて、入所者・ご家族がすごく困られている」
 (社長)「弁護士を通してください」
 (記者)「ご家族に説明がないということなんですけれども、どのように思っておられるんですか?」
 (社長)「だから弁護士を通してください」

 (記者)「従業員の方に対しても何も説明はない?きちんとご対応されるつもりはありますか?」
 (社長)「えっ、ちゃんと対応していますよ」
 (記者)「ご家族も何ら説明がないと言っているのですが、説明されないんですか?」
 (社長)「いやだから弁護士を通してください」

 社長は質問にほぼ答えることなく「弁護士を通してくれ」とだけ話して自転車で走り去った。

 老人ホームの代理人弁護士はMBSの取材に対して「事業所をしめて破産手続きを進めているところです。それ以外についてはコメントできません」とした。

専門家は制度の抜け穴を指摘「夜逃げ同然の逃げ得を見逃してしまう」

 こうした進め方に問題はないのか。介護現場の問題などに詳しい外岡潤弁護士は、現在の介護保険制度には抜け穴があると指摘する。

 (外岡潤弁護士)「やろうと思えばこういうことができてしまう。介護保険の制度の規制とかペナルティーというものは全部法人が存続することを前提としたものですから、言ってみればこういう夜逃げ同然の逃げ得を見逃してしまうみたいな制度に今なってしまっていると思うんですよね」

 現行の制度では違法性を問うことはできないため、入所者を守るためにも法改正すべきだとしている。

 (外岡潤弁護士)「破産して放り出してしまうみたいな事態を想定した規定ですとか、あるいは行政が破産で逃げ出してしまう前にちゃんとフォローできるような、早めに判明する仕組みをテコ入れしていくべきだと思います。人の命を預かっているわけですから、命や生活を何よりも優先しないといけないというものが本当は法的にも義務化されなければいけないなと」

 高齢者の命を預かる大切な仕事だからこそ、人をモノのように扱うことは決してあってはならない。

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