万博無料招待に揺れる学校現場「トイレは?」「混雑状況は?」現役教員たちが夢洲へ...爆発事故現場を見て懸念も「安心して連れていきたい」
MBSニュース / 2024年6月20日 12時18分
大阪府内の小・中・高校生らは大阪・関西万博へ無料で招待される予定で、来年の校外学習の行き先になるかもしれません。普段の校外学習で先生たちは何に気を付けて準備しているのか、万博に生徒を連れていくことにどんな不安を感じているのか…。学校現場の声を取材しました。
中学2年生の校外学習に密着
6月13日、大阪市立市岡東中学校で2年生の校外学習が行われました。松井翔介教諭(30)。2年学年主任として校外学習を取り仕切ります。行き先は奈良。一日乗車券を駆使して午後3時半までに学校に戻るのがルールです。体育館に集まった生徒らの後ろで、先生は最後の打ち合わせを進めていました。
(教員)「15人欠席なので約100人です」
(松井教諭)「15人も欠席しています?」
(教員)「欠席者は今LINE送りました」
午前8時半すぎ、校外学習が始まりました。
生徒たちは7、8人の班に分かれて東大寺や春日大社、唐招提寺などを自由に回ります。昼食は登大路園地で食べて、途中、商店街で食べ歩きもします。松井教諭を含めた8人の先生が東大寺や近鉄奈良駅などに分かれて生徒の動きをチェックして、LINEで逐一情報を共有します。
「吐きそうな生徒が」「一日乗車券を無くした」
約1時間かけて奈良に到着した生徒たち。しかし、さっそくアクシデントが起きました。
(松井教諭)「さっき吐きそうな生徒がいてて、その子が駅の中でトイレに行っているらしい」
生徒の様子が気になる中、またしてもアクシデントが。
(教員)「カード(一日乗車券)無くしたって」
(松井教諭)「え?もうええって…」
(教員)「バス停かな、山本先生がバス停に行ってくれてはる」
どうするべきか考えていた矢先…。
(教員)「(一日乗車券)あったって!」
(松井教諭)「もうええって!」
校外学習は下見が重要「子どもらを連れて行く責任がある」
対応を終えた松井教諭は登大路園地に先回りして生徒がやってくるのを待ちます。松井教諭はこの場所を一度、下見したといいます。
(松井教諭)「人に迷惑がかからないのが大前提で、あとはちょっとでも屋根、雨を防げるところとか、トイレも普通にあるので大丈夫ですし」
ただ、下見したとしても予測できないことがあるといいます。
(松井教諭)「人の多さを読めないというのが一番心配やったので。ゴールデンウィークの時に下見に来て、これくらいやったら平日の昼間は余裕かなと思っていたんですけど、どこがいつ校外学習するかわからないので。今見て多いなと思いました」
午前11時、早めに昼食を取る班が続々と松井教諭のもとにやってきました。生徒たちが自由に動く校外学習は「翌年の修学旅行を見据えている」と松井教諭は話します。
(松井教諭)「知らない土地に行って自分たちの初めて見るところでも、ちゃんとルールとか日頃の学校生活の行いをそのまま発揮できるようにというのを目標にやらしてもらっているので」
授業だけでは身につかない学びを生徒たちに最大限、得てもらいたい。だからこそ下見が重要なのだと話します。
(松井教諭)「(Q校外学習では下見は絶対必要?)そうですね。ゼロで行くことは絶対に無いと思うので。必ず子どもらを連れて行く責任はあるので、生徒の安全を確認するためにも下見は必ずします」
「全員で安全に帰ってこられたのがすごく良かった」
午後、生徒たちが食べ歩きを楽しむ中、松井教諭は一足早く学校に戻り、生徒らを出迎える準備です。目標の午後3時半までに全ての班が学校に戻ってきました。
(生徒たちに話す松井教諭)「離脱する人もいなくて、最後全員で安全に帰ってこられたのがすごく良かったかなと思います」
来年の校外学習先は万博?現場ならではの懸念
