【耐えられない痛み】増加する『帯状ほう疹』若い世代も要注意!合併症で結膜炎や顔面神経麻痺などのおそれも どんな人が発症しやすい?
MBSニュース / 2024年10月25日 12時40分
季節の変わり目に増えるという「帯状ほう疹」。体にピリピリと刺すような痛み・違和感・かゆみなどが主な症状ですが、中には夜も眠れない程の強い痛みを感じる人もいるようです。ある研究では80歳になるまでに3人に1人が発症するという推定もあり、決してひとごとではありません。どんな症状で、どんな人が発症しやすいのでしょうか?
「水ぼうそう」と同じウイルスで感染「帯状ほう疹」
帯状ほう疹はウイルスによって引き起こされる感染症です。「水痘帯状ほう疹ウイルス」と呼ばれるもので、これは水ぼうそうの原因となるウイルスと同じです。
帯状ほう疹が発症するメカニズムはこうです。初めて水痘帯状ほう疹ウイルスに感染したときは、水ぼうそうを発症します。大人の多くは子どもの頃に水ぼうそうを一度発症していると思います。
その後、ウイルスは神経節という場所に潜伏する形で体内に残り続けます。それが加齢やストレスなどでウイルスに対する免疫が大きく下がったときに、今度は帯状ほう疹として発症するのです。
症状はさまざま 最初は「筋肉痛?」と思う人も
いとう皮膚科クリニックの伊東詩織医師によりますと、帯状ほう疹は体の左右どちらか半分に症状が出ることが多いのが特徴だということです。初期症状は痛み・かゆみ・違和感などで、皮膚の症状としては赤み・水ぶくれなど。症状の種類はさまざまで、体のどこにでもできる可能性があるといいます。
数年前に帯状ほう疹かかったというMBSの金山泉アナウンサーは、最初の症状は「何か鈍痛がする」ことから筋肉痛だと思ったそうです。しかしそれがどんどん悪化したということです。このように初期症状ですぐに帯状ほう疹とわからないケースもあるため、人によっては皮膚科ではなく別の診療科に行くこともあるそうです。
症状の改善後も「服が擦れても痛い」 治療は早ければ早いほどいい
続いて、帯状ほう疹の合併症と“後遺症”についてです。目の症状として結膜炎・角膜炎・まれに失明となる場合もあれば、聴力低下やめまい、顔面神経麻痺、髄膜炎・脳炎になる可能性もあるということで、軽視できません。
伊藤医師によりますと、頭部に発症した場合は特に注意が必要で、帯状ほう疹の症状が治まった後も、まれに慢性的な頭痛が残ることがあるということです。
また、帯状ほう疹後神経痛(PHN)と呼ばれる、いわゆる後遺症が出る場合もあります。皮膚症状の改善後も痛みが数か月~数年続くというもので、帯状ほう疹症例の10%~50%が該当するため決して少なくありません。痛みの種類や程度はさまざまですが、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛み、伊藤医師によりますと「服が擦れても痛い」という人もいるということです。
帯状ほう疹の主な治療には、抗ウイルス薬、鎮痛薬、痛みが強い場合は神経ブロック注射があります。抗ウイルス薬の投与については72時間以内が望ましいということです。
伊藤医師は「痛みだけだと帯状ほう疹とわかりにくいが、早いほど治療効果が高いため、疑わしい場合はできるだけ早く病院へ行ってほしい」としています。ただ、体の表面の皮膚だけではなく、口の中や耳の中に発症する場合もあり、わかりづらいケースもあります。
若い世代もリスクあり!?発症率が増えているワケ
では、どんな人がなりやすいのか?年代別・男女別の発症数を示したグラフを見ると、50代~60代で増加していて、発症数は女性の方が多いです(出典:「宮崎スタディ」宮崎皮膚科医会・外山望 ※1997年~2019年)。
しかし、高齢者以外の世代も要注意です。1997年の発症率を1とした場合の増減率で見ると、60歳以上や60歳未満だけではなく、20代~40代も「2014年」を境に大きく上がっています。
実は2014年は、子どもに対する水ぼうそうの「水痘ワクチン」が定期接種化した年です。ではなぜ、子どもへのワクチン定期接種の導入で、大人の帯状ほう疹の発症率が上がるのか?それは、“ブースターの機会減少が原因ではないか”と推測されています(国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチンファクトシート」より)。
冒頭で説明したように、水ぼうそうと帯状ほう疹は、原因となるウイルスは同じです。そして多くの成人は、子どもの頃に水ぼうそうにかかっているため、免疫を体内に持っています。ワクチンが定期接種化する前は、大人になって自分の子どもなどが水ぼうそうにかかった際、“再び薄くウイルスに感染”することで、自身が持つ「水ぼうそうに対する免疫」がパワーアップしていました。
しかし2014年以降、子どものワクチン定期接種が導入されると、水ぼうそうに感染する子どもが一気に減ったのです。そうなると、大人がウイルスに薄く暴露する機会が減るため、免疫のパワーアップがされず、帯状ほう疹を発症する大人が増えたのではないか、と推測されています。
ワクチンの対象は基本的に『50歳以上』
次に、ワクチンの現状についてです。ワクチンは「乾燥弱毒生水痘ワクチン」と「シングリックス」の2つがあります。乾燥弱毒生水痘ワクチンは生ワクチンで、ウイルスを弱毒化したものを体内に入れるというもの。対象は50歳以上で、接種回数は1回。費用は約8000円です。発症予防効果は約50%~70%(海外でのデータ)、持続期間は5年間(海外のデータ)です。
一方でシングリックスは不活化ワクチンのため、ウイルスとしては活動していない成分を体内に入れます。50歳以上または、免疫が一般の人よりも低いなど高リスクの18歳以上が対象です。接種回数は2回で、費用は2回で約4万円かかります。50歳以上では97.2%の発症予防効果があるとされていて、持続期間は10年以上です。
基本的に若い世代は、日本でこうしたワクチンを受けることができないのが現状です。
自治体によってはワクチン接種の助成制度もあります。ただ、助成制度がある自治体ならどこの病院でも助成が受けられる、というわけではありません。気になる人は自治体のホームページを確認するか、市役所に問い合わせてみてください。
国はワクチンの定期接種化を検討…しかし揉めている?
また、国は帯状ほう疹のワクチンを定期接種とすることを検討しています。国が定期接種とすると、ワクチンの中には自己負担なしで受けられるものもありますが、帯状ほう疹のワクチンがどうなるかはまだわかっていません。
専門家会議の議論では、高齢になるほど発症しやすく重症化しやすいため、わかりやすく65歳で接種を行うのがいいのではないか、などと話し合われています。しかし、国の専門家会議などはこれまで、「50歳を過ぎたら帯状ほう疹のワクチン接種」と呼びかけてきたため、国のお金が使われるからといって年齢を引き上げるのではなく、50歳から定期接種を始めるべきという声も出ている状況です。
決して侮れない帯状ほう疹。ワクチンの接種などについても含め、家族や身近な人と話し合ってみてもいいかもしれません。
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