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「お金パッとくれる人でラッキー」紀州のドン・ファン事件 『毎月100万円』『性交渉なし』など条件に結婚 元妻が赤裸々に供述...「野﨑さんが覚醒剤の購入を依頼」密売人との接触認める【被告人質問詳報・前編】

MBSニュース / 2024年11月10日 11時56分

“お金をパッとくれる人だからラッキー” ついに始まった被告人質問で、初対面の日に抱いた感情を元妻はこう振り返った。2018年に「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家・野﨑幸助さん(当時77)を殺害した罪に問われている、当時の妻・須藤早貴被告(28)。須藤被告は「覚醒剤を摂取させたこともないし、殺していない」と無罪を主張している。28人という異例の数の証人尋問を経て、11月8日、1日目の被告人質問が行われた。須藤被告は、密売人との接触は認めたうえで、“覚醒剤を購入したのは野﨑さんからの依頼だった”と説明した。

初対面で帯付きの100万円とプロポーズ “お金をパッとくれる人だからラッキー”

弁護人による被告人質問ではまず、野﨑さんと須藤被告の結婚に至る経緯に焦点があてられた。

須藤被告はモデルの仕事で中国・北京に行き、某日本人女性から“お金持ちに興味ある?”と話を持ち掛けられ、さらに野﨑さんの知人男性を介して知り合ったという。

2017年12月、初対面の日。被告は、野﨑さんに関するYouTubeの動画を見るなど、“予習”をして和歌山県田辺市の野﨑さん宅に向かった。野﨑さんは「会いに来てくれてありがとう」と言って、帯付きの100万円を渡し、真剣な表情で「結婚してください」とプロポーズしてきたという。

須藤早貴被告(以下、被告)
「冗談だと思って “(今後も)100万円くれるならいいよ”と」
「『きょうだいと仲が悪く、遺産とかがきょうだいに行くのがイヤだから、君にもらってほしい』と言われました」
「“お金をパッとくれる人だからラッキー。うまく付き合っていこう”と思いました」

野﨑さんがスーツを脱ぎバスローブ姿になると…「オムツをしていてちょっと引きました」

しかし、須藤被告は“急ぐことではないと思った”といい、その場で結婚を受け入れることはなかった。初日の段階で、被告の感情が徹底的に“ドライ”で冷めていたことは、以下の供述からもうかがえる。

被告 「(野﨑さん宅)の階段が急な傾斜で、後ろから支えたら、『年寄り扱いしないで』とちょっと怒られて、『は?』となりました」
弁護人「それでどうした?」
被告 「親切をないがしろにされたから、それ以降は手を貸しませんでした」
「2階に上がったあと、(野﨑さんが)スーツを脱いでバスローブ姿になりました。その時にオムツをしていて、ちょっと引きました」

一方の野﨑さんは、その後も必死に被告にアプローチをかけてきたという。

弁護人「電話では野﨑さんはどんな話を?」
被告 「『結婚してください』とか『ア・モーレ』とか。会話というより、一方的に言ってきて切られる。いた電(いたずら電話) みたいな。付き合っていくうちに、だれに対しても頻繁に電話をかける人だとわかった」
弁護人「何度も結婚してほしいとせがまれて、どう応じていたんですか?」
被告 「『毎月100万円ちょうだいね』とか(言いました)」
弁護人「自身の予定に絡んでは?」
被告 「3月にフランスに旅行に行くから、『また今度会いましょうね』とはぐらかしました」
「(野﨑さんは)『海外旅行なんて行かなくていいじゃないですか』とか『早く婚姻届を出そう』と言いました。

また、被告が “田辺市は田舎なので住めません” とも言うと、野﨑さんはこう答えたという。

被告 「『家政婦のTさんみたいに、月に何回か来てくれればいい』と言われました」

最終的に被告と野﨑さんは、2018年2月に婚姻届を出した。被告は結婚の条件として、100万円の支払い(2018年1月~4月、実際に野﨑さんは被告の口座に計4回・各100万円を入金した)以外に、「性行為をしない」という点も求めた。野﨑さんは“別の交際女性(=10月21日に証人出廷した20年来の交際女性)が、家に来てくれるから大丈夫”と述べたという。

須藤被告が、自らの家族や知人に結婚について知らせることはなかった。

被告「契約みたいで、愛し合ってした結婚とは違う。周りに言いふらすものでもないので言いませんでした」

“野﨑さんが覚醒剤を欲したので、密売サイトで…”と主張 密売人と会う前に「警察24時見て、こんな感じかなと予習」

しかし被告曰く、結婚後に野﨑さんは条件に反して、何度か性的な行為を求めてきたという。そして、2018年4月初旬。

被告「『ダメだから(=性的な満足を得られないから)覚醒剤を…』と言われました。冗談だと思って、『お金くれたらいいよ』と冗談で言ったら、バッグから20万円を出して渡してきました」
「(後日)社長から催促されました。『あれどうなった?』と。“マジなの?”と思いました」
「買い方を知らなかったけど、中学の授業で薬物は裏掲示板で取引されると習ったのを思いだして調べました」
弁護人「それはいつのこと?」
被告 「4月7日です」

