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1枚150円!77歳の店主が焼く『おもひで焼』 京都で40年以上愛されるお好み焼き店と"おばちゃん"は「唯一無二の存在」「安心して過ごせる場所」

MBSニュース / 2024年7月15日 13時25分

 店主は77歳。優しくてかわいらしい“お好み焼きのおばちゃん”が焼くのが名物「おもひで焼」。その値段はなんと1枚150円!京都で44年間愛され続ける人情お好み焼き店を定点観測しました。

店は北野天満宮のすぐ近く 観光した外国人客もよく訪れる

 7月7日、七夕の午前10時50分、店に暖簾がかけられました。開店時間は午前11時30分。だけど、この日は少し早めにオープンです。

 お好み焼き店「ちっちゃなおもひで」があるのは、学問の神様・菅原道真を祀る北野天満宮から歩いて45秒。観光客の利用も多い、バス停のすぐ横です。店主の裕子さん(77)は40年以上、「お好み焼きのおばちゃん」として親しまれています。開店してまもなく、1組目のお客さんが来ました。

 (裕子さん)「日本の人?」
 (客)「台湾!」
 (裕子さん)「シェイシェイ!台湾、メニーメニー!じゃあここマネー入れといて」
 (客)「はい、お願いします!」
 (裕子さん)「お釣り、はい!シェイシェイ!」

 最近は、北野天満宮を観光した外国人客もよく訪れるそうです。コミュニケーションも慣れたものです。

 (裕子さん)「割りばし割っといてあげるわな、チョップスティック!」

 お好み焼きは初めてという2人。そのお味は…

 (客)「おいしい!」

 「おもひで焼」が、京都のいい思い出になったらいいな。

150円の価格につられて来店「汗かきながら食べるの、おいしいですね」

 続いてやってきたのは…

 (裕子さん)「初めて?」
 (客)「はい、初めて」
 (裕子さん)「私、もうこれ44年してんねん、生まれてはるやろ?」
 (客)「私、京都に単身赴任中なんです、千葉から」
 (裕子さん)「単身赴任の人、よう来はるえ。よう来はるわ~」

 千葉からの単身赴任で京都に住んでいるというこのお客さん。北野天満宮へ行く途中、店の看板を偶然見つけたということです。

 (客)「あー暑い!いただきます。…おいしい!ちょっとビックリしましたよね、150円って。やっぱり暑いときこそ、素麺とか冷たいおそばだけじゃなくて、こういうもの食べないと、体力つかないと思いますよ。汗かきながら食べるの、おいしいですね。これからしょっちゅう来ますね!」

2年前まで1枚100円…お客さんに心配されて150円に値上げ

 店をオープンしたのは1980年、裕子さんが33歳のときでした。もともと3歳の頃から両親と住んでいた実家で、立地の良さから「店として貸してほしい」という引き合いが多く、「それなら自分で」と一念発起。飲食未経験からスタートしました。

 (裕子さん)「これは私が小さいときに『べた焼き』言うて食べたものなんや。(材料は)メリケン粉・粉がつお・キャベツ・ネギ・天かす・しょうが・ぶた肉。大(450円)は卵入るから。私、駄菓子屋さんによう食べに行っていたし。好きやったし、それでしたんえ。庶民的なもんで」

 「誰でも気軽に食べてほしい」と2年前までは小が1枚100円でしたが、お客さんに心配され、しぶしぶ値上げ。

 (裕子さん)「いつもようけ買いに来るお客さんから『もうええ加減にしたら?』って。『もうええ加減に(値段)上げて。それより、この店辞めるって言われた方がかなわんし』って」

 でも裕子さん、お店は絶対に辞めない覚悟です。

 (裕子さん)「(Qのれんの題字は誰かが書いた?)これ、誰やったやろ…これ主人かな?原本が」

 だってこの店名は、5年前に亡くなった夫が残してくれたものだから。

 (裕子さん)「(夫とは)49年くらい一緒やったな。みんなこのネーミング、ええって言ってくれはる人多いよ。『ひ』が。なんかようわからへんけど、そやさかい、よかったなと思って」

