山あいにポツンと"町唯一のコンビニ" 一度は閉店も現店長がサラリーマンをやめて引き継ぐ「開いていてうれしいと言われて...ありがたいし頑張れる」
MBSニュース / 2024年6月18日 13時2分
山あいにポツンとあるコンビニエンスストア『Yショップやまよ 京都美山店』。京都府南丹市の美山町にある唯一のコンビニです。この地域ならではの商品も揃えていて、地元住民の暮らしを支えています。
鎌を販売!?京都府南丹市美山町にあるコンビニ
かやぶきの里で知られる京都府南丹市美山町。この町にちょっと変わったコンビニエンスストアがあります。
小さな店にはコンビニチェーンの定番商品はもちろん、町自慢の牛乳や美山産の卵を使ったサンドウィッチ。さらに、『美山生活の必需品!?』というポップとともに売られているのは「鎌」です。
(店長 中島和行さん)「田舎で美山で生活するには必要かなと思って、最近置きました。畑とか田んぼとかされる方もいる」
美山唯一のコンビニを定点観測しました。
午前6時45分。『Yショップやまよ 京都美山店』店長の中島和行さん(41)が店を開けます。
(中島和行店長)「(Qいつもこの時間に来る?)そうですね、この時間です。7時前か7時すぎにヤマザキの配送が来るので」
午前7時。店の開店と同時に、商品を載せたトラックが到着しました。パンやおにぎり、デザートなどを店内の棚に陳列していきます。中島さんのお母さんも店を手伝います。朝は、出勤前にお昼ごはんを買い求める客が訪れます。
(客)「(大阪の)堺から。美山の(工事)現場に行く。ずっと(店を)探していて、ここしかなかったから」
周りに商店はなく、ポツンとコンビニがあるだけ。このお店を頼ってくる客も多いそうです。
(中島和行店長)「美山の入口でもあるので、観光客の方も寄ってくださるし、住民の方も利用してくださる」
元サラリーマンが店をつなぐ「なくすとだめという思いで」
このコンビニがオープンしたのは27年前。長く地元で親しまれてきましたが、去年、前の店長だった男性が病気になり、店を閉めました。買い物に困るようになった住民。再開を待ち望む声を聞いた中島さんは、サラリーマンをやめて店を引き継ぎ、今年4月、再びオープンしました。
(中島和行店長)「ないと不便やなというのと、そういう声もたくさんあったし。子どもも小さいので、この先ずっとここで住んで暮らしていくなら、なくすとだめな店だなという思いで始めました」
再開にあたって地元のニーズに合ったものを並べる工夫をしました。
(中島和行店長)「田舎なので周りにお店が少ないので、冷凍食品を置いたり。これは、町の方はわからないと思うんですけど、田んぼに水を入れるときに、溝から田んぼに水を入れたり止めたりする道具です。どこにもあまり売っていなくて、田んぼされている方がすごく困っていて、『ぜひほしい』という声があって、10個くらい売れています」
宣伝担当「のりちゃん」がインスタで紹介する大人気商品『豆いっぱい大福』
午前11時30分。ある女性が店に入ってきました。お昼間、店を手伝ってくれる従業員の鈴木紀子さんです。夕方まで、店は“のりちゃん”に任せ、中島さんとお母さんは休憩します。
話し上手なのりちゃん、客と会話が弾みます。
(客)「(Q何を話していた?)美山のすばらしさを共感し合っていました。僕は奈良の天理から来ました。すごく自然も豊かでみんな感動しっぱなし」
(鈴木紀子さん)「ぜひまた来てください。私の友達も天理に住んでいる」
客との距離が近くなるのも田舎のコンビニならでは。
のりちゃんは店の宣伝担当でもあります。おすすめの商品は『豆いっぱい大福(150円・税込み)』。4月は1か月間で1350個も売れたそうです。
(鈴木紀子さん)「『豆いっぱい大福』ということで、いったい豆が何個入っているのかということで、豆を取り除いて何個入っているのかを数える動画を撮影しました」
