石破総理に立ちはだかる「予算の壁」「参院選の壁」 泉房穂氏は「総理にとっては壁、国民にはチャンス」永田町で流行する「夜釣り」とは?【解説】
MBSニュース / 2024年11月12日 14時21分
30年ぶりの決選投票を経て、第103代内閣総理大臣に指名され、第2次石破内閣が発足しました。厳しい政権運営が予想される石破総理の前に立ちはだかる「予算の壁」と「参院選の壁」。元明石市長・泉房穂氏と、永田町を取材するジャーナリスト・武田一顕氏、神戸学院大・中野雅至教授が、それぞれの見方で解説します。――最新のJNN世論調査で石破内閣の支持率は38.9%で、前回に比べて12.7%ダウンしました。 (泉房穂氏)「やっぱり顕著に下がったなという感じです。私も期待した1人ですが、期待が失望に変わってしまった。(石破総理が)もう一回、国民を向いた政治に変えればまた人気回復もありうると思いますが」
武田氏「石破降ろし、すぐには起きないのではないか」
――もし野党が一枚岩になってしまうと、不信任決議がいつでも通る状況です。でも、「石破降ろし」はそんなにすぐには起きないのではないか、微妙なバランスで成立しているようです。まず自民党内では「火中の栗を誰が拾うのか」今の自民党の総裁に誰がなりたいのか、という話があります。
(武田一顕氏)「トップが変わっても議席は変わらない。だったら今のよりも、次の解散総選挙を見据えて、議席が取れるような頃に(総裁を)やった方がいいだろうというふうに内向きの考え方をしてるわけです、党内が」
「臨時国会の補正予算はおそらく与野党ある程度話し合いで通ると思います。ただ来年の通常国会で、予算はまさに政府の骨格ですから、これでぶつからなかったら今度は「野党何やってんだ」って話になる。そこでぶつかって石破さんは相当厳しい立場に追い込まれるだろうと私は見ている、来年2~3月に非常に大きな壁が立ちはだかってくると見ています」
中野氏「むりやり野党統一してコケたら、政権交代は二度と起きない」
――石破おろしについて野党は全然一枚岩になっていない、おろしたくてもおろせない、という状態とも言えます。
(中野雅至氏)「基本政策が違うので野党の一本化は難しい。共産・れいわ・日本保守党・参政党などもあって、左右に分裂している傾向もあるので簡単には一本化しないと思うんで、僕は基本政策がずれていれば現状維持で良いと思います。むりやり野党統一をやって、今回こけたら、政権交代は本当に二度とこの国では起きません。僕は野田代表も本気で狙ってないと思う。狙わなくていい。参議院選挙終わってから本格的に狙えばいいと思う」
(泉房穂氏)「日本の場合は小選挙区と比例代表の両方の要素があって、小選挙区では2大政党っぽいわけが比例代表もあるから結局割れます。ヨーロッパ型は比例代表なので、3つ4つの政党が政策合意をして政権になることも多いので、わたしは日本でも両方の可能性を探ってほしいという立場です」
泉氏「総理から見ると壁 国民から見るとチャンス」
――予算編成の壁について、衆議院で過半数持っていない与党。もし新年度に入っても予算が決まらないと政権への不信感が増します。
(武田一顕氏)「予算は内閣が編成して与党が了承して国会に提出されるものです。議会では過半数がないと駄目だけど、その前に予算を審議する予算委員会で、その委員長は今回、立憲民主党の安住さんという話もあるので、そうなると採決ができないわけですよ。全然通らなくなっちゃう。委員長が通せば「隠れ自民党だ」って言われるからぶつからざるを得ないわけで、結局ぐちゃぐちゃになってしまうのが私の予測です」
(泉房穂氏)「きょうは”壁”という切り口ですやん。石破さんから見たら壁ですけど、国民から見たら私はチャンスだと思ってる。選挙結果を受けて、国民の負担を増やすような政治から、国民の生活を救う政治になるチャンス。ちゃんと声を上げて、今回の選挙結果を踏まえたような歩み寄りを与党もしたらいいと思います」
永田町で「夜釣り」が流行…なんのこと?
