【温暖化であえぐ野菜】形も崩れ、光合成の気孔自らふさぎ、産地リレーもままならず いっぽう暑いほど安く買えるのが「道の駅⁉」
MBSニュース / 2024年7月19日 12時56分
温暖化と野菜事情。日本で野菜は、今まで通り作れなくなるかもしれません。産地が変わったり、収穫時期が変わったり、全て農業ハウス内で作らないといけなくなるかもしれません。そうすると値段が上がってしまう予測も…最前線を専門家など野菜のプロに取材しました。
2023年の平均気温が最高を記録 ゲリラ豪雨も年々増加
農水省の資料によりますと、平均気温は100年前から比べると年々上昇しています。先に結論を言ってしまうと、この温暖化を何とかしなくてはいけないわけです。
気温が上がるということは水蒸気が上にいき、いわゆるゲリラ豪雨のような雨の回数も増えています。農作物にも悪影響というのが出ていることはご存知でしょうか。
気温が上がると、なぜ野菜に悪影響?
暑くなると野菜に影響が出る理由①
光合成によって野菜はどんどん成長していきますが、暑すぎると自分の体内にある水蒸気をなるべく保っておこうと思って穴を塞ぐということです。具体的には光合成をする「気孔」という葉の穴を塞ぎ、蒸発しないようにする。でもそこは、二酸化炭素を吸う光合成の入口なので光合成が弱まってしまいます。
暑くなると野菜に影響が出る理由②
花粉が出来にくくなったり、受粉しても発芽しにくくなるということになり、育つ量も減ってしまいます。
暑くなると野菜に影響が出る理由③
外敵にとっては、暑さが都合いいという厄介な虫(アブラムシやハダニ)がいます。いっぽう病気から守ってくれる微生物は、暑さで駄目になっているかもしれないので、病気が出てきてしまい育ちにくくなります。
ちなみに、キャベツ・レタス・白菜も、本来はあんなふうに巻いてない。植物は本来、光合成するために葉は開いてるものだそうです。人間の都合でなぜあんなふうに巻いたのか、というと、中が白くて柔らかくなり、えぐみがなく柔らかくて美味しくなる、それを優先して巻いています。
ただ、巻くのには適温があるそうで、野菜によって違いますが気温15℃くらい。気温が高いと、だらんとなって美味しくもないということです。メカニズム的に形が悪くなってしまうこともあり、取れる量が減り、結果、値段も上がってしまいます。
産地リレーができなくなる
暑ければこんなデメリットも。日本列島は北と南で温度差があるので「産地リレー」が普段できています。夏は涼しい北海道とか高原で作りましょう。冬は南方や太平洋側など温かいところで作りましょう。この産地リレーが天候不順で全然上手にできなくなるというのです。
例えばレタスの卸売価格。暖かくて取れないはずの時期に、いつもより暖かくたくさん取れたので、値段が下がった場合。逆に、先に取れすぎて、本来あるはずの時期になくなって値段が上がる。
今、値段が落ち着いてきているのは、この後夏物が出てくるのが早めに出てきているからかも知れない。この後また値上がりするかもしれないということです。
これから野菜は基本的に値上がり傾向か
農水省はホームページで卸売価格を出しています。細かい数字ですが、ちゃんと見ると今が買い時とか、例年より安いのはどんな野菜か、とか見られるサイトです。
「フレッシュマーケットアオイ」の内田社長に聞きますと、梅雨入りが遅れたことで、7月前半は値段が落ち着いていたが、これからは基本的に上がっていくのではないかなということです。
暑すぎることで激安になる場所は「道の駅」
いっぽう「暑いほど安くなる」場所があるといいます。それは道の駅でいま大盛況だそうです。日本は規格が厳しいため、市場を通してスーパーに並ぶのは綺麗なもの。この価値観がなかなか日本では変わらないため、暑ければ暑いほど規格外のものが増える。
それが道の駅や直売所で売られます。規格を通さないものも置けますので、いつもより量が多く、規格が通らないものが並んでいるんです。大阪府羽曳野市の「しらとりの郷」には、きゅうりが3~4本で100円だったり、ナス2本で100円~130円だったり、ピーマン5~6個で100円だったり、安い商品が並んでいました。
でもよく考えると「形が悪いものもスーパーに置いてほしい!」ですよね。話を聞いた専門家の皆さんは、「農家を守らないと、結局は値段が高くなるんです」と話していました。
暑さに負けない!?進化する野菜とは?
続いては進化する野菜、品種改良などを見ていきましょう。
タキイ種苗が開発した「桃太郎ブライト」。暑すぎると、リコピンという赤い色素は作られないのに、カロテンは作られるため、トマトが「黄色やオレンジ」になってしまいます。
また、農家はトマトが青い段階で出荷しますが、その後トマトが黄色くなるか、赤くなるかわからない。後から黄色くなると農家として困ります。そこで高温でも、真っ赤になるトマト、を開発をしたということです。
また、受粉せずに実をつくることができる「PC鶴丸」というナスは、ホルモンが出ることによって実をなす。暑いと受粉しにくくなりますので、これも暑さに対応した野菜。このようにどんどん品種改良した野菜もできているということです。
また、京都府綾部市で万願寺とうがらしを育てている農業ハウスでは、温度や湿度の管理、水をあげる量やタイミングなど、収穫以外の栽培に関するあらゆることを、スマートフォン1台で操作していました。
「スマート農業」は、気候の影響を少しでも減らすことに加え、家の中で操作ができる、農業者の方の身体的な負担を減らすことにも繋がっています。
夏がどんどん暑くなる中、農業も進化を続けていることがわかりました。
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