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「また、命つなげられた。泣いた」肺がん患者の約1%の遺伝子変異が見つかる 『がんゲノム医療』の最前線

MBSニュース / 2024年10月30日 14時41分

 40代で肺がんと診断され、余命半年と宣告された男性。その後、最新の治療とであったことで診断から8年たった今も、フルタイムで働けるほど元気だといいます。 男性が行ったのは「がんゲノム医療」 どんな治療法なのでしょうか。

 静岡県焼津市に住む52歳の青島央和さん。青島さんは肺がんを患っていますが、いまは、治療を一切受けず暮らしています。病気がわかったのは8年前の2016年9月。健康診断で、右の肺に影が見つかったのがきっかけでした。

(青島さん)「私実はたばこ吸ってないんですよ、タバコ吸ってないのになんで肺がんなんだろうというショックもありましたね」

 青島さんがまとめた闘病の記録です。がんが見つかった後、すぐに手術を受けます。がんは3・8センチ、予想より大きくリンパ節にも転移していてステージⅢの進行がんでした。

“余命半年”宣告 「この家族を置いて僕はもう死ぬんだ」

 右肺の3分の1を切除し、抗がん剤などによる治療を受けましたが、その後、左の肺にも転移しているのが見つかりステージⅣに。次の治療が効かなければ“余命半年”と宣告されました。

 (青島さん)「それから眠れなくなった。夜寝たら朝起きられないんじゃないかとか、もしかしたらもう起きないままそのまま死んじゃってるんじゃないかとか。起きたらもっと病状が悪くなってるんじゃないか」

 当時46歳。妻と2人の子どもの4人家族で息子は高校2年生、娘は小学6年生でした。

 (青島さん)「この家族を置いて僕はもう死ぬんだみたいな感じでかなりショックでしたね。病室で泣いてましたね。」

 (妻・あかねさん)「手術で終わりかなと最初は思っていたけど方向が変わったので、その時はかなり自分の中で、しっかりしようというか本人が一番辛いだろうからと思ったので、わたしが一緒に泣いている場合じゃないかなと」

考えが変わったきっかけは『患者会』との出会い

 「ほかにできる治療はないのか」青島さんは情報を求め、肺がん患者の会に参加するようになりました。そこで患者同士が自分のがんのタイプや治療方針をしっかり理解して話し合う姿に衝撃をうけたといいます。

 (青島さん)「自分の治療歴とか、病歴とか、淡々とお話をされていて、私はその話を聞いて、僕は何も知らないじゃんって思ったんですよ。自分の病状について、肺腺がんとか手術をしたとか、そのぐらいしか知らないんですよね。ちょっと勉強しようというきっかけをもらった」

 肺がんについていちから学び始めた青島さん、勉強会などに参加するなかで、希望を見出したのが・・・
「がんゲノム医療」でした。

「がんゲノム医療」とは

 「がんゲノム医療」とは、患者によって異なる遺伝子=ゲノムの変異を見つけ、それぞれの変異にあわせた薬で治療するというものです。適合する薬が見つかれば大きな効果が期待できます。

(青島さん)「あのときアクションを起こしていなければ、自分の(今の)状態はあったのかな、生きていたのかな」

 肺がんはこの20年で最も薬が進化したがんの一つです。ゲノム医療では遺伝子変異のタイプにあわせて使う「分子標的薬」という薬の開発が進んでいて、現在では検査した肺がん患者の半数近くは適合する薬が見つかる可能性があるといいます。

希少な遺伝子変異が見つかる「また、命をつなげられた。ウルっときて泣いた」

 青島さんはがんと分かった8年前、医師の判断で分子標的薬が使える主な遺伝子変異を調べましたが、見つかりませんでした。しかし患者会に参加するなかで、まだ調べていない変異があることを知り、主治医にかけあってあらためて検査したところ、ROS1という遺伝子に変異が見つかりました。

 これは検査をした肺がん患者のわずか1パーセント程度にしか見られない変異ですが、すでに分子標的薬が開発されていたのです。

 (青島さん)「正直、藁をつかむ思いで藁を掴んだ感じでした。また、命をつなげられた。ちょっとウルっと来て泣いた」

 2020年に分子標的薬を服用する治療を始めた青島さん。入院中には、高熱や発疹などの副作用が出ましたが、辛い闘病生活を支えたのが家族が贈った手作りの日めくりカレンダーでした。

 (青島さん)「コロナ禍で面会ができないんですよ、なので家族と合えないさみしさってこんなにつらいものかと。毎日朝起きてめくっていました、癒される感じですね」

治療前と後の変化は?

 右側が治療前、左が治療後のCT画像です。赤い丸の部分に腫瘍があります。分子標的薬による治療を1年続けたあと、放射線治療を行った結果、がんはCT画像ではほぼ確認できないほど小さくなっていました。

 青島さんはその後、体調を崩すこともありましたが仕事にもフルタイムで復帰し今は1年以上、一切治療を受けていません。

半年に1度の検査の結果は・・・

 この日は半年に1度の検査の結果を聞きに病院へ。妻のあかねさんも付き添います。毎回、何か異常はないか、不安になるといいます。

 (主治医)「大丈夫ですよ、いい結果をお伝え出来そうです。」
 (青島さん)「良かった、、、」
 (主治医)「サイズは変わりはないので一安心かなと思います。」

 検査の結果、がんに進行は見られず、現状を維持していることがわかりました。今のところ治療を再開する必要はないということで普通の生活が送れそうです。

 (青島さん)「完全にがんが無くなるのは期待していない、ただ(がんが)あったとしてもどこまで共存できるかというところが大事かなと思っています。共存できる期間が少しでも長ければ、新しい薬に到達する可能性もあるので、できるだけ時間をかせいで新しい薬にたどり着くチャンスをもらうということが、私自身も大事かなと思っている」

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