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【泉房穂氏】「出直し選挙じゃなくて開き直り選挙」"失職・再出馬"を決断の斎藤前知事を一刀両断 次の知事は「県民の立場に立って市や町と連携できる人に」

MBSニュース / 2024年9月29日 14時57分

 兵庫県議会で不信任決議が可決された斎藤元彦前知事は、9月30日付で“自動失職”しました。斎藤前知事は9月26日の会見で、失職・出直し選挙に臨むことを表明。次の知事選で兵庫県民がいかなる判断を下すのか、全国が注目しています。今回の斎藤前知事の決断を、前明石市長・泉房穂氏や専門家はどのように見たのか、また、次の知事選はどうなるのでしょうか。◎泉房穂:兵庫県明石市生まれ。東京大学卒。NHK退職後、弁護士・衆院議員を経て去年4月まで明石市長を務める (2024年9月27日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

「誠実な対応とは思えない」「迷っているというのは嘘だった」

 はじめに、9月26日の斎藤前知事の会見を振り返ります。ポイントは次のとおりです。

 ▼解散・辞職は考えていなかった
 ▼心の中におごり・慢心があった
 ▼高校生から「辞めないで」の手紙
 ▼1つ1つの対応は適切だった
 ▼自分の実績を主張

 斎藤前知事はMBSの独自インタビューで、議会解散・辞職も含めて全ての可能性を否定しませんでした。ただ、会見では「最初から解散・辞職は考えていなかった」と発言。テレビ出演は“県政のPR”だったのでしょうか。直接話をした大吉洋平アナウンサーは「今後、斎藤氏がいろいろな政策を打ち出しても、なかなか信用することができないなという気持ちになった」とコメント。

 また、斎藤前知事の一連の動きついて、9月27日放送のMBSの番組に出演した前明石市長・泉房穂氏は、次のように述べました。
 
 「『解散・辞職は考えていなかった』ということだったら、不信任可決後に『失職して信を問います』と言えばよかった。迷っているというのは嘘だったわけです。その間、テレビ局をハシゴして選挙対策をした。県議会も止まっているわけですから、正直なところ、誠実な対応とは到底思えないですね。知事選に出るか否かは自由ですけど、それは本人の問題であって、県議会を止める理由にはなりません。誠実さが欠けているというか、『自分、自分の方だな』と正直思いましたね」

 「(斎藤前知事は)全く非を認めないスタンスですよね。最初に『嘘八百』と言ったが、事実の部分が明らかになっているし、告発した人は命を失っておられるわけだし、何もないことはないと思うので、一定の非は最低限認める必要があると思います。非を認めないのであれば“出直し選挙”じゃなくて“開き直り選挙”です」

 「特徴としては『法律、法律』とおっしゃる。ただ、政治家というのは法律だけでなく、世論の支持や民意も大事であって、『法律違反をしていないからセーフ』というものではないと思うんです。高校生から手紙をもらったと言いますが、県議会が全会一致で不信任を出しているわけですから、重く受け止めるべき」

 「『公約着手率98%』と言っていますが、“達成”と“着手”は違う。県民目線で言うと、達成して初めて意味があるのであって、着手したかどうかは自分目線。政治家というのは結果責任ですから、“着手率”という言葉を使うこと自体がどうなのか。斎藤前知事がやったのは、自分の給料を減らしたこと、公用車を乗り換えたこと。それから、財政状況は改善されました。ただ、障がい者・高齢者の予算を切った結果として“お金”が増えたのであって、県民から見ると、県のお金は増えた一方で県民サービスは低下しているわけです。それを“成果”と言えるかどうかは評価が分かれると思います」

斎藤前知事の判断は「合理的」「会見は絶妙なタイミング」という見方も

 今回の斎藤前知事の判断について、地方自治・政治に詳しい大正大学の江藤俊昭教授は“合理的な判断”だと指摘しています。というのも、辞職して選挙で当選した場合と、失職して選挙で当選した場合で『任期』が変わってくるためです。

 ▼辞職→当選の場合:任期は来年7月末まで
 ▼失職→当選の場合:任期は新たに4年

 また、斎藤前知事の会見時期が自民党総裁選中と重なったため、世論の関心が“疑惑”よりも“今後の政策”など政治に興味が向きやすい状況で、ここで失職・出直し選挙を発表したのは政治的には絶妙なタイミングだったということです。さらに、斎藤前知事の戦略にメディアが使われているとの指摘もありました。

「政党の推薦受けず選挙に挑む」斎藤前知事には後ろ盾がある?

 会見で斎藤前知事は「他の政党の推薦を受けず1人で選挙に挑む」と発表しました。これについて江藤教授は、何かしらの“サポート”や“後ろ盾”があるのではと推測します。それは、選挙には多くのお金・人員を必要とするからです。

 まず、県知事の選挙運動費については、お金を持っている人が有利にならないよう上限額が決められていて、「有権者数×7円+2420万円」となっています。前回の兵庫県知事選の上限額は約5643万円でした。選挙運動員については、(車上運動員・手話通話者などを除き)基本的に無報酬ですが、移動費など多くのお金がかかります。選挙コンサルタントの大濱崎卓真氏によりますと、講演会など選挙前の費用を含めると9000万円に及ぶこともあるということです。

 泉氏は、選挙に挑む斎藤前知事について「政治資金も集まっていますし、退職金を含めて手元には3000万円程度あると思いますから、その中でやれる選挙をするのかなと。コストを下げる方法は色々あると思います。ただ、費用ゼロではできませんから、お金と応援していただく人、その両方が普通は必要です。本当に1人で選挙ができるかと言えば、簡単ではないと思います」と見解を示しています。

 SNSを駆使するなど、若い世代のなかで選挙の捉え方も変わってきていて、結果がどうなるかわかりません。SNSでは「斎藤さん頑張れ」と応援するコメントも多く見られます。

 これについて泉氏は「でも、デマも多いですよ。例えば『斎藤前知事が港湾利権にメスを入れた』という説については、事実でないとの報道が多くのメディアでなされていますが、SNSでは“改革のヒーロー”のような取り上げ方もされています。事実でなくても拡散されてしまうので、SNSは怖いですね」と指摘。情報をどう吟味し個人が判断していくかが問われます。

次の知事は「県民の立場に立って市や町と連携できる人に」

 知事選をめぐっては、尼崎市長を3期務めた稲村和美さんが出馬の意向を固めたほか、出馬表明している医師の大澤芳清さんを共産党が推薦。自民と維新も独自候補の擁立を目指しています。

 泉氏はこの知事選に出馬しないとしていますが、何らかの形で関わるということ。「次の知事にはちゃんと県民の立場に立って、市や町とも連携できる人になってほしい」と話します。兵庫県知事選はどうなっていくのか、泉氏がどういう動きをするのかも含め、注目が集まります。

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