"余命1年半"からダンスに挑戦 『子宮頸がん』闘病中の女性が笑顔でステップ「来年もみんなと一緒に踊りたい」
MBSニュース / 2024年5月27日 12時18分
ステージⅢの子宮頸がんが判明し、その後、“余命1年半”を宣告された女性。苦しい治療に耐えながら挑戦しているのは『ズンバダンス』です。家族や仲間に支えられて迎えた発表会。病気の判明から今に至る心境を取材しました。
『子宮頸がん』判明で手術…「そばにずっといてください」「まだまだ生きられる」息子の手紙を“お守り”に
今年5月11日、ステージの上で、特別な思いでステップを踏むダンサーがいました。大阪府高槻市に住む森田真子さん(48)です。4年前、ステージⅢの子宮頸がんが判明しました。
森田は現在も3週間に1回、病院に通い、診察や治療を受けています。
(大阪医科薬科大学・婦人科 田中良道医師)「何かありました?しんどいとか」
(森田さん)「無事になんとか(治療が)終わりました」
がんと診断されたのは、2020年12月。
(森田真子さん)「それまでにずっと(不正)出血が非常に多くて、調子が悪かった」
森田さんは大学院卒業後、水道関係の大手メーカーで女性初の総合職で入社し、エンジニアとして働いていました。学生時代からの夢だった途上国の水道整備に携わるようになった頃、45歳の時に病気が分かりました。
仕事で活躍する一方で、家庭では2人の息子の母でした。子宮を全て摘出する手術のとき、当時、高校生と中学生だった息子たちから手紙をもらいました。
【長男の手紙より】『これからも絶対にそばにずっといてください。もう絶対にしんどくならない体になって元気でかえってきてください』
【次男の手紙より】『まだまだ生きられるから前向きに頑張って!ママなら大丈夫や!!!』
(森田真子さん)「息子が、“まだまだ生きられるよ”と言ってくれたのはすごくうれしかった」
優しい長男と前向きな次男の言葉をお守りに、手術を乗り越えました。
『余命1年半』がん移転で宣告…治療に向き合い2年が経過
しかし1年4か月後、子宮周辺の細胞にがんが転移。森田さんを再び病魔が襲います。
(夫 真一郎さん)「再発ってなった時はショックでしたね。こういう当たり前の生活が当たり前じゃなくなっていくのかなという不安はありました」
再発が分かり、治療方針の参考になればと、セカンドオピニオンを受けるために大阪市内の病院へ。そこで、残酷な現実を突きつけられました。
(森田真子さん)「余命がだいたい1年半くらいだと言われまして。残りの時間を考えて、あまりきつい治療はせずに、生活の質を上げた状態で残りの時間を過ごすのか、よく考えてみたらどうでしょうかということを言われました」
覚悟はしていたものの、「余命1年半」という具体的な数字に言葉を失いました。
主治医の田中良道医師は病気が分かってからずっと森田さんに寄り添い、治療を続けてきました。
(田中良道医師)「2年近く、抗がん剤治療、放射線治療、組織内治療をがんばっていただいている。これはなかなかできないことですね。ものすごく大変です」
余命の数字は一般的な値で、全員に当てはまるわけではないと強調します。
(田中良道医師)「(余命は)いろんな患者さんの、あくまで平均的な数値ですね。皆さんがそうなるということでは、もちろんないです」
再発から約2年。宣告された1年半の余命は超えました。明らかな腫瘍は見つかっていないといいます。
(森田真子さん)「(Q今はどのように“余命”というものを捉えていますか?)自分なりの統計をつくる。統計という言葉は、『集団の平均値』という意味ですけど、自分なりのデータを作っていきたいなと思っています」
闘病中の『ズンバダンス』挑戦 排尿器具を付けながら練習…“発表会に出られるのか”との不安も
また悪化するのではないかという不安を抱えながらも、森田さんはあえて挑戦していることがあります。それは、軽快な音楽に合わせて踊る「ズンバダンス」。フィットネスとしての効果も高く、世界中で幅広い年代に愛されています。練習の様子を見せてもらいました。
(インストラクター 笹島雅美さん)「はい、バラバラ!福島さん、森田さん、何人かズレてた。笑顔~!やり切りましょう、練習から。本番でできないからね、急にね」
先生の指導に熱が入るのには理由がありました。森田さんたちのチームは大きな発表会を控えていて、この日は本番前の最後の練習会でした。練習中、森田さんは少し休んでは、またすぐに輪の中に戻り、練習を続けていました。
軽やかに体を動かす森田さんですが、練習後半、何度か左足を気する場面がありました。
(森田真子さん)「排尿の器具を使っていて、足に管をつっているんです。バルーン(袋)に尿が溜まってくると足が動きにくかったり。もっと動けていたんですけど、ちょっと不便」
病気の影響で排尿ができなくなるおそれがあるため、直接体内から尿を袋に出す処置をしているのだといいます。今の体調を考えると、“発表会に出ることができるのか”そんな不安もありました。
「教えてもらった音楽を聴いて泣きながら帰った」がん患者の集いが“心の支え”に
森田さんの心の支えになっている場所がもう1つあります。大阪府高槻市にある、がんサロン「いまここ」。がんの患者らが1か月に一度集まり、治療法や悩みを共有しています。
20代でがんを発症したあと、子どもを産み、現在も闘病中という平田由起子さん(40)は、次のように話します。
(平田由起子さん)「日常生活で話すことがないので、がんだということとか、がんでどうしてるとか。モヤモヤをずっとずっと増やしながら生きているような感じで。ここに来たら全部浄化される」
治療法はがんの種類によって違います。薬や放射線、手術の方法など治療法が増え、患者本人に選択がゆだねられることもあります。そんな時、森田さんはここで意見を聞いたり、自分の考えを整理したりするといいます。
(森田さん)「私が抗がん剤治療をするのかすごく悩んでいたときに、平田さんが音楽を紹介してくれて、私はそれを聞きながら泣きながら帰ったのを覚えてる」
(平田さん)「あれいいですよね」
【Mrs. GREEN APPLE『ケセラセラ』より】
『限界? 上等 やってやろうか』
『不幸の矢が抜けない日でも All right All right』
『私を愛せるのは私だけ 生まれ変わるなら? 「また私だね」』
(平田さん)「不幸の矢、抜けへん~って」
(森田さん)「何回来るねんって」
「体が動くことに感謝。来年も一緒に踊ってたらいいな」
5月11日、ズンバの発表会本番。
(森田真子さん)「(Q練習の成果は?)まあ、なんとか。でも本番で緊張してできないかも…」
目標にしていた発表会の日を無事に迎えることができました。一つ目標を達成するとまた次、さらに次の目標をカレンダーに刻み、森田さんは治療に向き合ってきました。
約3分半、最後まで笑顔で踊り切りました。
(森田真子さん)「(本番に)出られると思ってはなかったので、正直。みんなに引っ張ってもらって、出ることができて良かった。この日にこんなに体が動くことが本当に感謝しかない。来年も一緒に踊ってたらいいなと思いながら、最後は踊ってました」
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