退職金や実母の貯金など4200万円を振り込む「優しい言葉で心の隙間に入られた」 好意を抱いた相手から"投資話"...被害者が語る『SNS型ロマンス詐欺』の実態
MBSニュース / 2024年7月5日 13時5分
新紙幣の発行に便乗した「詐欺」にご注意ください。すでに高齢者が現金をだまし取られる被害が出ています。そして現在、急増しているというのが『SNS型ロマンス詐欺』です。自分自身、そして家族を守るために知っておきたい、詐欺をめぐる情報をまとめました。
「旧紙幣は使えない」「ニセ札が紛れたかも」こんなワードにご用心!
「旧紙幣が使えなくなります」この言葉が出たら詐欺です。例えば、銀行員を名乗る人物が家にやってきて「お手元の紙幣をちょっと出してもらえますか?古いお札は使えなくなるので新しいお札に交換します」と言われてお金を渡してしまったら、そのままだまし取られる可能性があります。新紙幣が発行されても旧紙幣は使えるため、このような言葉には注意してください。
また、「キャッシュカードも新しくしないとダメなんです」こういった言葉にも要注意です。「銀行法の改正で古いものは使えなくなります。新しいカードが来るまで封筒に入れて保管しておきましょうか?」と言われて封筒に入れた後、「手続き上、実印が必要なので取ってきてほしい」とお願いされて実印を取ってくるためその場を離れた隙に別の封筒とすり替えられ、キャッシュカードを奪われるという可能性があります。銀行法は改正されていません。キャッシュカードはそのまま使えます。こういったことを言う人が突然現れたら怪しんでください。
さらに、「ニセ札が紛れた可能性があります」という言葉にも気をつけてください。例えば「○○警察です。あなたの口座がマネーロンダリングに利用されています」「犯罪グループが利用したその口座から引き出した現金にはニセ札が紛れているかもしれないので、一旦回収します」そう連絡があるかもしれません。しかし、警察が直接「お金を一旦預かります」ということはありません。また、仮に皆さんの口座に何か犯罪組織がアプローチをしたとしても、引き出したお金にニセ札が紛れているということにはなりません。
そして、全国銀行協会や金融庁といった組織を名乗る電話などには注意をしてください。一般社団法人・詐欺防止ネットワークの松田俊也代表理事によりますと、基本的にこの2つの組織が一般の家庭に直接来たり電話したりはしないので、だまされないよう気をつけてほしいということです。
「ロマンス詐欺」で4200万円被害 知り合ったきっかけはDM…メッセージのやり取りを繰り返し好意・信頼
今、詐欺の1つで、恋愛感情につけ込み心を弄ぶロマンス詐欺が急増しています。4200万円をだまし取られたという62歳のAさん(独身)に今回、被害の体験談を聞きました。
Aさんは去年8月にインスタグラムを開始。すると、“ある52歳の男性”からダイレクトメッセージが届きました。送り主は、母は日本人で父がアメリカ人だというケビン(自称)。世界的IT企業勤務のアメリカ人で、東京支社に3年の予定で赴任しているということでした。
Aさんはこの人物とメッセージのやり取りを何度も繰り返すうちにどんどん引き込まれていきました。富裕層らしい食事やニセの免許証の写真なども見せられ、信用してしまったといいます。実際のやり取りを見せてもらうと、Aさんが送った「仕事に行ってきます」というメッセージには「暖かくしてください。外は風が強くて寒いです」という返信が。
(Aさん)「心の中の隙間にすっと入ってこられた気がします。すごく優しい言葉で…。『一緒に家庭を築いていこう』という言葉があった。そういうことを言われることが自分にはうれしかったのかもしれません」
やり取りを始めてから2週間後、この人物は投資話を持ちかけてきました。「お金を増やすのにいい方法がある。自分も投資でお金を増やしているので、やり方を教えるよ」といった入りだったということです。すっかり信頼しきっていたAさんは指定された専用のアプリをインストール。最初に投資した額は10万円でした。
その後、お金が増えていると信じてしまい、退職金(約2000万円)、自身の貯金(約1000万円)、実母の貯金(約1000万円)、消費者金融からも約150万円お金を借りたといいます。振り込んだその総額は約4200万円でした。
(Aさん)「(Qおかしいと気づくきっかけは?)息子に連絡したら、『詐欺ちゃうん』『警察を呼ぼう』と言われて」
お金が足りなくなって息子に連絡をした際に息子から指摘を受け、ようやく詐欺だと気づいたといいます。
(Aさん)「信用してしまっているんですね。だから周りが何を言っても自分たちの世界の中で、だまされようが何をしようがストップがきかなくなってしまうんですね。思い出したらすごく暗い気持ちになりますし、しんどいです」
Aさんはアプリにどんどんお金を入れている間、自分の資産が増えていると思っていました。また、ケビンと名乗るこの人物に好意を持っていたので、全く疑うことはなかったということです。今までの人生でかけられたことのないような優しい言葉をかけてくれて、自分の体調を気遣ってくれた、本当にありがとうと思っていた、と。しかし、「今振り返ると、心の隙間にすっと入ってくる恐ろしさがあった」と話します。
息子が警察に相談した結果、警察には「被害届を出したとしても犯人を探し出すことは無理。お金は戻ってこない」と言われたということです。
被害者の傾向は?接触に使うツールは?
こうしたSNS型ロマンス詐欺の被害は拡大しています。警察庁の資料によりますと、今年1月~5月だけで認知件数は1148件、被害額は約117.9億円です。ともに前年の同じ時期と比べてほぼ倍増しています。被害者の判断が悪かった、被害者がだまされやすいということではなく、手口が巧妙化して被害者が増えてしまっているのです。
被害者の男女比は男性61%・女性39%で男性の方が多く、年齢層は男性では60代が最多、女性では40代が最多となっています。
そして手口です。当初の接触ツールとしては「マッチングアプリ」が男女ともに一番多いです。フェイスブックやインスタグラムも割合が高くなっています。ただ、被害時には92%が「LINE」を使ってやり取りをしているということです。
SNSをめぐっては、“ニセモノ”にも注意が必要です。例えば、MBSの大吉洋平アナウンサーはフェイスブックをやっていませんが、本人を装ったニセのアカウントが存在します。投稿には大吉アナが会社のブログやインスタグラムに投稿した画像が使われていて、一見、本物のアカウントのように見えます。実は、このフェイスブックのアカウントから“友達”の申請をされたりラインを聞かれたりした人たちから「本人ですか?」という問い合わせがいくつかあり、判明しました。大吉アナはプラットフォーム側に会社を通して削除のリクエストをしていますが、削除されていません。
どんなに信頼する相手でも“お金の話”が出たら警戒を
近年はロマンス詐欺と投資詐欺が一体化したものが増えてきています。亀井正貴弁護士によりますと、以前は「私にお金を送って」が多かったのが、最近は「投資しない?」と声をかける、一体型になったものが多いということです。また、投資詐欺は立件が難しいとされます。それは、「まったく架空の話」と立証する必要があることに加えて、被害が非常に多いため警察が全てに対応するのが実質難しく、被害者の半分以上は泣き寝入りするということです。『組織的犯罪』『被害額が非常に大きい』『証拠がそろっている』といった場合は警察が動く可能性もありますが、全てには対応できないということです。
詐欺にあわないためにはどうすればよいのか。一般社団法人・詐欺防止ネットワークの松田俊也代表理事は「どんなに好きな相手でも“お金の話”が出たら、『おや?』と思ってください」とコメントしています。
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