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「チョコの価格は今後さらに倍に」カカオショックの原因はウイルス!?4億本以上の木が焼き払われる...菓子業界の打開策は?

MBSニュース / 2024年10月16日 19時17分

 「カカオショック」で高騰するチョコレート。主要産地のカカオ豆の不作は、実は異常気象だけではなく、ウイルスの流行が原因にあります。この先、高騰が落ち着いても“今までの倍くらいの価格”になるかもしれないチョコレート。この危機を乗り越えるヒントとなる取り組みを取材しました。

チョコレート「去年の倍くらい上がっている…」

 大阪市内にあるケーキ店「菓子工房エリオス」。お店の中には色とりどりのケーキがずらりと並んでいます。店内にある15~20種類のケーキのうち、チョコを使った商品は2~3割ほど。老若男女問わず、人気の商品だといいます。

 しかし、値札を見てみると、値段の部分だけ“手書き”で修正テープの跡も…

 (縄本修嗣パティシエ)「もう2か月単位くらいで(値段を)変えていかなきゃならない」

 2023年より150円も値上がりしたといいます。原因のひとつとなっているのがチョコレートの高騰、「カカオショック」です。

 (縄本修嗣パティシエ)「去年から比べると倍くらい上がっていますね。(月で値上がり分が)5~6万円いくんじゃないですか。かなり苦しいですね」

カカオショックを招いたのは『異常気象』と『ウイルス』

 「カカオショック」とはどういうものなのか。“チョコレート博士”と呼ばれるチョコレート研究の専門家・佐藤清隆名誉教授にお話を聞くと…
 
 (佐藤清隆名誉教授)「異常気象によってカカオの木が弱まっちゃったところに、今までにない、専門用語だとかカカオ膨梢(ぼうしょう)ウイルスが出た」

 チョコレートの原料となるカカオ豆の主要生産地は、西アフリカにあるコートジボワールとガーナの2カ国。しかし2023年末から大雨・洪水・干ばつなどに見舞われ、さらにそこにカカオの木を次々と枯らすウイルスが蔓延…。感染対策として4億7000万本以上もの木が焼き払われ、深刻なカカオ豆不足となってしまったのです。その結果、世界中で起きているカカオ豆の奪い合い。当然、価格も上がります。

 (佐藤清隆名誉教授)「平均からすると(カカオ豆の値段は)倍以上になっている。(Q日本で買って食べるチョコレートの価格は?)単純に言うと、(今後は)倍になる。もう既に去年に比べて、4割ぐらい上がっている」

 焼き払ったカカオ畑が元に戻るまで最低6年はかかるそうで、今後も値上がりは続くと言います。そんな中で、世界中の菓子メーカーから注目されているのが、ある“技術”を用いたチョコレートです。それは…

救世主!?「コンパウンドチョコレート」

 「コンパウンドチョコレート」。耳慣れない言葉ですが、いったいどんなチョコレートなんでしょうか。製造過程でカカオ豆の使用量を減らすことができるチョコレートだといいます。グループで業務用チョコレートの世界シェア3位を誇る大阪・泉佐野市の不二製油を訪ねました。

 カカオ豆由来の原料であるカカオマスとココアバターから作られるチョコレートを、「ピュアチョコレート」と呼びます。このココアバターを、ヤシや大豆など別の植物油脂に置き換えたものが「コンパウンドチョコレート」です。ココアバターを代替することでカカオ豆の使用量を減らし、コストを抑えられるといいますが、その味は…。

 (MBS・山中真アナウンサー)「(いつものチョコと)何か違うんですか?すごく食べなれたおいしいチョコレートですね。ちょっと違うのかなと思ったけど、いやいや、まったく一緒です。ちゃんとホワイトチョコの味。おいしいし口溶けもすごく滑らか」

 (不二製油・仲朋美さん)「柔らかい油脂を使うアイス用のチョコレートコーティングは口の中が冷えた状態でもおいしく溶けるように仕上げたり、逆にすぐに固まる植物油脂を使うと、パンなどにコーティングしたときに袋や手にしたときにべたつきにくいチョコレートをつくることができます。弊社ではブレンドや配合比率を調整して、数千種類以上のコンパウンドチョコレートを作り分けています」

 コストだけでなく機能面でも、まさに優れもの。洋菓子店など、これまでピュアチョコレートを使用していた専門店からも注目されているといいます。

 さらに不二製油では、カカオの供給が不安定な現状そのものを改善しようという取り組みも。

 (不二製油・仲朋美さん)「農家さんの生活を支援するプログラムを取り入れております。(カカオショックが)将来続くことにも備えて、価格が高いというだけではなく、農家さんの生活を支えるところから私たちも取り組んでいかなくてはならないなと」

 特定の商品の売り上げを一部、生産者への支援に充て、農家が安定してカカオを生産し続けられる環境作りに貢献しているのです。

生産者を支える取り組み「ビーン・トゥ・バー」

 こうした取り組みはほかにも。京都に店を構える「COCO KYOTO」。取り扱っているのは、ある特別なチョコレートです。

 (グランパティシエ・横田克久シェフ)「一般的には市販のメーカーさんがつくったチョコレートを仕入れて、それを溶かして使うのが当たり前なんですけど、我々はカカオ豆から仕入れて、一貫してチョコレートができるまでをすべて自社で行っています」

 カカオ豆から板チョコレートができるまでの全工程を、自社工房で一貫して行う「ビーン・トゥ・バー」という製造スタイルで、カカオ豆からこだわって作り上げるため、カカオ本来の味と香りを楽しむことができます。一般的なチョコレートより高価ですが、カカオ豆を生産者から直接購入するため仲介業者を介するよりも多くの利益を受け取ってもらえるのです。

 (グランパティシエ・横田克久シェフ)「本来チョコレートは嗜好品。こういう価格帯が正常だということをお客さんには感じてもらいたい。我々が自信をもって提供しているチョコレートや、仕入れたカカオも、本来あるべき価格帯にもっていきたいので、普通の一般的なチョコレートに比べるとどうしても高く感じてしまうとは思うんですけど、違う視点から見て感じてもらえたらうれしい」

 甘~いチョコレートをめぐるちょっとビターなカカオショックのお話。将来チョコレートが食べられなくならないよう、私たち消費者にできることをチョコっと考えてみる機会なのかもしれません。

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