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銭湯を守るため立ち上がる『銭湯民族』京大銭湯サークルを部員0人→100人超に再興した3代目会長「深夜の活動」で京都の全銭湯を守りたい!

MBSニュース / 2024年5月29日 21時19分

 減り続ける銭湯を残したい!と立ち上がった「京大銭湯サークル」。100人以上が入会していて深夜に活動。その先には壮大な夢がありました。

 京都大学のすぐ近くで100年にわたり愛されている「東山湯温泉」(京都市左京区)。ビートルズマニアのご主人が営む銭湯で、地元住民や大学生らが足繁く通っています。

深夜に集結する『京大銭湯サークル』

 そんな東山湯で、営業が終了して最後のお客さんを見送った午前0時半すぎ、若者たちが集まり始めました。彼らが「京大銭湯サークル」。率いているのは3代目会長の竹林昂大さん(25)です。深夜の銭湯で何を始めるのでしょうか?

 (竹林さん)「お客さんもいなくなりましたので掃除を始めていきたいと思います」

 彼らの活動はなんと銭湯の掃除!

 (竹林さん)「適度に力を入れつつ小刻みに汚れをかき出すようなイメージで」

 会長・竹林さんの指導の下、全員で分担して蛇口やタイルを隅々まで磨きます。別の銭湯でアルバイトもしているという竹林さん、掃除は手慣れたものです。

我ら銭湯民族 銭湯愛が銭湯を救う

 (竹林さん)「本当に銭湯民族。銭湯大好き銭湯民族なんで」

 名古屋市出身の25歳。幼少期に家族がよく連れて行ってくれた銭湯が大好きになり、2年の浪人生活の末に念願の京都大学に入学した後も、銭湯通いをするために最終的に風呂無しの熊野寮に入りました。

 そんな竹林さんを中心に銭湯好きが集まるこのサークル。掃除中も銭湯トークが止まりません。

 (竹林さん)「銭湯に行くために(長野県の)塩尻に行ったん?」
 (メンバー)「はい、銭湯に行くためです」
 (竹林さん)「どれぐらいかかるの?電車で」
 (メンバー)「4時間半くらい」
 (竹林さん)「電車で4時間かけて銭湯入りに行ったん?」
 (メンバー)「はい、そうですね」
 (竹林さん)「銭湯民族やな~」
 (メンバー)「はい笑」

 それにしても竹林さん、良い筋肉ですね…何で鍛えたのですか?

 (竹林さん)「風呂掃除ですね。風呂掃除ってやってみたらわかるんですけど、思っていたより遥かにハードで、毎回風呂に入ってきたのかというくらい、びちゃびちゃに汗だくになるんですよ」

 銭湯の経営者が高齢化する中、特に体力が必要な掃除は、大きな負担になっているといいます。

 (東山湯温泉・店主 東山シローさん)「助けてもらっている。俺とカミさんはできない。膝が痛くて。掃除も綺麗にやるよ。あれはあいつ(竹林さん)の性格だろうなぁ」

 この春から東山湯で週2回の掃除を始めた京大銭湯サークル。ボランティアで労働力を提供することで銭湯存続の役に立ちたいと考えています。

部員0人からの再興 その勧誘手法は?

 そんな竹林さんの思いに賛同したメンバーは約10大学から100人以上!ですが…

 (竹林さん)「はっきり言っちゃうと完全に1回消滅しかけていて、メンバーが完全に0人になったところから、この春に再スタートを切っていまして」

 3年前に結成した京大銭湯サークルですが、コロナ禍で会員集めに苦戦して、今年3月に全員が卒業。そんなウワサを聞きつけてたった1人で入会したのが竹林さんでした。この短期間にどうやって復活させたのでしょうか?

 (竹林さん)「背中に“銭湯”って書いて、胸に温泉マークを自分で書いて、銭湯サークルどうですか?ってビラを配っていたら、人の目を集めることに成功して」

 そんな文字通り体を張った勧誘を見て、この春に100人以上のメンバーが入会したのです。

 (メンバー)「私の出身地にはあまり身近に銭湯が無くて。こんなに癒される空間があるんだなって思いました」
 (メンバー)「体験したことの無いことが体験できるというのは貴重かなと」

 いまどきの大学生にとって昔ながらの銭湯はむしろ新たなエンタメのような魅力的な場所なんだとか。

心を救ってくれた銭湯を守るため

 作業すること約1時間半、この日の掃除が終わりました。

 (竹林さん)「皆さん今日もお疲れさまでした!」
 (メンバー)「お疲れさまでした!」

 そして頑張った後には自分たちで磨いた東山湯の貸し切りです。

 (竹林さん)「一番風呂いただくわ俺!よいしょ!あぁ~気持ちいい!最高っすねやっぱり風呂は。銭湯って全員丸裸になって入るわけじゃないですか。そこには出自も仕事も、僕が浪人して留年していることも何も関係なく、バックグラウンドが一切関係なく、裸の状態で話ができる」

 そしてサークル活動を通じて目指す竹林さんの壮大な目標とは?入学2年目にコロナ禍が訪れた竹林さん。外出できずに塞ぎ込んでいたときに救ってくれたのが銭湯でした。

 (竹林さん)「こんなに快活そうに見える僕なんですけれど落ち込むこともあって。とりあえず風呂に行くか…と銭湯に行ったらいつもの顔ぶれがいて、そこでほっとして。なかなか勉強がうまくいかなくて…と言ったら、そんなこともあるだろみたいな。どうせお前は留年するんだから、え~ちょっと~、みたいな話をしながら。そこで心を救われた経験があって銭湯に恩を感じていて。そういったところで恩返しもできたらなということで。(京都では)毎年7軒くらいのペースで歴史ある銭湯がひとつひとつのれんを畳んでしまっている状況にあるんですよね。京大銭湯サークルでの清掃活動を通して、銭湯の掃除のノウハウを学んでくれた他大学のメンバーが、それぞれの大学に帰って独立して銭湯サークルを立ち上げてくれたら、京都市の全ての銭湯を網羅できるんじゃないかと」

 竹林さんの夢は京都中の大学に銭湯サークルを立ち上げ、全ての銭湯を守ることにありました。集合から2時間半が経った午前3時。

 (竹林さん)「お腹が空いている人がいたら一緒に牛丼でも食べに行きましょう。ありがとうございました!お疲れさまでした!」

 ひと仕事を終えた若者たちは夜明けが近づく京都の街に消えていきました。

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