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紀州のドン・ファン殺害事件 "しゃがれ声"の『覚醒剤の売人』出廷し証言 注文受け数時間で和歌山・田辺市へ急行...「路地の暗い場所で渡した」「女性に4~5グラム売った」元妻と売人仲間の携帯電話に通話履歴も

MBSニュース / 2024年10月1日 23時31分

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野崎幸助さん(当時77)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた元妻・須藤早貴被告(28)の裁判。10月1日の第7回公判で、事件の約1か月半前に “覚醒剤の密売人”として、和歌山県田辺市内で女性に覚醒剤を売り渡したとみられる男性が、証言台に立った。検察側は“覚醒剤を購入した女性客は須藤被告だった”と主張している。

パーティションで遮蔽 男性「売人です」 話し方は少し“べらんめえ口調”

10月1日午後。和歌山地裁の法廷。

証言台をパーティションで完全に遮蔽する形で、ある男性への証人尋問が始まった。話し方は少し“べらんめえ口調”。声はしゃがれている。

(以下、検察官=検 証人=売)
検「平成30年(2018年)頃、どこに住んでいましたか?」
売「大阪市のマンションに住んでいました」
検「何をしていましたか?」
売「売人です」
検「何の?」
売「覚醒剤とか」

事件の鍵を握るとみられる人物が、ついに証人として出廷した。

2018年4月に密売人に電話注文… 値段は「10万~12万くらい」配達先は「田辺と聞いた」

法廷での供述によれば証人の男性は、2018年1月頃からインターネット上で、“密売人仲間”の男性とともに、「アイス」「氷」といった覚醒剤の隠語を使い、金額や電話番号を載せて購入希望を募っていたという。覚醒剤の仕入れは仲間がするケースもあれば、男性がするケースもあった。

検「覚醒剤を(購入希望者に)配達したことはありますか?」
売「あります。和歌山とか」
検「和歌山に配達したのは何回?」
売「1回」
検「いつ頃?」
売「(平成)30年(2018年)の4月頃」
検「(証拠によれば)平成30年の4月7日に行っているが、記憶と合う?」
売「はい」
検「注文は誰に入った?」
売「○○(筆者注:密売人仲間)に」
検「どういうふうに注文が入った?」
売「電話で」
検「量とかは?」
売「確か4か5」
検「グラムということですか?」
売「はい」
検「代金は?」
売「10万から12万くらい」
検「和歌山のどこかは聞いていない?」
売「田辺と聞いた」
検「どうやって行くことにしましたか?」
売「車で」
検「時間帯は覚えている?」
売「たぶん(夜の)7時か8時くらい」

証人と仲間らは田辺市へ…客は「女性」「164センチか165センチぐらい」

証人の男性と仲間の男性は、「足代を渡すから」と言って、わざわざ後輩を京都から呼び出して車を出させ、高速道路で和歌山県田辺市に向かった(ただ、運転したのは仲間の男性だという)。仲間の男性の交際女性も車に同乗したという。

覚醒剤を入れたパケ(チャック付きの小さなビニール袋)は、ティッシュにくるみ、さらに封筒に入れて運んだという。この覚醒剤を仕入れたのは、証人ではなく仲間のほうだった。

午前0時前、日付が変わる直前に南紀田辺ICから一般道に出て、待ち合わせ場所近くに車を停めた後は…

検「車を降りたのは?」
売「自分です」
検「証人だけが車を降りた?」
売「はい」
検「客と接触しましたか?」
売「しました」
検「どんな場所で?」
売「路地の暗い場所で」
検「その客は男性でしたか?女性でしたか?」
売「女性です」
検「身長はどのくらいか覚えている?」
売「自分と一緒か、ちょっと違うくらい」
検「証人はちなみに身長はどのくらい?」
売「164か165(㎝)くらい」
検「顔は覚えていますか?」
売「覚えています」

確かに“女性客”は、須藤被告と同程度の身長ということにはなる。

須藤被告と“密売人仲間”の携帯電話に『通話履歴』「(客は)『旦那さんには知られないようにしている』と話していた」

そして検察側が請求した証拠によれば、次のことが確認されている。

▽同じ日の午後7時すぎ、“密売人仲間”の当時の携帯電話と、被告が当時使用していた携帯電話との間に通話履歴

▽同じ日の午後11時半すぎ、男性らが車を停めた場所から極めて近いコンビニのATMで、須藤被告が自身の口座から約10万円を引き出した

▽日付が変わった翌日午前0時すぎにも、“密売人仲間”の当時の携帯電話と、被告が当時使用していた携帯電話との間に通話履歴

こうした証拠と、男性の供述をつなぎあわせ、“覚醒剤を受け取った女性は須藤被告だった”と検察側は主張しているわけだ。

検「客と会ってどうした?」
売「(覚醒剤の入った封筒を)渡して、少し言葉を交わした……いや、お金をもらって渡した」
「(客は)『旦那さんには知られないようにしている』と話していた」

そして客の女性は、近くにあるスーパーマーケットの方向に歩いて去っていったという…。

須藤被告は“手を組み”動揺の様子は見せず 証人は改めて“渡したのは本物の覚醒剤”と断言

検「最後に訊きます。あなたが客に交付したものは何ですか?」
売「覚醒剤です」
検「本物の覚醒剤でしたか?」
売「はい」

上下黒のスーツに白いブラウスを身にまとった須藤被告は、検察官の尋問を手を組みながら聴いていた。傍聴席からは、特に動揺した様子は見られなかった。

検察側が有罪立証の、“最大の切り札”として出廷させた重要証人の男性。しかし、その後も続いた検察官の尋問や、弁護人の尋問によれば、この男性は、捜査当局の取り調べに対し当初は、“女性客には(覚醒剤に見せかけて)氷砂糖を渡した”と供述していたという。理由について男性は、「当局を警戒していたから」だと述べた。

さらに弁護側の証人尋問によれば、“女性客に渡す前に本物の覚醒剤かどうかを携帯電話のライトで確認した”という供述を、去年5月の取り調べから急に始めたという。そのあたりの供述の変遷などを、裁判官と裁判員がどう判断するかが気になるところだ。

次回の公判は10月3日に行われる。

(MBS報道センター 松本陸)

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