いまだ解決せず『鴨川ゴミ問題』..."夜の宴"で空き缶の放置やタバコのポイ捨て 「誰でも過ごしやすい街でありたい」学生と京都市が連携し新たに注意喚起の看板設置
MBSニュース / 2024年6月7日 11時42分
にぎわいを取り戻す京都。5月に納涼床が始まり、そして7月には祇園祭が開催されるなど今後も多くの人出が見込まれる中、鴨川の「ゴミ問題」に地元住民は憤っています。
「夜はすごい状態。片づけへん、持って帰らない」
京都市内を流れる「鴨川」。河川敷はジョギングをする人や等間隔で座るカップルらでにぎわい、地元の人だけでなく観光客にも親しまれています。しかし、鴨川で40年以上保全活動を続ける杉江貞昭さん(79)は次のように話します。
(鴨川を美しくする会 杉江貞昭さん)「夜となればすごい状態や。みんな飲み食いするやん。その場に置いて帰るっていうのがほとんどや。まずは片づけへん、持って帰らない」
河川敷に捨てられた大量のゴミ。ビールの空き缶やお菓子の袋などが周辺に捨てられているというのです。この日、回収したゴミは6kg以上にのぼりました。杉江さんは長年、鴨川の解決しないゴミ問題に頭を悩まされています。
緊急事態宣言中の宴会でも缶やゴミ袋が次々と投げ入れられる
2021年、コロナ禍で緊急事態宣言中の夜の鴨川では、感染リスクなどお構いなしでボトルを回し飲みする若い男女の姿も見られました。宴会場と化した夜の鴨川には、缶やゴミ袋が次々と投げ入れられていました。
(記者リポート)「人数は10人くらいでしょうか。全員酔っぱらっているように見えます。集団が帰ろうとしていますが、ゴミは置いたままですね。集めたゴミをそのまま置いて帰るようです」
夜の鴨川に集まる人々 ゴミを捨てた若者に取材班が直撃すると…
あれから3年。外国人観光客も戻った中、人から人へと“マナー違反の伝染が急加速”しているといいます。今年5月、取材班は鴨川へと向かいました。午後9時ごろ。晩ご飯を食べ終え、涼みに来たのでしょうか、少しずつ鴨川に人が増えてきました。
2時間後の午後11時すぎ。深夜の川沿いでは、歌を歌ったり楽器を弾いたりと自由に楽しむ人たちの姿が。すると、次の瞬間、男性が橋の上からタバコを捨てました。隣にいる友人も気にする様子はありません。さらに、男性が暗闇に隠れて壁を目の前にうつむいています。用を足しているのでしょうか。
そして、日付が変わった午前0時半ごろになると、酔いつぶれたのか、横たわる人に空き缶を蹴って遊び始める人も。終電が出たあとも『宴』は終わりません。その様子を確認していたところ…
(記者リポート)「あっ、投げました。男性が手に持っていた何かを投げました」
遠心力を利用しながら持っていたものを勢いよく川に投げ捨てています。取材班が直撃すると…
(記者)「今、何かを投げたの見たんですけど?」
(男性)「いや、ごめんなさい。知らないです」
(記者)「何か投げてましたけど?」
(男性)「知らないです」
(記者)「私たち見たんですけど?」
(男性)「ダメですね、酔っぱらってたんで。あとで取りに行きます」
すると、隣にいた男性が…
(隣にいた男性)「何の取材しているんですか?特に許可も取っていないじゃないですか。確かに彼が悪いことをしたのは前提なんですけど。あなたのマナーというか、一般的にどうなんですか?」
(記者)「鴨川にゴミを捨てるというのは…」
(隣にいた男性)「それは前提としているじゃないですか。それと別の話してて今、何で論点ずらしてるんですか?」
さらに、その直後、別のグループではゴミを放置する様子が。
(記者リポート)「空き缶を蹴っています。そして拾うことなく、そのまま立ち去ろうとしています」
(記者)「今、缶を蹴ってそのまま…」
(若者)「あーすみません。逃げろー!」
悪びれる様子もなく立ち去っていきました。その後も、『宴』は未明まで続きました。
対策として設置した「花を入れたプランター」は川に捨てられる
杉江さんたちもこうした状況に黙っているわけではありません。これまでに京都府や京都市と連携して数々の対策を進めてきました。第一の矢は「LEDライト」。周囲を明るくすることでゴミを捨てにくくする狙いがありましたが、むしろ、集まる人が増える結果に。
第二の矢は「花を入れたプランター」。段差部分に設置することで、座って飲食がしにくくなると考えましたが、2か月後には、何者かによって川に捨てられました。
そして、最終兵器は「監視カメラ」。常習犯がいれば警察へ届け出ることも考えていましたが、あまりの人の多さに取り締まりが追いつかない状況だといいます。
いくら対策をしても解決しないゴミ問題。この「いたちごっご」状態に杉江さんもやるせなさを隠しきれません。
(杉江貞昭さん)「もう、ちょっとこちらも疲れてきました。あー言えばこー言う感覚で。注意すると、『ここにゴミ箱作ってくれたらいいんだ』とか、勝手なことばっかり言い出す」
では、こうした状況を市はどう捉えているのでしょうか。京都市の松井孝治市長に聞きました。
(京都市 松井孝治市長)「我々としても、異常に観光地でゴミが散乱していると、来た人たちも地域住民も相互に不信感が高まりますから、行政でできることはできるだけやっていきたいと思っています。次の観光シーズン、祇園祭のときなどにも対応していかないといけない」
マナー問題の解決に向け「学生」が動き出す
そんな中、マナー問題の解決に向け、動き始めた人たちがいます。今年3月に設置された注意喚起の看板。京都女子大学の学生が行政と連携してつくったもので、誰でもわかるよう、英語やイラストで注意を呼びかけます。この日は看板の効果を検証するため、学生たちが自ら観光客に聞き取りをしていました。
(学生)「この看板は景観に合っていると思いますか?」
(観光客)「うーん、色みは合ってる」
(観光客)「とてもかわいい。サインはわかりやすい」
(学生)「京都らしさを感じますか?」
(観光客)「屋根の感じとか、そうだね」
(学生)「看板の意味は伝わりやすい?」
(観光客)「字の方ではわかりますけど、絵の方はわかりませんね」
聞き取った意見は今後、看板のあり方を考えるうえで役立てたいとしています。
(プロジェクトリーダーを担当 近藤優衣さん)「京都の街は誰でも過ごしやすい街でありたいなと思っています。若者たちが行政とともに街のために何ができるかということを、これからいろんな方がアイデア出していっていけたらなっていうふうに思います」
杉江さん「鴨川をみんなで守っていくんや」
「誰もが快適に過ごせる場」を目指して。40年以上鴨川の清掃に携わる杉江さんも思いは一緒です。
(杉江貞昭さん)「みんなが河川敷で物を食べたりするのも気持ちはわからんでもないけどね。鴨川をみんなで守っていくんやと、そういう気持ちで鴨川に来ていただきたいと、こう願っております」
これまでは『善意』で保たれてきた鴨川の環境。幼い頃に学んだ『来た時よりも美しく』という意識をみんなが持つべきではないでしょうか。
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