『ちっちゃなおもひで』は「安心して過ごせる場所」

 午後0時45分、そんな裕子さんの店に、「おもひで焼」を愛してやまない長年の常連さんが訪れました。30年以上通っているというこちらの常連客の女性は、91歳です。

 (常連客)「だいぶ長いこと来てるな」 
 (裕子さん)「もう顔知ってるもんな、で、いつも3枚ってわかってんねん」

 毎回3枚持ち帰り、3食のおかずにするほどソースの味がお気に入りだそうです。

 (裕子さん)「元気でいてや、私も元気でいるしな。いつも来はる人が来はらへんかったら寂しいしな」
 (常連客)「450円?」
 (裕子さん)「ありがとう」

 午後2時30分、裕子さんの顔を見て足を止める人がいました。

 (裕子さん)「奥さん、このあいだ買いに来てくれはったで」
 (常連客)「あ、ほんま!食べさせていただきました」

 (常連客)「(Qどれくらいの付き合い?)もう30歳になる(自分の)子どもが生まれるか、生まれないかぐらいからお付き合いしています。(Qこのお店はどんな存在?)やっぱり日頃馴染んでいるお店で、知り合いでもありますし、安心して過ごせる場所ですね」

学生の常連客も多い「『おもひでのおばちゃん』という唯一無二の存在」

 ここは裕子さんにとっても、お客さんにとっても安心できる場所。大学生の常連客も多く、店内にあるメニュー看板や『おもひで焼きの歌』という歌は、学生からの贈り物です。

 (裕子さん)「(作った学生に)『これ家の家宝やで』って、『私、お棺に入れてもらおうと思ってるんやで』って言ったら、笑って帰ったけど」

 別の日には、常連の大学生が、中国人の友人を連れてきました。

 (常連の大学生)「おばちゃんとは、4年、5年くらい。今、学部4回生で、休学して中国に留学して、知り合ったのがこの子」

 中国人の友人は初めてのお好み焼きです。

 (裕子さん)「娘でもあり友達でもあり、近所のおばさんでもあり」
 (常連の大学生)「『京都の母』というよりも『おもひでのおばちゃん』という唯一無二の存在って感じ」
 (裕子さん)「それより、はよ彼氏連れてきや」
 (常連の大学生)「失礼な!」
 (裕子さん)「禁句やな」

42年来の常連客は週一で通う 裕子さん「お互い生存確認みたいなもんや」

 午後3時、店一番の常連客が来店しました。

 (常連客)「(Qいくつのときから来ていた?)22、23歳や」
 (裕子さん)「そんな若かった?あんまり変わってへんで」

 もう42年の付き合いになるという男性、週に1回はここに来る筋金入りの常連さんです。

 (裕子さん)「あぁきょうも来はったなぁ、元気やなと。お互い生存確認みたいなもんや」
 (常連客)「(Q改めてお味は?)いつもどおり」
 (裕子さん)「きのうも食べてはんで」
 (常連客)「(Qここの魅力とは?)自然体(でいられること)やね、おばちゃんこんな人だから」

店を長く続ける秘訣は「ストレスをためないこと。笑ってばっかし」

 多くの人に愛されるお店を長く続けられる秘訣とは?

 (裕子さん)「笑うことやろうな。ストレスをためないことやろうな。私ここでストレスないもん。あんたら来ても何もないもん。そやさかい笑ってばっかし。(Q店はいつまで続けたい?)そんなもんわかるかいな、あしたコケるかも分からへんのに、そうやろ?」

 お客さんと1日1日を楽しく過ごす。午後4時すぎ、閉店の時間。またあしたも人を笑顔にする「おもひで焼」を焼き続けます。

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