――予算を通すための工夫がいくつかありそうです。まずは先ほど出た「予算委員長を野党に渡す」。常任委員会が17ある中で7つを野党に渡します。一番大事な予算委員会の委員長も立憲民主党です。
(泉房穂氏)「与党でないということは、強行採決できないわけだから、しっかり議論をする必要がある。でもダラダラ議論していると、国民生活に影響ありますから、野党側にも責任を伴ってくる。ともに国民を向いて、しっかりと議論してほしいなと思います」
――予算を通す工夫、なのか、もうひとつ「夜釣り」という言葉が永田町で流行っているらしい。
(武田一顕氏)「いま流行っています。自民党の議員が、夜な夜な野党の議員と会って「今こっち来ない?自民党来ない?」って1本釣りしていることを言います。仮に野党の政権ができたって、1年か2年か3年経ってまた自民党になるんだろうから、「今うちに来たらいいよ」ってリールを巻いているそうです」
(泉房穂氏)「あと10人の数字って大事なテーマで、あと3~4人ならピンポイントで誘いますけど12人だとそれなりに大変だから。だったら、ちゃんと議論して、夜じゃなくて昼間にやってほしい」
予算を通すための「総理辞任」そういう手法はあるのか?
――最終手段、予算を通すために「石破総理の辞任」という驚きの策、というのは野党からするとどうですか?
(武田一顕氏)「これは難しくて、実は石破さんの人気が下がれば下がるほど野党の本音は、長く(総理を)やってほしいと思うんですよ。長くやってほしいとは思うんだけど予算が通らない、端的な例を言うと閣僚にスキャンダルが出ちゃった場合には、野党も態度を硬化させますから、もしそうなった際に、最後には予算を通さないとまずいから、『やめろやめろ』となって、最後に石破さんが、『私辞めるから予算だけは国民のために通してください』っていうのはありうるという、そういう選択肢です」
――続いて来年の7月に待ち受けている「参院選の壁」の話。勢力図は、過半数を優に超えて自民公明で140議席あります。その半数が来年改選です。過去の政権交代も、2009年も2012年も参院選で負けて、その後の衆院選でも負けて変わるという歴史です。
(武田一顕氏)「『政局は参議院から』って言葉があります。初めに参議院で取った者が勝つ。実は、参議院の方が重要です」
――自民党側は、参院選に向けて、「石破総理を選挙の前に変えるんじゃないか」という見方もありますし、野党側が「国民受けする政策でアピールをしてくる」ことも予想できる。
(武田一顕氏)「野党でも政策が実現できる、というのをどこまでアピールできるかなんだけど、野党って昔は『反対党』『非政府党』と呼ばれていたこともあって、国会でぶつかって、結局暗礁に乗り上げて石破政権は立ち行かなくなるってのは私の推測です」
「トランプの壁」も…来夏の参院選まで厳しい目
――人気のある政策に金を使うためには、どこかを削らなきゃできません。
(泉房穂氏)「綺麗ごとではなくて、どこかにごめんなさいをして増やすことはセットですから議論すべき。少し経過措置をとるなら国債発行して一定期間内にきっちり数字合わせをするとか、その議論は必要だと思います。全国の自治体だって、お金をやりくりしながら子育て支援策とかに使っているわけだから、国ができないと私は思わないです」
「そういう意味では『参議院の壁』も、見方を変えると参議院のチャンスなんです。参議院選挙があるっていうことは、各政党と安易な妥協もできない。選挙がある以上、国民の投票で変えられます。参議院選挙というのは1人区が多いので、野党というのは、嫌いだろうが好きであろうが、何とか一本化とのエネルギーが働きますから、私は来夏の参議院選挙は政治を変えるチャンスとも言えますね」
このほか、日米外交「トランプの壁」などもあり、難しい政権運営が迫られる第2次石破内閣。国民からの厳しい目が注がれています。
(MBS「よんチャンTV」2024年11月11日より)
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