須藤被告は、2018年4月7日=野﨑さん死亡の約1か月半前に、掲示板に載っていた番号に電話をかけ、公判にも証人出廷した“覚醒剤の密売人”らと接触したことを認めた。

11月7日の公判に出廷した密売人との電話については…

被告「先払いと言われたので、詐欺でだまされると思って、直接(の支払い)がいいと言いました」
「社長の自宅には郵便物が届かない、全部会社に届いちゃうので、配送でお願いしますと」
「サイトには0.3、0.5、1と書いてあったから、3択かと。1グラムいくらですか?と聞いたら、10万円ですと言われた」
「(午後)10時に(田辺に)来てほしいと。10時前だと、まだ車も人通りもあるから、どんなに遅くても12時までがいいと」

午後7時すぎに注文した後は、テレビやYouTubeを見るなどして過ごし、密売人らの田辺到着を待ったという。

視聴した動画や、検索履歴のラインナップは「ダメ絶対。薬物多量摂取した人が見る世界」「危険ドラッグの本当の怖さ」「アフガニスタンの12歳の麻薬中毒の少女」「覚醒剤 死亡」「覚醒剤 過剰摂取」「警察24時」など…。

被告は、“これらを1つ1つ文字を打ち込んで検索したのではなく、検索欄に表示される候補をクリックしたり、関連性が高いとして表示された動画を視聴したりしただけ”と説明した。

被告「もうすぐ(密売人が)来る時間だから、『警察24時』を見て、こんな感じかなと予習しました」

“旦那にバレるから早くして” の意図とは…

そして須藤被告は午前0時頃、日付が変わる時間帯に、田辺市内のコンビニ近くで密売人(10月1日の公判に証人として出廷)と落ち合った。被告が10万円を入れた封筒を手渡すと、密売人も封筒を渡してきたという。

弁護人「コンビニは野﨑さん宅から歩いて何分ぐらい?」
被告 「5分ぐらいです」
弁護人「急いでいた?」
被告 「そういう意味で急いでいるのではなくて。社長は(午後)8時に寝るから、自分が家を出ても気づきもしないので。“旦那にバレるから早くして”というのは、私が作った設定なんですけど、(仮に待ち合わせについて)“12時をすぎると外が出るのが怖い”と言っても、“そんなナメた理由で急ぐのか?”と売人から言われるのもイヤだった。だから、“旦那にバレるのがイヤだから急いで”という設定」

弁護人が訊ねたわけではなかったが、密売人への証人尋問でも焦点となった“野﨑さんにバレないように早く渡して”と求めた点について、須藤被告は饒舌に語った。

被告 「『若いな、20歳か?』と訊かれたから、うんうんとうなずいて、(本当は)22歳だったけど、それで話を進めていって。『旦那いるんやろ?』うんうんと。『あぶりで使うんか?』と言ってきた」

被告は当時「あぶり」(覚醒剤をアルミ箔に載せるなどして火であぶって、煙を吸う)という方法は知らなかったというが、その質問にも適当に肯定する返事をして、密売人と別れたという。このあたりは密売人の法廷での証言とも合致する。

“野﨑さんが「あれは使い物にならん、ニセモノや」”

密売人と別れた後は…。

被告 「封筒の中からティッシュのかたまりを出して見たら、ビニール袋に透明な結晶があるのを見て、おーっと思ってすぐに戻しました」
弁護人「封筒はその後どうした?」
被告 「社長は寝ていたので、(4月8日の)夕方ぐらいに渡しました」
弁護人「野﨑さんは何と?」
被告 「『ありがとうございます』と言っていました」
弁護人「その後、野﨑さんに変化は?」
被告 「なかったです。渡した日の夕食の時に、『あれは使い物にならん、ニセモノや』『お前にはもう頼まん』と言われました」

つまり須藤被告としては、「覚醒剤の密売人と接触し、“白い結晶状のもの”を購入した点は認めるが、それが本物の覚醒剤だったかは疑わしい」という主張である。

確かに、10月1日に証人出廷した密売人=被告に直接封筒を手渡した男性は「覚醒剤は本物だった」と証言した一方、11月7日に証人出廷した密売人=被告と電話でやり取りをした男性は、「実際は氷砂糖だった」と法廷で証言した。後者とは符合することにはなる…。

被告曰く、その後は野﨑さんと覚醒剤についてやり取りすることはなかったという。約1週間後の4月13日にも「覚醒剤 死亡」「殺す」という検索履歴、野﨑さん死亡後の6月3日にも「覚醒剤 入手ルート」「覚醒剤 検挙率」という検索履歴が、それぞれ確認されているが、被告は前述と同様に、“検索欄に候補として出てきたものをクリックしただけ”と説明した。

法廷で繰り広げられた、表面上は矛盾のない説明。被告は真実を語っているのか、それとも稀代の “ストーリーテラー” なのか…。被告人質問の焦点は、野﨑さんが亡くなった当日へと移っていく。(後編に続く)


(MBS報道センター 松本陸・大里奈々)

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