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元横綱・白鵬に"恩返し" 横綱の夢を断念した24歳の元力士...第二の人生も舞台は「土俵」 日本文化を発信する『相撲ショー』に出演

MBSニュース / 2024年6月1日 15時36分

 新たなスター「大の里」の快挙に地元・石川は大いに沸くなど、盛り上がる相撲界。一方、大阪・なんばでは、“相撲ショー”に出演する元・大相撲の力士たちが観客を魅了しています。横綱になる夢を断念した後も、彼らが第二の人生の舞台として選んだのは「土俵」。新しいエンターテインメントの舞台裏に密着しました。

元・大相撲力士による“相撲ショー” 訪日外国人に向けて日本文化を発信

 去年12月、大阪府堺市の土俵では、“相撲ショー”を運営する「日楽座」のプロモーションビデオが撮影されていました。参加しているのは、元・大相撲力士です。

 ショーの発案者は、武田直樹さん。有名ライブレストラン「ビルボードライブ」も運営していて、そのノウハウを生かして日本文化を発信したいと、相撲ショーを考案しました。

 (阪神コンテンツリンク 日楽座開業プロジェクトチーム 武田直樹理事)「昨今、訪日外国人が多いですから、そういった方々に向けて、日本の文化を発信できるような、毎日見ていただける相撲のショーを立ち上げようとしています」

客席の1m先に土俵!?力士がぶつかる音を間近で体感

 今年3月中旬、武田さんは日楽座の開業予定地「なんばパークス」を視察に訪れました。前のテナントが撤退した直後で、まもなく工事が始まります。

 (武田直樹理事)「思ったより広い。天井も高い。土俵から1m下がったところにテーブルがあって、一番前の人が座って酒を飲みながらショーを見ることができると。この距離で力士がぶつかるのを聞くと、初めて見た人はびっくりすると思うんですよね。迫力がすごいので」

 大相撲なら関係者席にあたる場所に客席を設置。本来ならあり得ない“客席と土俵の近さ”など、エンターテインメントだからこそできるこだわりを詰めこみます。

土俵は『木枠・断熱材』で製作…「レストラン」として営業するための工夫

 視察から1か月。ホールの内装工事が本格化しました。組み立てているのは特製の土俵です。日楽座は「相撲レストラン」としての開業のため、衛生面や耐久性をクリアする工夫として、土を使わずに、木枠に断熱材を詰めて土俵を作ります。

 工事の進捗確認の日、土俵の感触を確かめるため、力士もやってきました。

 (元・伊勢ノ海部屋 菊池政彦さん)「ちゃんと土俵っすね。しっかりしてますね」

 土俵の表面に張ったシートは、できる限り本物に近い見た目や摩擦力のある素材を選びました。ショーを演出するための照明や音響設備も整ってきました。

 力士が裸足になって感触を確かめます。

 (元・陸奥部屋 岡本将之さん)「固てぇっす。動きが派手な子はきついかもしれない。足とか壊れるかもしれない」

 俵も床も本物より固め。慣れ親しんだ本土俵とは少し勝手が違います。

 (岡本将之さん)「これだけがっちりしていないと、土俵が壊れる可能性が高いので、そう考えるとこれでもできます」
 (菊池政彦さん)「これだけ音響とかもすごいので、音を響かせたり、いろいろ工夫して頑張りたいです」

“元横綱・白鵬が認めた”元力士も出演「もっとお客さんを沸かせたい」

 相撲ショーの出演者の1人、當眞嗣斗さん(24)。日楽座でのニックネームはGB(ジャイアント・ベイビー)です。5月に地元の沖縄から大阪にやってきたばかりで、他の出演者とシェアハウスをしています。

 (當眞嗣斗さん)「(Qこのタオルは?)インターハイって書いてますね。思い出です」

 幼稚園児のころに小学生を倒し、幼いころから数々の大会で優勝を重ねてきた當眞さん。その強さは当時、横綱・白鵬の耳にも届きました。

 (當眞嗣斗さん)「『食事しないか』とお誘いがあって、そこからお食事に行って、『どうするんだ、お相撲さんになりたいのか』と聞かれて、『はい、横綱になりたいです』と」

