「からだ全体がパンパンに腫れていて」爆発事故で亡くなった10歳息子...何年も受け入れられなかった母 福知山花火大会11年ぶり再開に「事故が二度と無いことを祈ります」
MBSニュース / 2024年8月13日 12時48分
3人が死亡、54人が重軽傷を負った京都府福知山市の花火大会での爆発事故。事故から11年となった今年、花火大会が再開されました。今回、事故で当時10歳の息子を失った遺族と、再開に尽力した主催者を取材しました。
病院に運ばれた息子は「かすれた声で『母ちゃん』って」
2013年8月、花火大会の会場だった由良川の河川敷で、露店の店主が発電機に給油しようとした際、高温になっていた携行缶からガソリンが噴き出して引火し爆発。3人が亡くなり、54人が重軽傷を負いました。
京都府京丹波町に住む山名さん(50)は、この事故で当時10歳だった息子の空くんを亡くしました。冗談好きで人気者だったという空くん。少年野球チームでキャッチャーを務め、プロ野球選手になるのが夢でした。
(山名さん)「暗くなるまで、友達と『キャッチボール、野球しよう』って本当にランドセルをぽいっと投げ捨てて。そういう毎日でしたね」
あの日、空くんは祖父や友だちと花火大会に出かけ、大好きだった露店の近くにいて爆発に巻き込まれました。病院に運ばれましたが、全身に大やけどを負っていました。
(山名さん)「(病院で)カーテンを開けたときに、からだ全体がもうパンパンに腫れていて、髪の毛もチリチリで、ところどころ皮膚がべろんってめくれた状態だった。『管を通すからもうしゃべれないので、今のうちにしゃべっておいてください』と言われて、『空』って言ったときに、『母ちゃん』って言って、それもかすれた声だったんですけど」
空くんは4日後に亡くなりましたが、山名さんは何年も受け入れられなかったといいます。
(山名さん)「『必ず帰ってくる』というのが頭の中で何年か続いていて。みんなと同じようにごはんとおかずを全部作っておいてやって…。空も『いつまでも泣くな』って言っているやろなとか、そうやって思っていかないと生きていけない」
楽しいはずの花火大会で起きた悲劇。事故以来、福知山市内で露店が出る大規模な花火大会が開催されることはありませんでした。
花火大会の再開が決定「誰一人事故やけがのないように」
そんな中、市は、去年実施した市民へのアンケートで再開に前向きな回答が9割近くにのぼったとして、主催者に安全対策を求めたうえで、市が後援する形での再開を認めると発表しました。
(福知山市 大橋一夫市長)「11年ぶりに開催される。市民については9割近い方が花火の再開を望んでおられる。あるいは地域の活性化を頑張っていきたいと」
(福知山HANABI実行委員会 奥田友昭実行委員長)「安全性を僕らも大前提においていますので。帰られるまで、21時くらいですかね、しっかりそこまで誰一人事故やけがのないようにしていきたい」
今年の花火大会で実行委員長を務める奥田友昭さん(43)。地元にみんなが集まる場所を復活させたいと委員長を買って出ました。
(奥田友昭さん)「このまちで生まれ育って43年で、花火は子どものころからずっとあった風景。お盆になったら、知り合いが帰ってきたりとか、『久しぶり』『ただいま』『おかえり』とか、親戚が集まったり、一緒に花火を見るとか。久しぶりに帰ってきてもらう理由を作りたかった」
再開に向けて、連絡が取れた事故の被害者やその家族には、安全対策について丁寧に説明し理解を求めてきました。
露店は炭火とIH以外の火気使用を禁止に
例えば、以前の花火大会では、露店の出店規制が不十分で見物客が多く集まる河川敷にも店が立ち並んでいましたが、今回は河川敷から離れた公園内に出店エリアを限定。事前に許可した15店舗のみで、炭火とIH調理器具以外の火気の使用を禁止しました。
(奥田友昭さん)「今回特に重視しているのは、露店の火気による事故。露店はIHなどに限って火気を使わない状態で、爆発事故とかが起きないように対策をしている感じです。安全に来ていただいて、安全に帰ってもらうのが僕らが今回目指している形」
8月6日、奥田さんたち実行委員は安全対策について再確認するため、露店を出す予定の店舗をまわりました。
(奥田さん)「火気やね。炭火を最初おこすときにバーナーとか言っていたけど、それもいったんやめてもらって、着火剤つけて、ちょっと時間かかりますけどそれで。送風機とかでバーっとやると。安全にやっていきましょう。お願いします」
(店の人)「お願いします」
息子の空くんを亡くした山名さん。事故以来、花火大会に足が向くことはありませんが、再開には反対しないと話します。
(山名さん)「花火で亡くなったわけじゃないんですけど、再開されたとしても、もう亡くなった人は帰ってこないし、『もうニ度とこういう事故が起きないようにお願いします』としか、私たちからは言えないですね」
爆発事故以来11年ぶりの花火大会 当日
そして8月11日。爆発事故以来、11年ぶりに再開した花火大会。事故を伝える石碑に、大会関係者や観客らが花を手向けます。
露店の安全対策の最終確認も行われ、実行委員長の奥田さんたちは、消防の職員らと1店舗ずつ見回ります。
(消防職員)「ホットプレートとIHでよかったですかね?」
(店の人)「はい」
(消防職員)「すみません、ちょっと中入らせてもらいます」
露店が出る公園は河川敷からは離れていますが、打ち上げ時間が近づくにつれてにぎわいが増し、花火大会に華を添えます。
2000発の花火が夜空に 遺族「事故が二度と無いことを祈ります」
そして午後8時。
(観客らにアナウンスする奥田さん)「戻ることのないかけがえのない時間をかけて、今から僕たちは花火を上げます。懐かしい人を思うため、『今年も会えたね』と笑いあうため、そして『来年もまたここで会おう』と約束するために。・・・3、2、1」
打ちあがった花火に歓声をあげる観客たち。20分間で約2000発の花火が福知山の夜空を彩ります。
(観客)「この子たちが生まれた年に事故があって、この花火大会を見るのが初めてなんです。悲しいことがあった事故を忘れずに、ともに成長していけたらいいかなと」
(奥田友昭さん)「『久しぶりやな』とか『ただいま、おかえり』とか『わあ花火やな』という声が聞けたのでよかったと思いましたね。帰って来る理由ができたんちゃうかな、福知山の人にとっては」
息子を亡くした山名さんが会場に来ることはありませんでしたが、取材に対し、「にぎわいのある花火大会をこれからも続けてほしい」と話しました。
(山名さんのコメント)「息子も必ず上から見ていただろうと思います。いつかは空と一緒に花火を見に行けたらなと思っています。事故が二度と無いことを祈ります」
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