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「本当に大切な存在だった。奪わないでほしかった」遺族が法廷で悲痛な叫び 高速道路で取締り終えた警察官 「ながらスマホ」運転のトラックに跳ね飛ばされ「即死」 被告はYouTubeを視聴 衝突3秒前にも画面をタッチ

MBSニュース / 2024年7月20日 7時11分

警察官の命を奪ったのは、「ながらスマホ」の運転だった。去年7月末に阪和自動車道で、大阪府警高速隊の警部補が殉職した事故。過失運転致死の罪に問われた男は、警部補と衝突する3秒前にも、スマホの画面に触れていた。法廷には遺族の悲痛な陳述が響いた。

時速約80㎞で路肩に… 高速隊の警部補がはねられ即死

起訴状などによると、田川友暉被告(33)は去年7月末、大阪府岸和田市の阪和自動車道で中型トラックを運転中に、大阪府警の警察官・松宮崇警部補(当時50 殉職を受け警視に昇任)をはねて死亡させたとして、過失運転致死の罪に問われている。

松宮さんは高速道路交通警察隊に所属。事故が起きた際、スピード違反の車両の検挙を終え、路肩に停めていた覆面パトカーに乗り込むところだった。

そこに田川被告が運転するトラックが時速約80㎞で突っ込んだ。松宮さんは約25mも跳ね飛ばされ、外傷性ショックで即死した。

高速道路に入る前からYouTubeを視聴 事故の3秒前にもスマホ画面をタッチ

田川被告は現行犯逮捕された際、事故原因について、“ぼーっと考え事をしながら運転していたため” とだけ説明していた。

しかしその後の捜査で、田川被告はトラックのセンターボックスに備え付けた携帯電話ホルダーに、自らのスマートフォンをセッティングし、YouTubeを視聴していたことが判明した。

YouTubeの視聴は、阪和道に入る10分ほど前からすでに始まっていた。ドライブレコーダーの映像には、被告のトラックが “蛇行運転” する様子がはっきり映っていた。

そして事故が起きる3秒前に、被告がスマホの画面をタッチしていたことも確認されている。

被告人質問では “事故直前にスマホを操作したかは覚えていない”

さらに今回の事故の前にも、田川被告は携帯電話使用で2回も検挙されていた。

大阪地裁での裁判で田川被告は起訴内容を認めたものの、“事故が起きる直前にスマホを操作したかは覚えていない” という旨の説明を繰り返した。

(7月18日の被告人質問)
検察官「YouTubeで何を見聞きしていた?」
被告 「甲子園(高校野球)のブラスバンドの応援曲を流していた」
検察官「ブラスバンドの曲を流していたことや、考え事はおぼえているのに、なぜ被害者とぶつかる直前の行動が分からないんですか?」
被告 「私の口から事故の原因を説明できないのが遺族や警察の方に申し訳ない」
検察官「スマホを操作しながらの運転はまずいと思わなかった?」
被告 「蛇行運転の時にスマホを操作したとは思っていない」
検察官「あなたの(いま見せている)涙は、何に対する涙なんですか?」
被告 「ご遺族や関係者の方に、私の口からちゃんと説明できないのが申し訳ないという気持ちからです」

弁護人「衝突の直前に携帯電話をタップしていたことは本当に覚えていないんですね?」
被告 「はい」

遺体と対面した遺族「触れることも、声をかけることもできず、ただその場に立ち尽くした」

亡くなった松宮さんは1997年に大阪府警に採用され、交通警察部門を歴任。去年3月に高速隊の小隊長に就いていた。

7月18日の公判では、遺族も涙をこらえながら意見陳述を行った。

(遺族の意見陳述)
「『行ってきます』と出かけた主人が、『ただいま』と帰ってこないなんて、思ってもいませんでした」
「事故当日、勤務先の同僚が携帯電話が鳴り続けていると教えてくれました」
「突然のことで座り込んでしまいました。恐怖しか感じませんでした」
「病院に着いて、主人はすでに死亡したと伝えられました。私は泣き叫ぶことしかできませんでした」
「主人と会ったのは、事故から4時間後でした。触れることも、声をかけることもできず、ただその場に立ち尽くしていました。寝ているようでしたが、起きてはくれませんでした」

「笑ったり喧嘩したり、そんな日常を送りたかった」
「買い物に行っても何を買えばいいか、何を作ればいいのか分からなくなりました」
「ただ朝が来て、夜が来るという日々が続きました」

「本当に大切な存在だった。奪わないでほしかった」

陳述によれば、息子の1人は、“自分が学校をやめて働こうか” とまで話したという…。もう1人の息子も、受験勉強が全く手につかなくなった。

(遺族の意見陳述)
「どうして主人が亡くならなければいけなかったのか分かりません。被告がしっかり前方を見て運転していれば、今回の事故は起こらずに済んだのです」
「交通事故を防ぐために働いていた主人は、まさか自分が交通事故で亡くなるなんて、思っていなかったでしょう」
「本当に大切な存在だった。奪わないでほしかった」

被告は悲痛な陳述を、うなだれて聴いていた。

検察側は禁錮2年6カ月を求刑 判決言い渡しは9月

検察側は論告で、「過失を招いた主な原因は、被告が意図的に行ったスマホ操作にあり、事故の態様は極めて悪質」「検挙歴を踏まえても、再犯可能性は高いと言わざるを得ない」と指摘。禁錮2年6カ月を求刑した。

田川被告は最終陳述で、「私が起こした事故により、松宮さんやご遺族の人生を狂わしてしまい、本当に申し訳ございません」と謝罪した。時間がかかってでも、遺族に受け入れてもらえるのであれば直接お詫びしたいという旨も述べた。

判決は9月に言い渡される。

(MBS大阪司法担当 松本陸)

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