その様子は店のインスタグラムにアップ。ひとつひとつ豆をとって並べると、1つの大福から、なんと41個も。
(鈴木紀子さん)「この値段(150円・税込み)で41個入っているのはすごいなと感激しました。たまに仕事終わりにこそっと買って、(子どもの)お迎えに行く前にパクっと口にほおりこんで。夫にも内緒です」
午後3時30分。バイクに乗った2人の客が来店しました。のりちゃんおすすめの大福を手に取り、店の休憩スペースへ。ツーリングの時に何度か立ち寄ったことがあるということです。
(客)「(Qいつも大福を食べる?)大福は好きですね。ずっしりしておいしいんで。オートバイで来る時にちょっと寄らせてもらっていたんやけど、(店が)なくなってしまったんで、『あぁなくなったんや』と思って寂しかったんですけどね。きょう見たら復活しているんでよかったなと」
美山の風景にほれ込み「住むなら美山に」と移住を決めた琴美さん
午後4時。明るい声の女性が店にやってきました。
(鈴木紀子さん)「(Qこちらの女性は?)中島琴美さんです。店長さんの奥さんです」
夫が戻るまで店を手伝います。すると、店の外から琴美さんに手を振る男性がいます。琴美さんもすかさず男性に手を振り返しました。
(男性)「(Qいつも来られる?)最近ね。毎日くらい。コーヒーとかジュース、お弁当、大福」
(琴美さん)「だいたい冗談を言ってくれて、私ら笑わせてもらって。そして帰る感じです」
琴美さんは兵庫県出身。12年前、ひとりで美山に移住してきました。
(琴美さん)「いろんな田舎見たんですけど、ここは特別にきれいな、草刈もきれいにしてはるし、いい田舎やなと思って、住むならここの田舎と思って仕事を探して、家も探してここに住むことにして」
緑映える風景にほれ込んだ琴美さん。美山出身の夫・和行さんとはまちづくりを考える交流会で知り合い、結婚。地元の神社で式を挙げました。
(琴美さん)「美山のことは夫もすごく好きなので、そのためにコンビニも地域の人のためにと思ってやっている感じなので」
美山を愛する夫婦。琴美さんは4人の子どもを育てるママになりました。
前店長も中島さん家族を気にかける
午後5時半。店に男性が入ってきました。休憩を終えた店長の中島さんが出迎えます。
(中島和行店長)「前のオーナーの覗渕(義洋)さんです」
(前店長 覗渕義洋さん)「(Q昔からの知り合い?)近所ですからね。お母さんも私の店で働いてもらっていたので、この人なら安心できるだろうということで」
昔からよく知る間柄。店を引き継いでくれた中島さんの家族を気にかけているそうです。
(中島和行店長)「オープンして最初の定休日に、8時くらいにびっくりして電話くれた。『きょう開いてないけど大丈夫か、病気してないか』と、心配してくれて。『きょう定休日なんです』と」
(覗渕義洋さん)「(家族で)ちゃんとローテーション組んでやってもらって。組めることが素晴らしいですよね」
大阪から美山に移住した男性「ぜいたくな暮らしよ」
午後7時。店内では、中島店長と男性が親しげに話しています。
(客)「友達、友達」
(中島店長)「移住者ではあるんですが、もう20年?」
(客)「21年」
大阪から移住して美山で養鶏場を経営している男性。男性が作った鶏肉はこの店でも販売しています。
(客)「(Q美山の生活は?)ぜいたくな暮らしよ。僕の場合だと自分の好きなもの作って食べて。肉と交換でお野菜をいっぱいもらえて。(Q物々交換?)そうそうそう」
そして、辺りは真っ暗になりました。ポツンと店の明かりが灯ります。午後8時閉店。13時間の営業が終わりました。
(中島和行店長)「『開いていてうれしい』とか『やってもらってありがとう』という声をたくさん聞いているので、こっちもありがたいです。みんなで頑張ってやろうかなというのはありますね」
バトンをつないだ小さなコンビニ。住民の暮らしを支えています。
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