【新型コロナワクチン後遺症】元看護師は車いす生活に「元の自分に戻りたい...」 消防士「23㎏痩せ、心の病といわれた」 『治らない』後遺症の現実
MBSニュース / 2024年11月7日 12時35分
2020年から世界的に猛威を振るった新型コロナウイルス。新型コロナの対策としてコロナワクチンの接種が推奨され今年4月時点で接種回数はのべ4億回以上となっています。ただその一方で倦怠感などワクチン後遺症の救済認定件数は8300件を超えています。今も苦しみ続けている『治らない後遺症』の現実を取材しました。
"元の自分に戻りたい" ワクチン後遺症で車いす生活になった女性
イスに座りながら片手で料理をする女性。倉田麻比子さん、42歳。
(倉田麻比子さん)「(Q左手なんですね?)右手は重たいので、この2本しかちゃんと使えないから」
奈良県で夫と娘2人と暮らす倉田さん。新型コロナワクチンの接種以後、手足に麻痺が残っている。
(倉田麻比子さん)「(私の)動きが遅いから下の子がごはん作るよと言ってくれたり作ったら夫か長女が片づけてくれたり分業、分担」
元は看護師として働き、休日は家族とボルダリングを楽しむなど活発に過ごしていた倉田さん。しかし、去年1月。医療従事者として受けた5回目のコロナワクチンの接種直後、高熱に倒れ、目が覚めると手足に力が入らなくなっていたという。
(倉田麻比子さん)「(2023年)1月13日に接種してから1月20日に自分で立てなくなって、自分では40mしか杖を使っても歩けないという状態。あとはけん怠感が強いのと頭痛もありますしめまいもあります」
車いす生活となり、看護の仕事は無期限休職。「原因不明」「異常なし」として病院をたらい回しにされた。ワクチンの後遺症患者と認めてもらうため国の「予防接種健康被害救済制度」に申請し、接種から1年以上経った今年の春にようやく認定された。
(倉田麻比子さん)「(救済認定を経て)ホッとしたというのと、信じてくれた家族や支援してくれた方々がうそつきじゃないという証明はできた。元の自分に戻りたい。そこを目指しています」
家族の支えで症状が改善も・・・
家族の支えを受けながら治療に励んでいる倉田さん。今年の夏には手足や視覚に障害がある人のクライミング、パラクライミングにも通い始めた。脚を手で持ち上げ、工夫して壁を登っていく。
(倉田麻比子さん)「できないと思っていた事が多かったんですけど、『こうやったらできるんじゃないか』と思考は変わりました」
症状も改善に向かい笑顔を取り戻しつつあった。
「着地点に落とし穴、そんな気分です」再び悪化する体調
ところが、今年8月。記者のもとに倉田さんからメッセージが届いた。再び体調が悪化したというのだ。
(倉田さん届いたメッセージ)「着地点に落とし穴掘られていて、気づかずにまんまと嵌まってしまった、そんな気分です」
自宅を訪ねるとーー
(倉田麻比子さん)「目を開けていられないんです。起き上がれないし、目も開けていられない、頭も回らない。目自体の形で痛い。頭も痛い」
診断は白内障と瞼の痙攣。新型コロナワクチンの副反応のデータベースに似た症例があり、眼科で「これもワクチン後遺症の可能性がある」と指摘されたという。
(倉田麻比子さん)「後から後からいろいろ出てくるので、次は何が出てくるんだろうという不安は常にあります」
接種から1年半以上経っても治らない後遺症。倉田さんは出口を求めこの秋から、自宅から約50km離れた兵庫県宝塚市の病院に通い始めた。担当はワクチン接種後に体調不良を訴える患者を100人以上診察してきた児玉慎一郎医師だ。
(児玉慎一郎医師)「いま一番困っている症状は何ですか、けん怠感?」
(倉田麻比子さん)「けん怠感と目が痛いことです。右目」
長引く症状の原因を探るため、この日は血液検査の結果の確認が行われた。倉田さんには筋肉の動きや免疫の働きに必要なビタミンDが不足していることがわかり、今後、薬や食事などで補充していくことになった。
後遺症で悩む消防士「急激に23~4㎏は痩せた」
ワクチンの後遺症で児玉医師のもとを訪れるのは倉田さんだけではない。消防士の綾均さん(48)。もともとは屈強な体つきだったが接種後に激しく衰弱したという。
(綾均さん)「(接種直後は)動けない。とりあえず倦怠感が激しくて、2~3カ月で急激に23~4kgは痩せたんじゃないかと思います」
他の病院では「心の病だ」と取り合ってもらえなかったが、現在はここで治療を受け少しずつ回復しているという。この病院に通う患者は他で十分な治療を受けられなかった人が少なくないと児玉医師は話す。
(児玉慎一郎医師)「ほとんど治療を手がけていない状況で(病院を)転々としている人が多い。社会的にあまりにも放置されすぎているので、そこがやはり問題だと思う」
接種後の症状は全国で8300件超 専門家は“氷山の一角”
国のデータでは国内での新型コロナワクチンの接種は今年4月の時点で約4億3600万回。これに対し、接種後に遺った症状について「コロナワクチンとの因果関係が否定されない」として治療費などを給付する「予防接種健康被害救済制度」の対象と認められた事例は倉田さんを含め8300件を超えている。
ただ、薬のリスク分析の専門家はこの救済制度は申請が難しく実際にはより多くの後遺症患者がいる可能性を指摘する。
(堀内有加里博士)「かかった医療機関すべての書類を集めなきゃいけない。それを体調の悪いなかすべてを集めて紙に印刷して自治体の窓口に持っていくということ自体ものすごくハードルが高い。(約8300件の認定は)氷山の一角だと思います」
接種による健康被害について厚生労働省に取材を申し込むと文書で回答が寄せられた。厚労省はこれまでの接種で入院予防効果が45%あることが報告されるなど、国内外でワクチンの有用性は認められていると回答。その上で安全性については…
(厚生労働省・予防接種「審議会においてワクチン接種後の副反応疑い報告を全例評価しており、安全性にかかる新たな懸念は認められないと評価されています」
「どんな形でも社会に戻りたい」後遺症と付き合っていく決意
後遺症の影響で体調の浮き沈みを繰り返しながら暮らす倉田さん。それでもいつか看護師として再び働ける日を夢見ている。
(倉田麻比子さん)「副作用や病気のイメージって治療したら治ると思う。でも私たちに共通しているの症状は『体質を変えられた感じ』。病気を『治す』というより『付き合っていく』という形になるから認識がすごく難しいなと思う。どんな形でも社会に戻りたいですね、本当に戻りたいです」
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