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「殺していません。無罪です」元妻が初公判で主張 事件前後に『老人 完全犯罪』『殺人罪 時効』などウェブ検索と指摘する検察側 直接証拠なき裁判の行方は【紀州のドン・ファン殺人事件】

MBSニュース / 2024年9月14日 17時28分

 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県の資産家が殺害された事件。元妻の初公判が9月12日、開かれました。事件発生から逮捕まで3年弱、起訴から初公判まで3年。なぜ多くの時間を要したのか。また、検察側はどんな主張を展開したのか。刑事弁護に詳しい松田真紀弁護士への取材も含め、まとめました。

起訴から初公判まで3年以上…直接証拠がなく“長期化”か

 「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野崎幸助氏(当時77)が殺害された事件では、2018年5月の事件発生から2021年4月の須藤被告の逮捕までに“3年弱”という時間がかかりました。直接証拠がなく、犯行の状況を特定するのに時間がかかったことなどが理由とされています。そして、2021年5月の起訴から今回の初公判までの期間は“3年以上”。須藤被告が他の男性に対する詐欺の罪に問われていたという背景もありますが、起訴などの裁判開始から初公判までの平均期間は約2か月とされている中、異例の“長期化”です。

 なぜ、起訴から初公判に至るまでに、多くの時間がかかったのでしょうか。刑事弁護に詳しい松田真紀弁護士によりますと、今回のような裁判員裁判では、裁判所・検察官・弁護人が裁判の争点を明確にする「公判前整理手続き」が行われます。その中で時間を要するのが「証拠開示」をめぐる“攻防”だということです。検察側は被告に有利な証拠をすんなり出さず、対する弁護側は既に出てきた証拠から、さらなる証拠の開示を要求する、こういった攻防があります。

 例えば、被告のインターネット検索履歴の中に犯行をほのめかすような言葉があった場合、検察側はそれを証拠として出します。一方で、正反対のようなことを検索していたとしても、検察は被告に有利な情報を出さない傾向にあるため、弁護側から「他にこんな証拠もあるはずだ」と開示要求を行います。この攻防にかなり時間がかかったのではないかと松田弁護士はみています。

「殺人罪 時効」「覚醒剤 検挙率」須藤被告の検索履歴

 直接証拠のない今回の裁判。今後、どのように進んでいくのでしょうか。検察側の冒頭陳述での主張を4点見ていきます。

 (1)事件当日の状況
 (2)覚醒剤入手
 (3)動機
 (4)須藤被告のウェブ検索・閲覧

 まずは、事件当日の状況についてです(※検察側の冒頭陳述より)。

【事件当日の状況】(2018年5月24日)
 野崎氏宅には野崎氏・須藤被告・家事代行の女性
 ▼午後3時13分:家事代行の女性が外出
 ▼午後8時7分:家事代行の女性が帰宅
 ▼午後10時36分:須藤被告が野崎氏の異常を家事代行の女性に伝える

 冒頭陳述によれば、家事代行の女性が外出している間、野崎氏と須藤被告は約5時間にわたって2人きりの状態でした。野崎氏の死亡推定時刻は午後8時~10時。この死亡推定時刻などから、覚醒剤の摂取は午後4時50分ごろ~8時ごろの間と検察側はみています。また、須藤被告が所持していた“歩数をカウントするアプリ”の解析から、この間、被告が8回以上、野崎氏がいる2階へ行っていたと主張しています。


 覚醒剤の入手と事件の動機に関する検察側の主張は以下の通りです。

【覚醒剤入手】
 ▼4月に覚醒剤の密売サイトに掲載されている連絡先と携帯で通話
 ▼少なくとも3g以上(致死量の3倍以上)の覚醒剤を注文
 ▼和歌山で十数万円を支払い“覚醒剤と思われるもの”を入手

【動機】
 ▼須藤被告は野崎氏の“財産目当て”に結婚
 ▼野崎氏は周囲に「離婚する」と漏らしていた
 ▼野崎氏の資産がないと須藤被告は困窮

 さらに、事件前・事件後における須藤被告のウェブ検索・閲覧についても、検察側は調べています。

 【事件前】
 ▼動画視聴
 『遺産目当てと言われた女たち5選』
 ▼検索
 「老人 完全犯罪」
 「覚醒剤 過剰摂取」
 ▼閲覧
  妻に全財産を残したい場合の遺言書の文例
 
 【事件後】
 ▼検索
 「遺産相続 どれくらいかかる」
 「覚醒剤 検挙率」
 「昔の携帯 通話履歴 警察」
 「殺人罪 時効」
 「殺人 自白なし」


 一方、須藤被告は初公判で「私は社長を殺していませんし、覚醒剤を摂取させたこともありません。無罪です」と主張。弁護側は「本当に事件なのでしょうか。事件だとして、須藤被告が犯人なのでしょうか?」「殺すとき覚醒剤を飲ませて死なせる方法を思いつきますか?」と主張しています。

「被告が犯人でないと説明がつかない証拠が必要」

 直接証拠がない状態で裁判はどうなるのか。松田弁護士によりますと、「直接証拠がない事件は多い」ということです。特に、被害者が亡くなっている事件がそうで(※被害者の供述も直接証拠なので)、必ずしも直接証拠の有無で有罪・無罪が決まるわけではないと言います。過去の最高裁判決では、簡潔にいえば、「状況証拠だけのときは、『被告が犯人でないと説明がつかない』ことが必要」としているということです。今後の検察側、弁護側のやり取りに注目が集まります。

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