 高校卒業後は念願の宮城野部屋に入門。順調に勝ち星を重ね、2020年の3月場所では三段目筆頭に。しかし、幕下入りまであとわずかのところで、困難に見舞われました。

 (當眞嗣斗さん)「糖尿病になったんですね。よくないことがあって、糖尿病になって、1か月入院したんですよ」

 さらに苦難が當眞さんを襲いました。椎間板へルニアを発症したのです。2021年11月、當眞さんは髷を落としました。

 (當眞嗣斗さん)「正直悔しいけど、(相撲を)やることができない。横綱にも謝りにいって、『期待に応えられなくてすみませんでした』と。『でもどこかで恩返しができるように頑張りたいと思っています』と伝えました」

 引退後は実家の居酒屋を手伝いながら子どもに相撲を教えていた當眞さんですが、突然、日楽座のスカウトが舞い込みました。

 (當眞嗣斗さん)「いきなり田代さん(所属事務所社長)から連絡が来たっすね。『やってみないか』と。それで、『やらせてください。20代前半、何でも突っ込んでいきます』と」

 6月からは1人暮らしの當眞さん。つかの間の集団生活を楽しんでいます。この日の昼食は焼きそば。日楽座のちゃんこ長、菊池さんが腕を振るいます。

 (當眞嗣斗さん)「(Q食事は足りますか?)足らします。ダイエット中なので。みんなに迷惑かけるので、動けなかったら。ちょっと頑張らないと」

 5月末のオープンに向け、稽古の日々が続きました。

 (當眞嗣斗さん)「(自分のニックネームが)『GB(ジャイアント・ベイビー)』なので、ちょっといたずらもあり、“きゃっきゃ”して。ビシっとやるところも見てほしい。そこは自分が演出するところなので、もっともっと煮詰めて、もっとお客さんを沸かせられるような動きをしたいなと思います」

初日は約160席が完売!外国人にも分かりやすく&楽しく相撲を紹介

 そして5月30日、ついに「THE SUMO HALL 日楽座 OSAKA」のオープンの日を迎えました。日楽座の生みの親、武田さんも立ち会います。

 (武田直樹理事)「いよいよですね。この日のためにやってきたので、無事迎えられてうれしいです」

 當眞さんも初回公演に出演します。

 (當眞嗣斗さん)「楽しみです。練習はしっかりしてきたので、それどおりにやって、けがしないように、たくさんの人を喜ばせられたらなぁと思います」

 午後5時、開場の時間です。日楽座にはショーを見ようと多くの外国人の姿が。初日の公演は見事完売し、約160席が観客で埋まりました。

 (円陣の掛け声)「今まで練習してきたものを全てちゃんと出して、お客さんを満足させて帰りましょう。それでは行きます!日楽座ファイト!」

 いよいよ出番です。ショーの初めは、神話の世界をイメージ。相撲になじみのない観客に向け、相撲の成り立ちをストーリー形式で表現します。

 2部は、お待ちかねの相撲ショーの始まりです。まずは技やルールをコミカルな動きや表情で初心者にもわかりやすく紹介します。

 當眞さん、チャーミングなしぐさで観客を沸かせます。

 本格的な取り組みもあれば…希望者を土俵に上げて勝負をする場面も。観客に楽しんでもらうため、全力でぶつかります。

外国人観光客「ずっと前から相撲を見たかった」「本当におもしろかった」

 記念すべき第一回公演は、大成功に終わりました。

 (カナダからの観光客)「実は、ずっと前から相撲の試合を見たいと思っていて、ようやくこの大阪で見るチャンスを手に入れました。本当に素晴らしかったです」

 (イギリスからの観光客)「本当におもしろかったです。このホリデーで最高の瞬間のひとつでした(Q相撲取りになる?)もしかしたら」

 初演を見届けた武田さんは…。

 (武田直樹理事)「ほっとしました。きょうはインバウンドの方がいっぱいいらっしゃって、皆さん喜んでおられるのが伝わってきました。僕もグッと熱くなったところです。もっとこうした方がいいとか、そういうお声もこれからいっぱい口コミなどでいただくと思いますので、どんどん変えられる部分は変えて、喜んでもらえるエンターテインメントを作っていきたいと思っています」

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