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プロ野球選手の夢を断念して『スッポン養殖』の道へ!? 80歳師匠の思いを継いだ25歳が目指すのは「養殖界のレジェンド」 兵庫・香美町

MBSニュース / 2024年9月19日 13時7分

 プロ野球選手の夢を断念して、いまは「スッポン養殖」に人生をかける25歳。カニで有名な兵庫県香美町で、スッポンを“カニに並ぶ特産品”にしたいと日々奮闘しています。その姿に密着しました。

約1万5000匹のスッポン 養殖するのは25歳

 兵庫県香美町の小代地区。周りを山に囲まれたのどかな集落です。去年、ここに移住してきた若者がいます。鳥取県米子市出身の安藤優汰さん(25)。

 泥の中から掘りおこしているのはスッポンです。25mプール6個分ほどの池で、約1万5000匹のスッポンを養殖しています。

 手塩にかけて育てたスッポンは地元の旅館や京都の料亭などで振る舞われ、コラーゲンたっぷりで栄養満点のメニューとして人気です。

 (安藤優汰さん)「育てたものをみんなにおいしく食べてもらえばそれが一番かなと」

スッポン養殖の始まりは「山間部にもカニのような特産品を」

 安藤さんにはスッポン養殖の師匠がいます。

 「料理するとき手抜きしたら最終的には味にかかわってくる。手抜きせんように」

 80歳の増田時雄さんです。増田さんがスッポンの養殖を始めたのは約50年前のことでした。「山間部にもカニのような特産品を」と地元の仲間8人でスッポン養殖に乗り出しました。

 (増田時雄さん)「当時はスッポンのことをほとんど知らない人ばかり。私もスッポンを路地池に放したら次々に死んでしまった」

 最初は失敗続きでしたが、近くで湧いている温泉を引っ張って、成長を早めるなどして事業を軌道に乗せることに成功しました。以来、「小代のスッポン」として親しまれてきましたが、メンバーの高齢化で、15年ほど前からは増田さんだけになり、廃業も頭をよぎるようになりました。

廃業の2文字がよぎる中…師匠に訪れた”転機”

 そんな中、転機が訪れます。去年8月、スッポンの養殖事業を立ち上げようとしていた安藤さんが見学にやってきたのです。

 後継者を探していると知った安藤さん。「ぜひ継がせてほしい」と熱意を伝えると、とんとん拍子で事業を引き継ぐことが決まったのです。

 【作業中の様子】
 (増田さん)「なるべく大きな卵を底にして。小さい卵を上に持ってきておいたら孵化するときにな」
 (安藤さん)「そんなに掘らずに出てこられる」
 (増田さん)「小さいカメでも出てこられるようになる」
 
 (増田時雄さん)「やっぱり若いもんもおらんし、県外から入ってきて、ここで事業する人はおらんでね。そういう人がどんどん入ってくれたらありがたいと思います。なるべく足を引っ張らず手を引っ張ってやるように」

 安藤さんは元々プロ野球選手を目指していました。大学1年のとき、明治神宮大会で準優勝。社会人でもプレーし、ドラフト候補にも挙がっていました。

 しかし2022年、新型コロナに感染したことで人生が一変します。

 (安藤優汰さん)「治った後も(後遺症で)呼吸しにくいですし、血液に酸素が回らないので走ったりもできず、ずっと苦しんでいましたね」

 コロナの後遺症もあって野球に見切りをつけた安藤さん。生き物好きで漁業に興味があったことなどから選んだのがスッポンの養殖でした。

スッポン養殖の1日

 養殖場の一日は、エサづくりから始まります。魚のアラや米ぬかなどを増田さんから教わった秘伝のレシピで調合します。

 (安藤さん)「食べてますね」

 エサはスッポンの肉質を大きく左右するため、しっかり食べているかどうかチェックが欠かせません。

 数ある作業で一番大変なのは、スッポンの捕獲です。警戒心が強く人の気配を感じると泥に潜るため、泥をひたすらかき分ける重労働です。

“スッポンを通じて地域ににぎわいをつくりたい”

 今年1月には仲間とスッポン養殖などの会社「月とすっぽん」を立ち上げました。目指すのはスッポンを通じて地域ににぎわいをつくることです。

 (安藤優汰さん)「スッポン養殖はライバルが少ないので結構売れるんじゃないかなと思った。小代の名産として田舎でも稼げる事業として『あの企業に入れば大丈夫だ』と思ってもらいたいです」

 6月中旬、安藤さんたちは神戸の有馬温泉にいました。

 (安藤さん)「この辺全部まわります。営業で」

 まずは兵庫県内で「小代のスッポン」の販路を広げようと温泉地などをまわり、旅館や飲食店に飛び込み営業をかけます。

 (「陶泉御所坊」支配人 竹安善則さん)「いろいろ行ったらひょっとしたら、使ってみたいというところもあるかもしれないですね。食材もいろんなところから入れているから」

 (「湯屋の宿 康貴」代表 下浦拓也さん)「一応また言っておきます。何店舗かにチラシを見せて、どうっ?て」

 (安藤優汰さん)「めちゃくちゃ聞いてくれましたね。ここから一気にその社長から広がりそう」

地元の人「若者が増えて事業継承してもらうことはいいこと」

 香美町に移住して1年、地元にもすっかり溶け込んできました。

 (地元の人)「若者がちょっとでも増えて事業継承してもらうことはいいことだと思います」
 (地元の人)「よそから来て頑張ってくれるのはとてもうれしいです。(増田)時雄さんにもまだまだ頑張ってもらいたいです」

 そして8月、安藤さんのもとにスッポンを扱いたいという人が訪ねてきました。営業をかけていた有馬温泉の旅館の代表です。

 (安藤さん)「(スープは)鍋を作る要領と一緒で全身使います」
 (「御所坊」代表 金井啓修さん)「スッポン豆腐を卵豆腐の要領で作ったら、けっこう日持ちするし売れるんちゃうかな。おいしいやつをどう作るか」

 まずはスッポンのダシを使って旅館で出す卵豆腐を試作することになりました。

 (安藤優汰さん)「(営業の成果が)実りました。スープにこだわってスープを活用する方がいいと言われたのは収穫。こっちからいろんな企業に声を掛けられると思いましたね。スッポンのダシを使って一緒にやりませんかとか」

師匠のような『レジェンド』を目指したい

 そしてこの夏、安藤さんたちの養殖場ではもう一つ、うれしい出来事がありました。新たに約1万個の卵が孵化したのです。これから3年、大切に育てていきます。

 (安藤さん)「かわいいですね。自分たちで卵を埋めて、それがちゃんと孵化してくれるのは。ここから500円玉くらいの大きさになるまでしっかり気をつけて管理していきたいなと」
 (増田さん)「これからが大事。毎日が勉強ですわ。まあ頑張ってください」

 増田さんの50年間の思いを託された安藤さん。挑戦はまだ始まったばかりです。

 (安藤優汰さん)「『養殖界でプロ』というか、増田さんのような『レジェンドと言われる存在』、そっちのほうを目指していきたいです」

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