こうした校外学習、来年の行き先になるかもしれないのが、大阪・関西万博です。
(大阪府 吉村洋文知事 去年8月30日)「今の子どもたちが将来の未来社会を作っていくわけなので、ぜひその子どもたちに肌で万博、そして未来社会に触れてもらいたい」
大阪府では、府内の小・中・高校生らを校外学習などのために万博に無料で招待することにしています。
ただ、今年3月に会場の建設現場で発生したガス爆発事故を受け、教職員組合などから安全性を疑問視する声も上がっています。
子どもたちのためになるように万博での校外学習を実りあるものにしたいと考える現役教諭らのグループ「おまかせHR研究会」。万博には賛成でも反対でもないとしたうえで、府に対して「児童や生徒の学びと安全を保障してほしい」などとする声明を発表しています。
グループは府議会・大阪市議会に陳情を出し、今後請願も出すことにしていて、5月22日に行われた内容を話し合う会議では、現場ならではの懸念の声が寄せられました。
(中学教諭)「会場内は現金使えないんですよね、キャッシュレス。だから中学生はスマートフォンを持っていけない時点で、何か途中で水分ほしいとか何か買いたいと言っても買えない。ほんまに熱中症で水分足りなくなったら、教師のPayPayで水分買って渡すのかな?」
(中学教諭)「そうなるでしょうね、緊急事態やったら。水筒何本も持っていけないし」
(高校教諭)「見るパビリオンが決まっていたらどういう学習をしてそこに行くか考えていきますよね。でも中を見せてもらえなかったら何を学んでいったらいいのか…」
議論が行き詰まったメンバーたち、思い切って夢洲に行くことを決めました。
夢洲に着いてさっそく疑問「どこにトイレがあるかわからない」
会議から約2週間後。実際の下見さながら資料を用意するなど気合は十分です。いざ、夢洲へと向かいます。
夢洲に到着した一行、さっそく気になるポイントがありました。
(高校教諭)「どこにトイレがあるか分からないよね」
(中学教諭)「トイレどころか…」
(高校教諭)「会場に入らないとトイレが無いかもしれないですね、最悪」
(高校教諭)「入らないとトイレ無いは無理やな」
(中学教諭)「外にトイレほしいね」
また、集合場所となるであろうエントランス部分を見て…。
(高校教諭)「ここに入れるのはぎゅうぎゅうに詰めても3000人くらいやから、3校」
(高校教諭)「ここに学校の生徒が3000人ぎゅうぎゅうに入ったら一般の人はどうやって入るの?」
(高校教諭)「ほんまですね」
「不安要素を1つでも削りたい…事前に知りたいし勉強したい」
その後、大阪府咲洲庁舎の展望台から万博会場を眺めます。下からは見られなかった爆発事故が起きたエリアを望遠鏡で確認します。
(中学教諭)「きょうここに来てみて、爆発事故があそこであって、その近くの休憩所は心証として保護者の方は『そこで休憩するのは大丈夫なんですか』とか。『それやったらうちの子連れていきません』と言う方も出てきそうな懸念はありますね」
上からも下からも夢洲を視察したメンバー。万博が子どもたちの学びにつながると感じたからこそ、少しでも早く万博に関する情報がほしいと訴えます。
(中学教諭)「完成したら子どもたちも感動するだろうし、何も知らずに見ると中学生はわからないので、事前学習もしたい。連れていくのであれば教育的に意義あるものにしたいというのが私たちのスタンスなので」
(高校教諭)「安心して連れていきたいし、不安要素を1つでも削りたいというのが事実で。事前に私たちも知りたいし勉強したいなと」
万博で子どもたちに未来の姿を安心して見せるためにも、行政には学校現場の不安の声に1つ1つ向き合う姿勢が求められています。
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